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「貸して」「いいよ」の流れを押しつけない

おはようございます。

更新の間が空きましたが、職場の子どもたちも私も元気に4月を過ごしています。
絶賛号泣期間中です(笑)

今日は園生活のお約束とも言える「貸して」と「いいよ」の流れについて書いてみたいと思います。


「貸して」と言えば返事を待たない子

「貸して」と「いいよ」はワンセットのように扱われるので、「貸して」と言えば自分のものになると思い込んでしまう子もいます。
だから、「貸して」さえ言えば返事を待たずに持って行ってしまう子もいるんです。

これっておかしいと思いませんか?

「貸して」はお願いです。
自分の使いたい気持ちを伝えて、相手に貸して欲しいと伝える言葉です。
「貸して」って言ったんだからそれでいい、勝手に持って行っていいんだ、なんて覚えてしまったら後でその子が困ります。

「いいよ」の返事を待たない子は、言葉の意味をちゃんと理解していないんだな、と思います。
「貸して」「いいよ」がワンセットのように扱われるので、そういうやりとりをすればいいんだ、というところで理解が止まってしまう。
これって良くないなと思うんですね。

「いいよ」を待たない子は、自分自身がこのやりとりに不満をもっている子だったりもします。

「ぼく(わたし)も「貸して」っておもちゃを持って行かれたから、ぼく(わたし)だってやっていいいんでしょ!?」

そんなふうに主張する子はいませんが、表情や前後の流れを見ていると、なんとなくそんな心の声が聞こえてくるような気がしてきます。

「ぼく(わたし)ばっかり我慢するの、おかしいじゃん!」

と。
その通りです。誰かに一方的な我慢を強要する集団は、決して平和でも健全でもありません。


「いやだ」が返事でもいい

そもそも、どうして「貸して」と言われたら「いいよ」と言わなくてはいけないんでしょう?
「お友だちに優しくしなさい」という言葉とセットになっていることも多いんですが、優しさってそういうことでしょうか?

まだ使いたいという気持ちだって、大事にされていいですよね。
まだ使いたいからって、相手に優しくしていないことにはならないんですから。
「貸して」って言われても、まだ使いたいなら「いやだ」でいい。
「楽しいからまだ貸したくない!」って気持ちもごくごく自然なことで、優しくないわけじゃないんです。

とはいえ、「いやだ」だけだと言われた方が悲しいので、もう一言ほしいところですね。
幼いうちは子ども同士での交渉は難しいので、そこは大人の出番です。

「後でだったら貸してくれる?」
「あと何回使ったら貸してくれる?」

そんなやりとりをして、「じゃあ、あと3回使ったら貸してね」と約束をする。
そして、約束がちゃんと果たされるところまで見届けます。
幼いうちの記憶力は頼りないので、楽しく遊んでいるうちに忘れてしまうことも珍しくありません。悪意があるわけではないので、様子を見て「忘れてるな」と思ったら声をかけます。

約束を守ることは大切なこと、というのはもちろん。
「貸して」とお願いした子にとっても、すぐ貸してもらえなくても待ったら貸してもらえた、という流れを経験することも大切なんです。
貸してもらえる保証がないのに、ただ待っているなんて辛いでしょう。
駄々をこねたり、泣いたりするのは、貸してもらえる保証がないから。
何回か繰り返していくと、ちゃんと約束をして、ちゃんと待っていたら、使いたいおもちゃはちゃんと自分のところにくる、という実感がもてるようになるんです。
そうすると、駄々をこねたり、泣いたりすることなく待っていられます。
(例外はあるので、絶対とは言えませんが)

2歳児でも、この流れを覚えてしまえばちゃんと待てます。
さらに慣れてくると、子ども同士で交渉ができるようにもなります。
「はい、どうぞ~ 次、また貸してね」と笑顔でおもちゃを差し出し、自分もまだ使いたいから貸してほしいことも伝えられます。

相手が使いたいことを感じて、「また使えるなら、今はいいか」と判断して先に貸してくれる子もいます。
ちょっと間が空いたり、考える顔をしたりするのがまた、可愛い!
大人が何も言わなくても、自分の経験から考えて、判断することができるようになる。相手を気遣った行動を選べるようになる。
子どもってなんて素晴らしい…と感動する瞬間ですね!

