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クリエイティブディレクター・作家・唎酒師 │クリエイターインタビュー1

職業人生が70歳までだとしたら、40代はちょうど中間地点。これまでの20年間と同じぐらい色々な事ができると考えると、これからの20年で何でも出来る気がするし、かと言って興味のない事に時間を費やすほどの時間は無いし。そんな迷える43歳インタビュアーイシダが、今後の時間の費やし方の参考にさせてもらおうと、同年代の気になる方々にお話しを伺って、せっかくならnoteで公開する「40S CREATOR’S INTERVIEW 中間地点折り返し戦略」。初回は、クリエイティブディレクター・作家・唎酒師 太田伸志さん。肩書きを見ただけでも色々なチャレンジをされている事がわかる太田さんに、そのバイタリティの源を伺わせてもらいました。

クリエイティブディレクター・作家・唎酒師

太田伸志(おおたしんじ)Steve* inc.(steveinc.jp)代表取締役社長。クリエイティブディレクター、作家、唎酒師。TOKYO MX 『アニメ 大福くん』脚本執筆/Pen Online『日本酒男子のルール』連載/七十七銀行FLAG『大学で教えてくれないことは東北の居酒屋が答えをくれる』連載 太田伸志(おおたしんじ)|note


以下、太字はインタビュアー 、細字は太田さんです。画像は全て太田さん提供。

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太田さん(左) 日本酒が好き過ぎて唎酒師の資格を持ってます。


 ーー思いつきの企画をお受けいただきありがとうございます。早速ですが、「今後やりたい事」という質問に「やりたいことを全部つなげる。」とアンケートに記載いただきましたが、そこから伺いたいです。

 「やりたいこと」を並べていくと、日本酒のお店作りたいし、コーヒー好きなんでカフェとかやりたいなーって思ったり、本も出したいし、あとキャンプ道具を揃えるのは好きなんですけど、キャンプあんまり知らないから、YouTube とかもやってみようかなとか。仕事の影響でファッションも興味わいてきましたし。建築とか音楽とかもやりたいし。

 カフェって話で言うと、スタバでアルバイトしようかなって。(会社の)メンバーが許してくれればやりたいんですよね。社長、仕事してくださいって怒られます(笑)


 ーースタバのアルバイトにどのような事を期待して?

 コーヒーのこと勉強したいし、そのお客さんに出す感じも知りたい。裏側の連携も覚えたいし、豆をどうやって選んでるのかなとか、経営・運営側を知りたい。
あと、店ごとにインテリア・内装が違うのは、どういう決め方なんだろうとか。色々勉強になる事がある。スタバって完成されてるチェーンだと思うので、こういうチェーン店の美しさみたいなのに興味あるんですよね。純粋に知らない業種、業界を知りたいって言うのは凄くありますね。


 ーーやりたいことを「全部つなげる」というのは?

 この4月から、サッポロビールさんでサブスク(HOPPIN’ GARAGE ホッピンおじさんの新作定期便)が始まったんですけど、そのスターターキットとして配られる絵本の、お話を執筆したんですよ。新しいビールが出来るごとに、絵本の連載が続いてくってフレームを提案して。
いつか絵本を作りたいとは思ってはいたんですけど、初めてだったので、仕事の中で印刷所さんとのやりとりとか、イラストレーターさんに描いてもらったりとか、絵本の作り方を勉強させてもらいながら作ったって感じで。

スタバのバイトの話だと、時給を稼ぎたいわけではなくて、スタバで覚えた経験を別の仕事で、例えばイベントでコーヒーを作るって言うような提案ができたり、色々なやり方を覚えることによって、提案できる話が増えてくる。

絵本作りやカフェでの経験が、僕の中ではバラバラじゃなくて、新しいことをゼロから覚えることによって、幅が広がるって感覚。

一般論で、「生まれ変わったらこれやりたいなー」とか「引退したら老後はこれしたいな」っていう、今やっている事と並行して出来ない感じがあるじゃないですか。
僕は、待たずにどんどんやっていきたいんですよね。それが「やりたいことを全部つなげる。」のイメージです。


