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読響プレミア 公開収録 (pf. 小曽根真) @ 新宿文化センター (2022.2.24) 4/7追記

いろいろ素晴らしかったので、TV放映日(日本テレビのHPにガーシュウィンは4/20深夜(4/21)26:35から、4/30朝7:00から、と記載有り)に再び2/24の公開収録のことを思い出したく、トーク部分は記憶を頼りに書き起こし、演奏については自分が感じたことを書いてみた(ヘッダーは、私がかつて訪れたボンのミュンスター教会)。

※ これは2/24の帰宅途中、その夜に一気に書き、翌日見直してUPしたもの。以後、気付いたり思い出したことを微修正したり、関連記事等を追記している。

残念ながら私は抽選に外れたが、とあるご縁で当選券を譲って頂けることになり、急遽行けることになった。が、当日2/24の午後3時前に譲って下さった方(仮にZさんとする)から連絡があった。
角野さんが都合により出られなくなり、小曽根真さんが代役、プログラムも変更される。

角野さんはどうされたのか?

疲れが溜まって体調不良なのか、分からないが、彼のことが心配になった。キャンセルではなく、小曽根さんが代役を務められることになったことは良かったが、複雑な気持ちのまま、会場に向かった。

電車の中で、17時半頃、penthouseの東京公演(2/26)の物販のお知らせツイートを受け取り、penthouse東京公演が開催されるなら、角野さんは(PCR検査の結果は陰性で)大丈夫なんだと勝手に解釈し、少し安心した。いや、まだ詳しいことは分からないから、心配は心配だが。。

【2/25追記】2/25(金)17時過ぎに、明日2/26(土)のpenthouseの東京公演の中止の連絡がツイートで来て、18時には角野さんの高熱が下がらない状態が続いているため、中止を決めた経緯の詳細の発表があった。

会場に到着してから判明したプログラムの変更の意味

副都心線の東新宿駅から歩き、18時15分過ぎに新宿文化センターに到着。ホールには以下の案内があった。

ホール入口にあった告知

配布プログラムを見て、角野さんが、2/20、ツアー千穐楽で弾いたガーシュウィンのピアノ協奏曲ヘ調(ガーシュウィンを知りたい方はアメリカン交響楽を観て下さい)を再び弾く予定だったことを初めて知る(公開収録のお知らせHPにも、当選の通知にも角野さんが演奏する予定の曲目の記載は無かった)。

私の席はブロックの17列目(ホールの真ん中より少し後方、文化センターは23列目まで)。オケが全て見渡せ、ピアノの鍵盤も見える良い席だった。私が座っていたブロックの17列はZさんと私だけだった。会場を見渡すと、正確に数えられた訳ではないが、聴衆はざっと200名くらいに見え、300人はいなかったように思われる。

公開収録は、観客対応のホールスタッフをそんなに多く動員できなさそうだから、観客は拍手がそこそこホールに響く人数に絞るのだろうと素人ながら推測した。

開演の18時半になり、司会の安村アナがマイクを持って舞台に出てきた。挨拶はだいたい以下のような内容だったと記憶している。

本日はプログラムを変更し、先にブラームス交響曲3番、次にガーシュウィンのピアノ協奏曲ヘ調の順番になります。

Zさんから聞いたプログラムの変更は、曲の順序が入れ替わるという意味だったと判明した。当日、別の曲に変更するのは、マエストロもオケも難しいはずだ。舞台の上手にピアノが置かれているのも、この変更に合わせ、急遽移動させたんだと思った。

小曽根さんはガーシュウィン協奏曲へ調を、今日の太田弦マエストロと九響と昨年11月に共演しているから、最近(も)弾かれた曲ではある。が、いくら小曽根さんでも当日の朝に代役で弾いてほしいと言われて、夜にいきなり弾くのはハードだったに違いない。でも、角野さんの代わりに予定された公開収録を遂行するために、そして、読響とマエストロからの依頼に応えるために、代役を引き受けられた小曽根さん、やはり素晴らしいと思った。

