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茜
2019年3月27日 01:42
登場人物の渾名がよい。雲雀、マア坊、竹さん、つくし、越後獅子、固パン、かっぽれ。お決まりのやり取りが楽しい。「ひばり。」「なんだい。」「やっとるか。」「やっとるぞ。」「がんばれよ。」「ようし来た。」それは結核療養所という過酷な空間を、なんだか不思議に明るく彩る。私がなによりこの小説で重要あると感じたのは、文章がすべて「手紙」であるというところだ。手紙とはすなわち「書
2018年4月3日 17:39
いつでもそうなのだ。今度こそ何かがはっきりすると期待して、結果的には混迷がいっそう深まることになってしまう。なんだか言えなかったり、言い間違えたり、言ったら本当になってしまったり。みんながそうかはわからないけれど、少なくとも井上さんもきっとそんな風に日々を感じていて、私がモヤモヤ眉間辺りに溜め込んでいることを、じょうずに言葉にしてくれて、それにすごく救われている。(ただ、文庫に関しては
2018年3月11日 01:08
「閻魔ちゃん」という渾名がすごくいい。ぼくの恋人、閻魔ちゃん。「ぼく」は閻魔ちゃんに、ようは飼われている。ぼくは閻魔ちゃんの愛人でいるべく、努力をしている。ウェットに飛んだ知識の収集、それをひけらかさない忍耐、そしてダメンズウォーカーの欲を満たすためのあえての暴力。愛されている関係というのはらくだ。求められている事に、上手に応えていればよいのだから。相手が求めている自分を演じる。そ
2018年1月5日 19:45
人生にも映画のように音楽が流れればいいのにと思う事がある。そうしたら救われるのに。井上さんの作品はそういう意味で、音楽のない文章だ。頑張っても報われないし、期待通りにはならないし。困っていても誰も助けてなんてくれない。すれ違った気持ちは伝わらないまま。怒っても喧嘩になることもなく、なんとなく過ぎていく。悲しみや憎しみはドラマチックなものなんかじゃなくて、もっと日常的なものなのだ。井上さんは