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音楽×国語/新しいレッスンを始めました

このご時世で、動画や通話アプリを使ったリモートレッスンを始められた先生方も沢山いらっしゃると思います。

僕もリモートレッスンを始めてみました。まとまった時間繋ぐのではなく、動画ワンポイントを複数回、という形をとったので、プロセスを細かく追跡・フォローできるメリットを感じた一方、主に音色面で、微妙なニュアンス、肝心なところが伝わらないもどかしさがありました。「神は細部に宿る」。微妙な音色の翳り、タイミングのずれ、和声感に寄り添った背中を緩めるタイミング、淡いタッチとくっきりしたタッチのコントロール(1cmの鍵盤のなかの、さらに数mmのアフタータッチの感触を手がかりにします)などなど…。

そこで、リモートでは、これと並行して、脳内の知的把握面に特化したアプローチをしてみることにしてみました。音楽を言語化する練習です。

たとえば、みなさんは、ある作品を聴きながら、音楽的に何が起きているか、音楽の実況中継ができますか?

みなさんは、いま取り組んでいる作品の、どこが素敵かどこが面白いか、解説できますか?

そもそも、音楽の表現は、自分の内側から湧き出てくるものでないと意味がありません。先生は、表現の引き出しの開発のお手伝いはできるけれど、目の前の作品をどう表現するかは、みなさんひとりひとり次第です。

自分がどう表現したいか、という欲求は、作品を深く知ることによって生まれてきます。音楽の中身の観察だけでなく、作曲家のこと、その作品がそもそもどんな作品なのか、など。そして、これは、先生から教えてもらうことではなく、作品に取り組む最低限の準備として、自分で調べるべきことだと思うのです。

そして、単に調べるだけでなく、その曲を初めて聴く人にわかりやすくガイドできるよう言葉にしてみる、というのは、意外と難しいことです。でも、言葉にしてみることを通じて、自分の中での作品像が整理され、どう表現したいかがおのずと見えてきます。この「おのずと」が重要。表現は押し付けではなく、内から湧き起こるものでないといけません。そして、音楽を演奏し、その時間を聴く人たちとともにするということは、その人たちをその音楽の世界にご案内するということであり、作品のガイドができる状態でないといい演奏になりません

4月に試験的に始めた僕の中学生クラスでは、まず、作品の観察眼を身につけてもらうのに、ソナタから始めました。ソナタの構築プロセスを観察する際、「凡庸なソナタ形式のテンプレート」から逸脱した新鮮な要素が、作曲家の創意工夫のあらわれで、表現のポイントになります。だから、ベートーヴェンたちの非凡さがわかるうえでも、ソナチネアルバムに載っているような凡庸な曲と比較しながら考えることが重要になります。

プレレクチャーの後に、任意のソナタ形式の楽章を観察してもらい、それを自分の言葉でガイドするプレゼンをしてもらいました。これは、中学2年のK君がチャレンジしてくれたベートーヴェンのプレゼンのメモ(レジュメ)です。それぞれに試行錯誤しながらがんばってくれています。

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プレゼン発表会が終わったあとに、ZOOMの画面・音声共有機能をつかって、ベートーヴェンの第5交響曲を一緒に聴く時間を設けましたが(内藤の実況中継つき)、みんなの耳がだいぶ構造的に聴けるようになっていて嬉しく思いました。

今月は、いま弾いている曲を自分なりに徹底的に調べてみて、プログラムノートを書いてみよう、という課題をやっています。調べ方のヒントや、資料の提供などはしています。ここでも、単なる客観的な知識の受け売りではなく、自分自身のビジョンが反映された文章を、というのを目標にしています。演奏家自身がプログラムノートを書くことが増えていますが、「これからその演奏家の弾くこの曲の演奏を聴きたくなる」ような文章でないと、自身が筆をとる意味がありません。

これは、さきほどの中学2年のK君の添削例です。随時、参考になる資料やリンクを共有しながら、周辺への理解を深めていきます。中学生たちはZOOMで読み合わせの機会を設けたので、他の人の文章を読むのも刺激になったようでした。

プログラムノート(諒輔くん)

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このような、音楽と国語を融合させた「音楽の言語化」クラス、ですが、騒動の収束後も続けていこうと思っています。いまグループレッスンで開講しているのは中高生クラス、ですが、大学生や大人の方、小学生の方も個別指導で対応します(増えたらグループでzoom発表の時間を設けます)。

主宰のピアニスト内藤晃は、言葉と音楽の出会う領域に携わり、音楽をいかに言語化するか思考をめぐらせてきました。

内藤 晃(ないとう あきら、ピアニスト)

アウグスト・ゲレリヒ著「師としてのリスト」翻訳主幹・監修(2021年はじめに音楽之友社から刊行予定)
チャールズ・ローゼン著「ベートーヴェンを読む」翻訳監修
月刊「音楽現代」にて「名曲の向こう側」連載
月刊「ムジカノーヴァ」「ショパン」等への寄稿多数
プログラムノートの寄稿(藤原直也、阪田知樹、ほか)
CDライナーノートの寄稿(バッハ:パルティータ集/イェルク・デムス、若き日のバドゥラ・スコダ、ドビュッシー&ラヴェル:弦楽四重奏曲集/ヴァン・カイック四重奏団、シューマン:クライスレリアーナ/プリマチェンコほか多数)
楽譜の曲目解説(ヤナーチェク:ピアノ作品集、シューベルト=リスト:歌曲集、アイアランド:ピアノ曲集、13人の女性によるピアノ小品集、今年が記念のわたしたち2018〜2020ほか多数)

レッスン料金は今のところ次のように考えています。言語化クラスに手応えを感じ、全国に拡充したいと考えているので、初月無料にしたいと思います。

言語化クラスのみ 4000円/月(初月無料
リモートレッスン&言語化クラス 11000円/月(初月7000円
 リモートレッスンは、動画ワンポイントレッスン複数回のやりとりです
対面レッスン 5000〜10000円/回(学年・時間などに応じて)

お問い合わせをお待ちしています。
レッスンお問い合わせ → officekumo@gmail.com

なお、どのように資料を読み解いていくか、については、僕の読書案内の動画をどれかご覧になってみてください。シューマン編を貼っておきます。


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音楽の奥深い面白さを共有したいと願っています。いただいたサポートは、今後の執筆活動に大切に使わせていただきます!執筆やレッスンのご依頼もお待ちしています(officekumo@gmail.com)。

ありがとうございます!ほかの記事も楽しみに読んでいただけると嬉しいです
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ピアニスト。おんがくしつトリオ主宰。月刊音楽現代にコラム「名曲の向こう側」を連載。楽譜やCDの解説多数。新しいこと、面白いことを追い求めて音楽活動をしています。http://akira-naito.com/
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