ガーシュウィンのピアノ協奏曲へ調をいきなり弾けるピアニストはそうそういないし、2/20のコンサートに向け相当弾き込んできた角野さんの代役は誰にでも務まるものではない(これは角野さんのファンの主観で、小曽根さんや、私が存じ上げない他のピアニストの方々の方が経験値があると思うし、私は25年以上小曽根さんのファンでもある)。

ブラームス交響曲第3番

気持ちを落ち着けて、まずブラームスの交響曲第3番を聴くことに集中することにした。

マエストロは小柄ながら、両腕を大きく使って、後ろから見ていて、素人にも分かりやすい指揮をされる方だった。久しぶりのブラ3の生演奏に終始感動した。私はやはり第3楽章が好きだと再認識した。

休憩時間と小曽根さんの登場

ピアノが舞台の真ん中に運ばれ、ガーシュウィン仕様になった。小曽根さんが急に出てきて練習を始めた。ピンチヒッターだから、リハを充分にできず、ピアノのタッチを確認しているようにも見えた。公開収録は、自由な練習風景まで見せてくれて面白い!

しばらくして、マイクを持って安村アナが再登場した。

予定していた角野隼斗さんが昨日発熱し、PCR検査の結果は陰性でしたが、大事をとって出演がキャンセルとなり、代わりに小曽根さんにご出演を快諾いただきました。

角野さん、陰性で良かった。やっとほっとした。全国ツアーや数々の企画(docomoとかTFTとか)、メディアの取材や収録(e.g., Real Sound星野源のおんがくこうろん etc)penthouseのリハなどで疲れが溜まり、体調を崩されてしまったのではないかと思った。

安村アナに続き、小曽根さんがマイクを持ち、話し始めた。

こんばんは。
予定していた出演者より(年齢が)かなり上ですが(会場から、遠慮気味な笑い)、よろしくお願いします。

今朝9時に電話がかかって来まして、その時は御殿場に向かっていたのですが、14時にリハーサルに来て欲しいと言われ、それは間に合わないと断ったのですが、太田マエストロとは11月に共演していたため、何とかなるかもと引き受けました。こちらには1時間前に着いたばかりです。

オーケストラに合わせて頂くことでお願いしたいと思います。僕はジャズ屋なので・・。

※ ()内は私個人の補足

笑いも取りながら、何とかやってみるよ、という謙遜する小曽根さんの姿、お話に会場も和んだ。

公開リハとソリストからの聞きどころ解説

安村アナより、これから少しリハをやる旨、説明があり、観客席からはどよめきが起こった(ような気がした)。実際マスクをしており、黙っていないといけないので、歓喜の声を上げられなかった。

公開リハまで見られるとは!
と内心ワクワクした。

安村アナより、小曽根さんに「この協奏曲の聴きどころは何ですか」と質問がなされ、小曽根さんが答えた話が分かりやすかったため、それを残しておきたい。

聴きどころは1楽章で、盛りだくさん。終わった後に拍手が起こることもしばしばです。

2楽章はNYの夜明け。朝4時ごろ、バーでまだ飲んでいる感じ。Jazzy musicに耳を傾けながら、そのまま、またNYの夕暮れを迎える。やるせない気持ちを昇華させていくブルース。

3楽章はもうフェスティバルで、駆け抜ける感じです。

このコンチェルトは、3曲をいっぺんに聴ける(お得感がある)→ 3つの楽章というより、3つの独立した曲を連続で楽しめると言いたかったのだろう。

19時半過ぎから、マエストロの誘導で貴重な公開リハが始まった。1楽章から順にマエストロが大事だと考える?パートを、指揮台に置かれた譜面をパラパラめくりながら、例えば、ピアノの入りや、ピアノと各楽器とのセッションなどのパートの確認作業が行われた。

