マガジンのカバー画像

『子鬼のつぶやき』

12
「クラブBA」会員、にぎた/BAがお届けする短編ミステリー小説。中学3年生の主人公、半田圭司が進める”推理”の行方は—
運営しているクリエイター

#短編小説

『子鬼のつぶやき』 第十話

(→第九話)

「ひとつ思ったんだけどさ」

 まだ鼻声であったけれど、しょうちゃんは元気に部活へ来ていた。

 朝、顔を見るなりこちらへ駆け寄ってくれた友人は、まずは昨日の欠席を律儀に謝った後、自身の調査について述べた。

 結果は白紙。喜ばしいことだけど、クラスメイトたちが事件や事故に巻き込まれたことはなかった。

 圭司も告げた。家族には変わりはない。引っ越した先のサニーハイムにも、何も手が

もっとみる

『子鬼のつぶやき』 第八話

(→第七話)

祖母の家

「ごめんね。気を遣わせて」

 ゴホンゴホン、としょうちゃんの声が電話越し聞こえた。どうやら夏風邪は本当らしい。ひどい鼻声だった。

「もう熱は下がったんだけど……ヘックション! ごめんごめん。まだ咳と鼻がでるんだよぉ」

 練習が終わり、祖母の家へ向かう道中、圭司は彼に電話をかけたのだ。2コールほどでしょうちゃんは出てくれた。きっとゲームでもしてたのだろう。圭司はどこ

もっとみる

『子鬼のつぶやき』 第七話

(→第六話)

呪い「今日はお祖母ちゃん家に行くよ」

 翌朝。運転する順子に、圭司はそう伝えた。

「……そう」

 バックミラー越しに感じた母の視線を、圭司は代わり映えのしない窓外を見ることで避けた。

 結局、昨日はしょうちゃんから連絡が来なかった。お化けの正体を突きとめるための、最後の道しるべ。きっとしょうちゃんも行き止まりにぶち当たったのだろう。

 ぼくはころされた――。

 お化けが

もっとみる

『子鬼のつぶやき』 第三話

(→第二話)

名探偵

「どうしたの? 調子悪いじゃん?」

 寝不足? 
 休憩中、そう言って圭司の隣に座ったのは「しょうちゃん」こと、上内正平だった。チームメイトであり幼なじみの彼は給水ボトルをくれた。

「ありがとう」

 今時珍しいスポーツ刈りに、昔から小太り気味だったしょうちゃんは、それでいて走るのがチームで一番速いのだから、「爆走戦車」の異名も持っていた。明るい性格のおかげか災いか、

もっとみる

『子鬼のつぶやき』 第二話

(→第一話)

部活

 目が覚めると、圭司はすぐさま昨晩のノートを見直した。

 数学の宿題のノート。その隅っこに書かれた一言。
――ぼくはころされた

 僕は殺された、とつぶやいてみる。それからようやく、圭司はホッと胸を撫で下ろした。いつの間にか書かれていたそれは、また消えてしまうのではないかと、正直ヒヤヒヤしていたのだ。
 けれど、確かにそれは見間違いではなかった。

 季節は夏の盛り。昨日

もっとみる