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休職日記#14 不眠症の風呂嫌いが、湯船に浸かったら入眠剤なしで眠れるようになった話

私はお風呂が大嫌いだ。風呂場に入ると勝手に脳内で一人反省会が始まるからだ。容赦なく静寂の空間に包まれ、聞こえるのは換気扇が回る音と、身動いだ時の波打つお湯の音だけ。
その日に起きた出来事が脳内で映像のように流れて、「あのときああ言えば良かった」とか「あの人はどうしてあんな言動をしたのだろうか」とか、はたまた忘れかけていた苦悩さえも思い出されてくる。風呂場という空間が、突如として牢屋のような孤独で重苦しい気さえしてしまう。…というのは、少し言い過ぎかもしれない。

空間に限らず、入浴に伴う作業が多すぎるのも面倒くさい。
体を洗って、頭を洗って、顔を洗って…風呂から出たら濡れた体をタオルで拭き、着替え、肌の手入れをし、髪を乾かし…やることが多すぎる。考えるだけでも面倒くさい。

なので、メンタルが落ち込んでいると風呂に入るという行為はかなりハードルが高くなる。多大なるエネルギーが必要だし、私にとって風呂場はリラックスする場所ではなく自分の人生を悲観する場所となっているからだ。
そして、風呂にも入れない自分を責め、ますます風呂に入りたくなくなる。
だから、会社員時代もいつも手短に済ませていた。作業とみなし、とにかく早く上がることに全集中。湯船には5分も浸かっていなかったと思う。リモートワーク中心になってからは、入らない日も普通にあった。

だが、先日、甥っ子と遊びまくり全身疲労で体が悲鳴を上げたとき、「お湯にゆっくりつかりたい」という欲求が出てきた。日本人たるもの、やはり湯船にゆっくり浸かる快感は刻み込まれているらしい。

一瞬「面倒くさい…」と思ったものの、スマホを持ち込むことにした。ちょうど見たい動画があり、動画を見ることを目的にしてみたのだ。

気づくと、湯船に浸かってから30分が経っていた。5分しか浸からなかった人間が、30分も浸かっていた。驚いた。
指はしわくちゃにふやけて、スマホの指紋認証ができない。少し汗ばみ、体の中心部分からじんわりと温まっているのを感じた。筋肉もほぐれて、気持ち良かった。リラックスできた、と思った。

その夜は、入眠剤なしで眠っていた。
たくさん動いたし疲れていたし、と思っていたのだが、特に動かなかった次の日も、その次の日も入眠剤なしで眠れたのだ。共通点は、湯船にゆっくり浸かっていたことだった。

夜に寝て、朝起きる。
多くの人にとっては当たり前のことも、メンタル不調を抱えている人間にとっては、なかなか難しいことなのだ。
私は朝5時まで眠れない日々が続いた。眠いのに眠れない。寝たいのに眠れない。なかなかキツかった。なので、入眠剤に頼るようになっていた。

だが、ゆっくり湯船作戦を始めてから、1時〜2時の間には完全に眠りにつき、朝9時にすっきり起きられるようになった(昼寝することもある)。久々の気持ちいい目覚めに嬉しくなった。

入浴がこんなに効果があるとは。正直、驚いた。
風呂場にスマホを持ち込むのを悪しき習慣とする説もあるが、私はむしろどんどん持ち込もうと思う。それでゆっくり浸かって、夜眠れるのであれば、万々歳だ。
お風呂に入ることを目的とするのではなく、好きな動画を見たり、好きな音楽を聴くことを目的とする。すると、なんだかお風呂が楽しい場所に思えてくるのだ。
今もバックグラウンドで好きな音楽を流しながら、このnoteを湯船に浸かりながら書いている。意外にも楽しい。ただ、浸かりすぎて全身ふやけている。

風呂場で一人反省会をしてしまうような人には、なにも考えなくていい時間となるのでおすすめである。そして、夜に眠れず悩んでいる人にも。
ただ、お風呂に入ることがしんどいときは、無理に入らない方がいい。絶不調のときは、風呂で全エネルギーを持っていかれて、上がってから動けなくなることもあるからだ。
自分の体、心の声を聴いて、やってみようかなと思えたらやってみてほしい。

不調を楽にする方法は、新しいことをしなくてもこれまで自分が経験してきた「日常」に隠れているのだなと感じた体験だった。

イラストbyあっこ
湯船用のフタにスマホを立てかけてます。
イラストを描くために、
風呂場を撮影したのは人生で初めて。

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