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NO YOUTH NO JAPAN × ディベートに挑戦してみた (社会課題(SDGs)教育としてのディベート実践例)

こんにちは!「1億総ディベート時代」を目指して活動しているディベート教育実践家の加藤彰です。コロナ禍で、ディベートに限らず教育関係者の皆様は苦労されているとよく聞きます。デジタルデバイドへの対応、「コロナ疲れ」の最小化、教材の大幅な加筆やコンテンツの変更等色々あるかと思いますが、私なりの理解では特にディベート教育では「目的に立ち戻ること」が特に重要になったと思います。特にディベートは、その効用が広いが故にいろいろなデザインがそもそも可能ですが、改めて目的に応じて「ここだけは抑えなくては」ということを問いかけながら、考えていくことになるかと思います。(私も十分にできているかわからず、試行錯誤しています)

今回は「社会課題教育」「SDGs教育」「ESD」の文脈の目的に立ち戻った話をしてみたいと思います。結論としては、NO YOUTH NO JAPANとのコラボが凄く助かりました。

NO YOUTH NO JAPAN「大学生を中心として、若い世代の政治参加をもっと身近なものにすることを目指している団体」です。参加型デモクラシーを文化にするというビジョン達成のため、「U30世代が政治や社会を知って、スタンスを持って、行動する入り口をつくる」をミッションに掲げています。

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団体として特定の政党/政治家を支援することではなく、社会で起きていることを分かりやすく社会に伝えることを目的にしています。私が特に注目しているのは、Instagramでの取り組みです。2021年4月時点で6万を超えたフォロワーがいるのですが、分かりやすく社会課題を伝えてくれています。見る方が早いのですが例えばこんな感じです。

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事前に代表の能條桃子さんと打ち合わせさせて頂いたのですが、社会課題教育をあえてシンプル化すると、「知る」「自分事化する」「行動する」の3つが相互作用することが大事なのではないかと思いました。(3つのプロセスが流れることが一般的ですが、自分事化して行動することによってまた知ることにもつながる、ということもあるかと思います。)

即興型ディベートというのはある種「自分事化する」ことに繋がりやすいです。なぜなら、特定の議題で賛成側/反対側で選べないが故に、幅広い人たちの声を想像しながら話すことが求められるからです。スポーツ/競技としてディベートをされる中にはその中で深く知ることに繋がり、職業として国連機関、NGO、政治家、弁護士に進まれる方もいらっしゃいます。

一方で、長くスポーツ/競技で行う形ではない場合でも、解説や自主学習で「知る」というところをより効果的にやる方法はないかと思い、それが「知る」ことをとても上手にやられているNO YOUTH NO JAPANさんが良いなと。そして「行動する」ということでは、「個人としてどうすることが必要か」ということに重きを置いているNO YOUTH NO JAPANと、ある種政治家などの立場だったとして「社会としてどうすることが必要か」まで自由に発想できるディベートの相互補完関係があるのではないかとという話になりました。どこまでできたのかという定量的な事実を示すことは難しいですが、事実、私の授業を受けてくださった受講者の方は早速アカウントをフォローされるなど、その効果があるように感じました。

では、具体的にどのように授業を進めたのかも報告させてください。(なお、対象はディベートを行ったことがない中高生だったり、大学生だったりします)

1.まず、ディベートのルールやスピーチの型等を最初に説明します。簡単に言うと、「賛成側」と「反対側」に分かれて、「AREA」と呼ばれる主張・理由・例・主張の順番で分かりやすく話すこと、相手の話によく耳を傾けながらあえて反論してみることの重要性などをお話ししました。場合によっては少しAREAで話す練習を身近なトピック(趣味等)で行ったりもしました。

2.次に、実際にディベートの議題での簡単な賛成側/反対側で話す練習をしました。(慣れてきたら、実際に試合をしてみたケースもあります)。例えば、「コロナ対策のために、一般市民の不要不急の外出に刑罰を科す (不要不急の定義は別途設定し賛成側=刑罰あり、反対側=刑罰なし)」、「完全リモートワーク/リモート学習の世界の方が、完全オフラインでの仕事/学習よりも良い(賛成側=完全リモートワーク/学習、反対側=完全オフラインワーク/学習)」のようなコロナの議題をやってみたいという声があったのでそれを行ってみました。

3.試合/演習が終わった後に、ディベートの解説を行いました(どのように主張や反論の仕方が良かったかなどのフィードバックもここで行います)、また、賛成側や反対側がほかに言えそうだった話を追加しつつ、ここでNO YOUTH NO JAPANの教材を使わせてもらいました。

例えば、下記の画像を見せながら、「コロナで外出に刑罰が科されるようになったら、どういう人が影響を受けるか考えてみることが大事で、こんな風な人たちもいますよね」というような説明の仕方です。(また、リモートワーク/学習という場合では、一番下の学生が影響を受けますね)

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また、あえて対立軸を単純化すると、外出の刑罰化では、賛成側の「感染拡大」と反対側の「経済」の優先順位のつけ方やバランスのとり方などにもなり得る、という話もしました(もちろんこの2つは完全なトレードオフの関係ではなく、それらの相互関係などもあるということもお伝えしています)なのでコロナの外出の刑罰化であれば、「感染拡大のため」という賛成側と、「経済活動」の反対側というところから発想を始めるところもあるかもしれない、ということです。

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この後はまたいろいろ別の議題であったり、ディベート力を高めるための講義や解説なども行うのであくまで1部分ではありますが、ディベート×NO YOUTH NO JAPANはこのような形です。

今回のこのようなコラボの感想としては、何より教材がやっぱりわかりやすい!ということです。もちろん一つの教材は完璧ではないですが、複数の教材を組み合わせる中の一つとして非常によく纏まっており、またビジュアルがとても良いのですっと理解に繋がります。オンラインの授業では画面共有で、オフラインの授業では投影して見せたのですが、受講者(生徒)の皆さんがじーっと見ていたのが印象的でした。特に難しい社会課題の教育文脈では重要なのだと思いました。(できるだけ私も動画などを活用してはいるのですが、シンプルにまとまっており良いなと思いました)。また、他のテーマを「知る」こと、言い方を変えると自習での予習や復習にもつながることも感じました。授業のアンケートなどをとっていても、「今日さっそくインスタグラムのアカウントをフォローして、明日までにいくつか見てきます!」と特に私が何か伝えたわけでもないのですが報告してくださった方もいらっしゃいました。そう考えると、「行動する」というところにもいずれ繋がっていくのかもしれないです。

これ以外のテーマもたくさん行わせていただきましたが、いろいろなシーンで本当にこの教材は役に立ちました。改めて感謝なのと、他のディベート教育や社会課題教育などで、今回お伝えした方法論が少しでもお役に立てれば幸いです。ご質問/ご意見等お待ちしています!

(参考)
NO YOUTH NO JAPANのHP: http://noyouthnojapan.org/ /
Instagram: https://www.instagram.com/p/CJZzRatLzJZ/
即興型ディベートの教科書: (Amazonリンク)
著者(加藤彰)の連絡先:Twitter

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