140字小説3編「詐欺・保健室・ラブレター」
詐欺
電話を保留にして訊いた。「グーグルプレイカードってどこですか」若い女の店員が売場まで案内してくれた。電話の主が3万円と5万円いずれかと言うので5万円分を買った。「はい、はい、今購入しましたのですぐ家に戻ります」店員がやけににやにやしている。俺は詐欺犯よりもあの女が憎い。教えろよ。
保健室
中学一年の途中からずっと保健室で勉強した。保健の先生になりたてのその人は最初僕の扱いに苦慮していたがそっとしておいてくれた。本当はダメだけどたまに紅茶とお菓子をくれた。カーテンで仕切られた先生と僕。卒業おめでとうと言ってくれたのに僕は最後まで言葉が出てこなかった。先生ありがとう。
ラブレター
心の均衡を保つために胸のやじろべえを外す。ゆれるものをなくしましょう。それから手紙を開く。初めて貰ったラブレター。太ってるなんて思わない。僕は文香さんが大好きです。うふふ。いけない、心がゆれてしまう。旭川の花火。雨ふるような獅子座流星群。最後にみせた困り顔。わたし明日結婚します。