途中で小曽根さんは、観客席に顔を向け「ピアノの音、大きすぎませんか?」と聞いてくる。
「あ、お客さんに聞いてます。大きすぎるとビックリするかと思いまして」と。私たちにピアノの音量を確認してくれ、場を和ませる小曽根さんの人間性の素晴らしさ、チャーミングな姿にまた惚れてしまった。

公開リハが既に楽しく、隣の隣に座っていらした、ほぼ初対面のZさんと何度も目が合い、凄さを共感し合った。

リハ中とはいえ、観客席にこんな風に話しかけるって!ブルーノートのライブに来たようなアットホーム感を感じた。

約20分の公開リハが終わった。マエストロと小曽根さんはいったん下手に、コンマスが音合わせを行い、本番の準備に入った。

本番:Gershwin Piano Concerto in F Major

安村アナが改めて曲目、ソリストを紹介、マエストロと小曽根さんが改めて舞台に現れ、観客は大きな拍手で2人を迎えた。
本番は20時過ぎから開始したと思う。

本番は小曽根ワールド全開、マエストロと読響オケとの息ぴったりの演奏に自然に引き込まれていった。日曜の角野ver.は、隼斗少年が今出せる力を出し切った、若々しくエネルギッシュな演奏だったが、小曽根ver.はカッコいい大人の香りが漂い、いい意味で脱力した、余裕のある演奏だった。操縦士小曽根が、ホールまるごと、NYに連れてってくれた感じがした。

百戦錬磨の小曽根さんが奏でるピアノ協奏曲ヘ調は、1楽章から3楽章まで、クラリネット、トランペット、フルート、バイオリン、打楽器・・・どの楽器奏者、楽器パートとのセッションも、リズム、タイミングが心憎いほどあっていて、どの掛け合いにも即興感があり、一瞬一瞬にワクワクした。

1楽章のスラップスティックとのセッションは特に気に入った。角野さんの東京フォーラムの公演では、前方席でオケの全容があまり見えなかったため、今日は全ての楽器がほぼ見渡せ、セッションしている楽器奏者も一人一人分かるのが楽しかった。

小曽根さんといえば、リハで弾いたフレーズと別のをアレンジして弾いたり、1楽章から小曽根節を徐々に炸裂させていった。

マエストロとのアイコンタクトのみならず、ブルーノートのライブの時のように、たびたび観客席の反応を観るかのように、顔を聴衆に向け、「楽しんでいるかい?」って聞いてくるような余裕なそぶりも堪らなかった。

2楽章は、ご本人の聞きどころ解説通り、NYの夜明けにバーの雰囲気で、ブルースの自由なアレンジが素晴らしかった!カデンツァのアレンジはもう最高!!Vn.のソロもブルース感が出ていて良かった。
やるせない気持ちを昇華させる雰囲気とともに、未来への期待、アメリカンドリームを追うジョージ・ガーシュウィンの姿まで思い浮かんだ。ここには、今日弾くはずだった角野さんに対する労いや激励の気持ちもこもっていた気がした。

3楽章は、先楽章以上にアドリブ風即興演奏が増え、マエストロやオケとよく合うなと、ただただプロの指さばき、身体でのリズム取りに見入り、聴きいった。カデンツァでは、身体を前後左右に揺らし、左足は宙を舞うほどにリズムに乗っていて、怖いものに向かって行く勇気が大事というご本人の以前の言葉通り、小曽根さん自身が「音楽」という冒険を心から楽しまれていて、私たちもそのスリリングな小曽根ワールドを心から堪能した。カデンツァで、小曽根さんがやんちゃな少年のように遊びすぎて(失礼っ!)、何とか戻ってきた時にオケが合わせられるところ、それをまとめたマエストロも凄かった。

アンコールでは、バスを舞台前方に呼び、即興的にDuoを。そこにはラプソディ・イン・ブルーのメロディーも混ぜてきてくれ、バスのアドリブもカッコ良かった!

