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INVISIBLE WORLD〜思考裁判〜
ピスフールは、考えていた。
なぜ、アブソリュートは、私に花をくれたのだろう。
私のことが好き、、?
いやいや、他の女の人にちょっかいをかけて私のことなんてお構いなしじゃない!
だから、わたしのことなんて好きじゃない!
なんで、『あなたのことを愛しています』という花言葉があるピンクの胡蝶蘭なんて私に送るの?!
なんであんなことするのよ!実らない恋だからと、諦めていたのに…期待しちゃうじゃない。
好きなのかしら…?
苦しい、苦しい、うわーっ。
いや、アブソリュートは、私のことを好きではない!
だって、ほかの女の人と親しくするし、私には素っ気無いわ。たくさん証拠はあるじゃない!
ピスフールは、混乱の中にいた。
何が本当で嘘なのか自信が持てず、ダメな結果を肯定したかった。
そうすることで、少し楽になれた。
そうよ、昨日の花をもらう前だって私の考えを否定したじゃない。
だって、好きな人の考えは、普通否定しないものだわ。
はらね、こんなすごい証拠があるのよ….。
ああ、苦しい。
"原告人….原告人、あなたは、ピスフールのことを好きなのですね。
気がつくと、そこには低い声で落ち着きを放った初老の男がいた。彼は黒い服を纏い話をしていた。
え、ここはどこ?
ピスフールは混乱していたが、すぐに目に入ったものがあった。
それは、黒い服の男の前に立っているアブソリュートだった。
はい、俺はピスフールのことが好きです。
アブソリュートは、その黒い服を纏った初老の男の方をまっすぐ向いているように見えたが、声が小さく震えていた。
え!!
ピスフールは、3秒程度思考が停止したが、その後ここが裁判所だということを理解した。
俺は、ピスフールが好きです。
でも不器用なので、本当に好きな相手にはうまく話せないのです。
いつものような豪快なアブソリュートはそこにはおらず、肩をすくめ縮こまった大柄な男がいた。
何が起こっているの?これは夢?
ピスフールは、いつもと違う状態のアブソリュートと、いきなり現れた裁判所に、思考がついていかずただその状況を眺めた。
その初老の黒い服を纏った男は、裁判官であり、落ち着いた声で、ピスフールの方を向き発言した。
被告人ピスフール、聞こえていますか?
あなたはアブソリュートが自分のことを好きではないと否定しています。
しかし、原告人アブソリュートはあなたのことが好きだと主張しています。
ピスフールの停止した思考は、再度動き出し、心臓の鼓動が大きく波打った。
何を言っているの?!
私が好かれているわけないじゃない!
被告人、落ち着いてください。
ピスフールはその男の声を遮るように言った。
だって、私のことを好きじゃない証拠はたくさんあるの!
ピスフールの顔は、眉間に皺がより唇をギュッと噛み今にも泣き出しそうであった。
その後息を吐き、俯き黙った。
裁判官は言った。
ピスフールの弁護人から、それらの証拠を提示してください。
弁護人は、小柄でふくよかな女性で少しテンパりながら前に出た。
女性は感情を大切にしています!
それを否定されると傷つきます。
それはみんなが分かることです。
アブソリュートは、ピスフールへの共感が少なく、彼女を尊重した態度をしているとは言えません。
そのため、アブソリュートはピスフールのことを好きではないという主張は正しいと判断します。
またアブソリュートは、女性によく声をかけて一緒に飲みに行くなど、異性関係はとても多いです。
そのような社交的な人物が、本当に好きな人には不器用になるのでしょうか?