子どもがちゃんと考えて判断できる、ということを知っているから、安易に「貸して」「いいよ」の流れを成立させたくないんでしょうね。
子どもが自分で判断した上での「いいよ」なら問題ないんですが、ただのフレームワーク的なやりとりだとちょっと…思わず、「え、本当にいいの?」と止めに入ってしまうことすらあります。


「ごめんね」「いいよ」の流れも好きではないんです

「貸して」「いいよ」の流れと同じくらい、「ごめんね」「いいよ」の流れも好きではありません。
その流れを定着させてしまうから、「ごめんって言えばいいや」という、なんとも適当な「ごめん」が生まれてしまいます。

謝られたって、痛いものは痛い。
謝られたって、嫌なものは嫌。

そういう気持ちを大切にしてほしくて、「いやだ」もどんどん言ったらいいと思っています。
謝られても無言を通す子もいますしね。

軽い「ごめんね~」を言った子も、相手が「いや!」と答えたり、無言でむすっとしたりすると、「あれ?」という顔をします。
もう1回「ごめんね~」と言っても、相手は「いいよ」と言ってくれません。だんだん表情が固くなっていきます。

「いいよって言いたくないくらい、嫌だったって。」

大人がそう解説すると、すごく困った顔になります。
きっとそこまで相手に嫌なことをするつもりはなくて、ふざけているだけだったのでしょう。「ごめんね~」って言っておけばいいや、と軽く考えていたんでしょうね。
それが、許してくれない。
よく見たら相手の顔は笑ってないし、泣いて(怒って)いるみたい…
「いいよ」って言ってくれないなら、どうしたらいいの?

もちろん、こちらも意地悪でやっていることではないので、このあたりで助け船を出します。
「いいよ」を言いたくない子に対して、「もう痛くしないって約束してくれるなら、「いいよ」って言える?」など、落としどころを提案していきます。
「いいよ」を言いたくない子も、同じ事が起こらない約束がされるなら、「いいよ」を言うのにも抵抗は見せません。
その落としどころを伝えて、「約束できる?」と尋ねると、軽く「ごめんね~」と言っていた子も神妙な顔で頷いて、もう一度「ごめんね」とさっきより心のこもった声で繰り返します。

…というのはすごく理想的な流れで、こうならないことももちろんあります(笑)

これも繰り返しです。
「ごめんね」は気持ちを表す言葉です。ただ言えばいいという言葉ではないし、言ったから必ず許される言葉でもありません。
それはしっかり伝えていかないと、なんでも「言えばいいや」になってしまう。お願いも謝罪も、そういうものではないと思うんですよ。

軽い「ごめんね」の子は、想像力が幼くて相手の気持ちを想像できないことも多いのですが、その子自身が軽い「ごめんね」で済まされてきたという経験もあると思います。
「ごめんね」って言われたんだから、「いいよ」って言わなくちゃいけない。
その子自身がそういう経験をしてきていれば、「じゃあ自分も、ごめんねって言っておけばいいよね」ということになる。当たり前のことですね。

「ごめんね」って言っても、許してもらえないかもしれない。
そういう経験を繰り返してくると、相手に対する「ごめんね」が変わってきます。声の調子も、表情も変わってくる。本当に「ごめんね」と思っているのが伝わってきます。
そうなると言われた側にも伝わるので、まだ痛そうにしながらも「いいよ」と言ってくれたり、泣きながら頷いてくれたりもする。
お互い様、というのが分かってくるんですね。
自分もやっちゃうことがある。だから、わざとじゃないなら別にいいか、という感じでしょうか。

もちろん、それでも許せないくらいの出来事もあります。
大事に組み立てていたブロックを壊されたとか、丁寧に作っていた砂の山を踏まれた、とか。
わざとじゃないと分かっていても、許せない。

だって!がんばってたのに!うまくいってたのに!!!

簡単に許せなくて当然です。
これは癇癪とは違います。それだけ思い入れがあって、大事にしていて、特別なものだった、ということですから、悲しくって許せなくっていいんです。
誰にでもそういうものってありますよね。
わざとじゃないって分かっていて、ちゃんと謝ってくれて、それでも許せないくらい大事なものができた。それって成長でもあるんです。
心ゆくまで怒らせてあげてください。

大事なのは、大人がそれを受け止めること。
「いつまで怒ってるの!」ではなくて、

「丁寧に作ってたもんね、それは悲しいね」
「今はいいよって言いたくないくらい、怒ってるんだね」

その子が悲しんでいる、怒っている理由を受け止めて、否定しないこと。
そして、やってしまった側の子に対してもフォローを入れます。

「わざとじゃないって分かってるし、謝ってるのも分かってるけど、それでも消えないくらい悲しいんだって。気をつけてあげてね」

感情が分かってくると、悲しいのも許せないのも、自分にも経験があるので相手の状態も分かるようになるんですね。
わざとじゃないのにって気持ちもあるけれど、相手をすごく悲しませた、怒らせたというのもショックです。そこは必要以上に傷つかないように、大人がフォローを入れてあげてください。

こういうやりとりの仲介は正直時間がかかりますし、大変です。

でも、社会生活の中では欠かせないやりとりですよね。
それに年齢が上がれば上がるほど、許すのも許されるのも大変になる。ちょっとしたことでこじれやすくなるので、幼いうちに何度も経験しておく方がいいんです。
どんなに泣いて怒っていても、その怒りが何日も続く、ということはほとんどありませんから。
たくさんぶつかって、たくさん揉めて。
どうやったら解決できるのか知って、身につけていく。
子どもは吸収力がすごいので、大人が驚くスピードで身につけていきます。

私も子どものころ、もっと経験していたら…
羨ましくなるほどです(笑)

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