終演後は、万雷の拍手。そこにいた200人強の観衆1人1人が10人分くらい拍手しているかのようなボリューム。何度かカーテンコールが続いた後、場内が明るくなり、最後、小曽根さんはピアノに近づき、大屋根を低い位置に下げ(全てのオケのメンバーの顔が観客席に見えるようにし)た(カッコ内は私の想像)。

何というサービス精神とユーモアに溢れたソリストだろう!

改めて小曽根さんのエンターテイナー性や人間的魅力に感服した。

以下、FBのヒラサ・オフィスの記事より。終演後のマエストロと小曽根さん。

一夜経ちましたが、 太田弦 & 小曽根真、昨晩の読響プレミア収録でした! 昨日の朝お話をいただき公演に臨んだ小曽根の快演、存分にお楽しみいただきました!!! 太田と小曽根、昨年11月に同じ曲で再び共演でしたからこそ、なせる技でもあります。お客様、オーケストラの皆様、ありがとうございました!!

Posted by ヒラサ・オフィス Artist Management M. Hirasa Ltd. on Thursday, February 24, 2022

帰宅後: ご当人達のツイートに胸が熱くなる・・

帰宅途中、角野さんのスタッフアカウント、角野さん自身からお詫びのツイートが入っていた。以下、時系列に並べる。

角野さんが小曽根さんをメンションして、大先輩にお詫びと謝意を示したところ、小曽根さんが、この日のために頑張ってきた角野さんに敬意を表し、マエストロや読響に謝意を表され、謙遜されたリプをなさった。大変僭越ではあるが、小曽根さんは、なんと器の大きな方なんだろうと胸が熱くなった。

また、読響のVnの小田透さんも、角野さんにやさしいリプを返され、何と、ガーシュウィンをリベンジしましょう!とまで!ぜひして頂き、TV放映を実現して頂きたい🙏

小曽根さんと角野さんの間の深い信頼関係と友情に、末席を汚す1人のファンとしてじーんときた。小曽根さんは角野さんのご両親より年上かもしれないが、年齢差など全く関係なく、お互いの音楽を尊重し合うお二人の間柄や人間性が本当に素敵・・。また、読響のVn奏者の小田さんのメッセージも暖かくて、ほろっと来た。

以下は小曽根さんのリプに、角野さんのファンが沢山のメッセージを送ったことへの小曽根さんの感謝ツイート。なんて素敵な方なんでしょう!

小曽根さんは昨日は大阪にいらしたはず。還暦を迎えられても、お元気に全国を飛び回られていて、小曽根さんよりまだ若い私、頭が上がらないし、私なりにひと花、ふた花咲かせるべく頑張らなきゃと、小曽根さんからやる気も頂いた。

まずは角野さんの一刻も早い回復を願ってやまない。

予定されている4月と5月の放送も楽しみに待ちたい。小曽根さんのガーシュウィンは、4/20深夜の放送で、ブラームス交響曲第3番が5月の予定。

当日の配布プログラムよりスクショ

4/7追記: 音楽プロデューサーと小曽根さんの振り返り

日本テレビのHPの読響プレミアのページに4月の演奏・聴き所として、音楽プロデューサーの新井鴎子さんの演奏レビューが掲載されたので、追記しておきたい。

また、この記事を参照しつつ、小曽根さんがFBで当日のことを振り返っているため、それも追記しておきたい。泣けてくるパラグラフを以下に引用させて頂く。親子以上に年の離れた男の友情、心温まる。

本番までには東京に戻れるけどリハができないからと話したのですが、再度電話があり、他でもない親友の角野隼斗くんのピンチヒッターということなので演奏させて頂くことに。

朝9時、東名高速を西に向いて走っている僕の携帯が鳴る。「今夜、ガーシュウィンのヘ調のコンチェルトを読響さんと演奏して頂く事は可能ですか?」 9am, I was driving towards West on TOMEI highway...

Posted by 小曽根真 Makoto Ozone on Wednesday, April 6, 2022

以下にツイートも載せておく。

(終わり)


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