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シェアすることで世界はより良くなったけど、ちょっとだけつまらない

炎天下の中、大都会東京を歩いていた。
耳につけたワイヤレスイヤホンからはSpotifyで再生されたおすすめの最新ヒット曲が流れている。

いつからだろう、最新のヒット曲も売れてるアーティストの名前もよくわからなくなったのは。
いつからだろう、聴きたいと思った曲がググってすぐに聴けるようになったのは。

鏡面貼りのビルに映る自分の姿を見て、ふとそんなことを思った。耳からはコードも垂れていないし、ポケットにはウォークマンもない。

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そういえば、久しくTSUTAYAにも行ってない。

毎週のMステで新しい良い曲はないかチェックして、学校で友達におすすめのアーティストを教えてもらって、次にTSUTAYAへCDを借りに行くのが楽しみで仕方なかった中学生の頃。

あの頃は少ないお小遣いの中で今月は何枚CDを借りれるか考えて、TSUTAYAの棚の前でどのCDを借りるか、何時間も悩んだ。レンタルしたらさっさと家に帰って、それをせっせとパソコンに取り込んで、またぱっぱと返却しに行った。

新しい曲を取り込んだウォークマンはなんだかすごくキラキラして見えて、よくわからないけどバージョンアップしたみたいで、満足感がハンパなかった。
新しい曲を手に入れて、またひとつ大人になった気がしてたのかもしれない。

そんな感情、
いつから体験しなくなったんだっけ。

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Spotifyがあって、Amazonミュージックもあって、YouTubeもあって、他にもたくさんサービスが増えて、たしかにあの頃より便利になったと思う。

シェアって考えがじわじわと浸透していって、世界は確実に良い方向に向かっているんだと思う。
僕自身、「所有」するよりも「共有」する方がよっぽど社会は豊かになると信じてる。

だけど、
なんだかちょっとだけ寂しい。
なんだかちょっとだけつまらない。

僕はポケットに「僕だけの音楽」を持っていたいと、まだちょっとだけ思ってる。

まったく、ややこしいったらありゃしない。

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そんなセンチメンタルなことをちょっとだけ思った、あの頃の夏よりだいぶ暑い夏を歩きながら。

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