裁判官の後ろを黒いものが通った。
そして裁判官はゆっくり前に向き直って発言した。
なるほど分かりました。
では、アブソリュートの弁護人、主張をどうぞ。
アブソリュートの弁護人は眉ひとつ動かさず、抑揚のない声で話した。
アブソリュートは、異性の交友関係は多いです。
しかし、同姓の交友関係も多いです。
友人という関係であれば、異性の交友関係が多いのも自然なことでしょう。以上です。
アブソリュートの弁護人は、顔色ひとつ変えずピスフールの弁護人を見た。
ピスフールの弁護人は、不服そうに頬を膨らませ、主張した。
ですが裁判官!ピスフールには特別関心がないように見えます。
なぜなら、2人で出かけたことはありません。
交友関係を良好に築ける人間であれば、好意があれば関係を深める力もあるかと思われます。
そして、なんと言ってもピスフールの意見に批判していることが多いです。
自分の言っていることが絶対だと、ピスフールの意見には耳も傾けません。
男性は一般的に女性より、共感能力は低いとされています。
しかし、好きな女性に対して、戦略的に共感能力をしめすと言われています。
これは科学的にも証明されていることであり、現時点では正しい証拠です。
よって、ピスフールに無関心あるいは、嫌いであると判断します。
ピスフールの弁護人は、勝ち誇ったように顎を前に突き出し細い目で、アブソリュートの弁護人を見た。
ピスフールの心臓は、針でさされるようにチクチク痛んだ。
裁判官は言った。
では、アブソリュートの主張をどうぞ。
アブソリュートは、少し黙った後に話した。
俺は、、、怖いのです。
友だちは沢山いますが、本当に好きな人に嫌われると考えると怖いのです。
俺は逞しく強い男と思われたいです。
でも、好きな人を前にすると、そんな自分ではいられないのが分かるから、怖いのです。
こんな男、弱くてカッコ悪いでしょう。
そんな自分を許せないのです。
こんな男のことを、好きでいてくれるのか不安なのです。
一同は黙り、その場は静まり返った。
裁判官は言った。
ではピスフール、あなたの意見を聞かせてください。
あなたはなぜ、アブソリュートが自分のことを嫌いだと思うのですか?
ピスフールは、頭が真っ白になって、言葉が出なかった。
初めて見るアブソリュートの一面に、まったく予期していなかったこと、そんな自分の視野の狭さや相手を思う気持ちが欠けていたこと、自分を守ることに必死になり、相手の弱さに気付こうとしなかったこと。
そして、スーっと息を吐き答えた。
どんな人にも弱いところがあるんですね。
ずっと、知っていたはずのことなのに、なぜか忘れていました。
私は自分を否定することで、楽になろうと思っていたのかもしれません。
相手の弱さを考えること、相手を包み込む優しさや安定力、その力を養う努力をせず、ただ不安や恐怖に浸っていました。それが楽だったんだと思います。
でも、私が努力する必要があったのは、自分を否定することではなく、自分を受け入れ強くなることです。
アブソリュートに好かれているか不安でした。
好きを相手の行動ではかっていました。
ああ、なんて残酷なことをしてしまったの。
ごめんなさい、ごめんなさい、アブソリュートをこんな辱めに晒してしまい、ごめんなさい。
裁判官の頭上をまた黒いものが通った。
裁判官は、前に向き直り言った。
今回の裁判はお互いの意見の相違から、生まれたものです。
しかし、お互いが好きだと認めれば、これは和解となります。
今回の裁判は、和解したということでいいですね?
アブソリュートとピスフールは顔を赤らめコクリと頷いた。
ピスフールの弁護人は、口をぽかんと開け裁判官を見ていた。
そしてアブソリュートの弁護人は、初めて柔らかい表情になり、暖かい目で口角をあげ笑顔になった。
緊張が解けたせいか、ピスフールの視界は少しずつ暗くなりその場で意識を失った。
ピスフール…
ピスフール!
ねー、ねー、ピスフール起きて!
ピスフールは重たい瞼を開けると、そこにはコアがいた。
コアは、心配そうにこちらを見ていた。
そして言った。
君が深刻そうな顔をしてふらふらこの草原まで歩いていくから、心配でついてきたんだ。
そしたら、横になって独り言を言っていて、いつ間にか寝ちゃったんだもん。
最初は涙を流して、最後はニヤニヤしてて、何か夢を見ていたの?
そこに、白い影が現れた。Dr.カー・ディオ・バスキュラーだ。
ピスフールは夢の中で、裁判をしていたんだね。
その裁判は自分を貶める思考と戦う、思考裁判だったんじゃないのかな?
人は皆、自分を苦しめる思考をもっている。
それによって動けなくなり、自分の目標達成を邪魔することが多いんだ。
それから脱却し現実を見るためには、自分と全く違う意見の相手と戦わせる必要がある。
そこで、お互いが証拠を出し合って、話し合いをする。
その過程を歩むことで、偏った思考から脱却し前に進むことができる。
何か悩んでいることがある時、この思考裁判をすることで、人は中立な意見を見出すことができ、より現実的な考えをして目標達成に近づくんだ。
ピスフールは、最後に笑っていたのなら、きっともう心配はいらないよ、コア。
それを聞いて、ピスフールは赤くなった。
そんなピスフールをコアは見て、なぜか胸が疼くのを感じた。
見てくださり、ありがとうございます♡これからもあなたが楽しく、健康的な人生を送れるよう、お手伝いができたらと思います! これからも面白い物語の提供や企画をする予定です!サポート貰えたら嬉しいです^_^