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休職日記#18 日常の些細な「できるようになったこと」に、回復の兆しを見つける

チョコレートケーキを買った。ケーキを食べるなんて、いつぶりだろうか。少なくとも、休職に入ってからの半年は食べていない。食欲がなく、脂っこいものを食べると胃腸に痛みが出てしまって、食べることができなかったのだ。食事の際は、胃炎の薬、整腸剤は必須。飲まないと、食べることができなかった。適応障害による典型的な症状だった。

最近になってようやく薬を飲まなくても食事を摂れるようになった。肉も食べられるし、揚げ物も食べられる。美味しいと感じられる食事が、こんなにも幸せなのかとしみじみ思う。

食事ができるようになると、活力が湧いてくるのだろう。少しずつ体調が回復するにつれ、「自分にとって心地いいことはなにか」を考えられるようになった。「わくわくすること」も意識的に生活に取り入れてみようという気になってきた。
休職し始めた今年の5月ごろは、楽しいこと、好きなことなんてわからなくなっていた。大好きだった映画やドラマ、アニメ見るのにも疲れてしまって、でも何も考えたくないからYouTubeで適当な動画を無感情でただただ流していた。見ながらうとうとして、起きたらそのまま布団でYouTube。そんな日々。
だけど、今では散歩もできて、電車に乗って遠出もできて、友人や会社の人とご飯を食べたり、映画やドラマも楽しく見られるようになった。YouTubeも、つい爆笑したり。少しずつ、本当に少しずつだけど、「楽しいこと」「好きなこと」「心地いいこと」を取り戻せていっているように思う。

その一つが、チョコレートケーキを食べることだった。散歩がてら、近所にあるケーキ屋さんで買ってみたのだ。ショーケースに並ぶ色とりどりのケーキたちを見るだけで、心が躍った。なんて美味しそうなんだろう、きれいだな、と思えていることにおどろいた。
子どもの頃から、チョコレートケーキが大好きだった。そんな当たり前の「好き」ですら忘れていたなんて。改めて精神疾患の恐ろしさを感じる。

久しぶりに食べたチョコレートケーキは、衝撃的な美味しさだった。濃厚で、しっとりしていて、ほんのり甘いビターなチョコレートが口いっぱいに広がって、満ち足りた気持ちになった。フォークが止まらない。あっという間に食べ終わってしまった。胃腸が痛くなることもなかった。回復してきていることを実感した。

適応障害になって、今まで当たり前にできていたことができなくなった。この事実は、自尊心を傷つけ、自信を失い、生きることへの希望さえ奪っていった。
冬眠中の熊みたいにひたすら布団に潜り込んで寝ていた日々もあった。もう二度と、楽しいと感じられる日々なんてこないだろうと思っていた。
でも、今こうして少しずつ日常を取り戻して、些細な「できるようになったこと」に幸せを感じられる今を、愛おしく思う。

大丈夫、自分のペースで。ゆっくり生きていこう。


イラスト by あっこ
チョコレートケーキを描きました
めちゃくちゃ美味しかった。

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