 ーーそこ、一番聞きたかった部分です。やりたい事をどんどんやっていく事ができている要因って何ですかね?性格なのか、社長と言うポジションになったからなのか。

 元々の性格もあるとは思うんですけど、時代がそうなってきてラッキーって感じはありますね。
僕が大学の時は、新卒で一生の仕事が決まるみたいな概念が強くて、ものすごく緊張したんですよ。高校生の時に文系か理系か選ぶ時も、すごく緊張した。「ここで決めたらもうそうなっちゃうの?」って。大人たちに聞いても、「将来どう生きたいか考えた上で決めろ」って言われるだけだし。当時、理系の方が点数よかったんですけ、理系の仕事をするイメージがつかなくって文系にしたし。大学も美大に入りたかったけど、「それで食ってく事なんてできねーぞ」って親から言われて、とりあえず経済学部に入ったり、延命治療みたいにしてたんですけど。いよいよ就職って時に、「マトリックス」って映画を見て、キアヌ・リーブスがやってたシステムエンジニアがこれから来る雰囲気がしたんで、とりあえずシステムエンジニアになって。

でも、システムエンジニアって想像してたほど面白くはなくて。それで稼いだ給料で、好きだったデザインの本、佐藤可士和全集みたいなのを買って、それでバランスとってましたね。仕事は辛いけど、一所懸命勉強してプログラム覚えて、好きなデザインの本を買って生きてくんだろうなって思ってました。

けど、なんか時代が、「Webデザイン」っていうものが世の中に出てきて、エンジニアがデザインしたり、デザイナーがプログラム覚えたりとか。「あれ、俺いま入れるかも」って思って、勢いで仙台から東京に出てきて、デザインの仕事をやりだしました。

東京でなんとかWebデザイナーっていう仕事ができるようになってから知ったんですけど、「CM 作る人と映像作る人とWebデザインやる人って別なんだ」ってびっくりして。デザイナーになったら全部できると思ってたんですけど、広告代理店の仕事のやり方とか知らなかったんで。

じゃあ趣味で CM の勉強とか絵コンテの書き方とか覚えようと思ってやってたら、なんでもかんでもデジタルから考えようっていう時代に急に変わってきて。デジタルの人が作る映像ってどんなもんだろうって映像の仕事もできるようになって。

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代表を務めるSteve* inc.オフィス


クリエイターにとって楽しい時代に

 ここ10年、他の業種をやってる人に頼んでみたら、全く新しいものが生まれるのかもっていう面白さが、世の中が求めてるように思いますね。予定調和を嫌っているというか、飽きてる感じ。テレビ屋さんが作った番組だと、結局こうなるのかなって予想できる感じに満足できなくなって、YouTubeに流れちゃってる感じとか。

僕の話で言うと、ビールの缶のデザインって、その道のデザイナーが30年ぐらいやってないと出来ない仕事だと思ってたんですけど、もう10本以上作らせてもらったりしていて。

だから、何でも繋がっていくと思って、色んなことやっといた方がいいかなっていうマインドではあります。全然やりたい事とは別の事をやらされてるって思うよりは、チャンスがあれば、繋げていくって思いで、やりたい事を広げています。


 ーーテレビがYouTubeになって、コミュニケーションがマスからパーソナルに、小粒なものになっていくと、佐藤可士和のような人は出てこなくなりますかね。

 もう生まれないと思いますね。さんまさん、ビートたけしとかタモリさんみたいに、佐藤可士和さんは、ずっと現役でいるんじゃないですかね。それで、違う道を選ぶ人と、それでもいつか佐藤可士和さんになりたいと思って、もしかしたら永遠に追いつけないかもしれないけど、っていう人と分かれていくんじゃないですかね。


 ーーなるほど。マスの時代に築いたポジションは崩せない。引退待ちみたいな。

 勝てないんじゃないですか。でも、可士和さんにはなれなくても、クリエイターにとってこれからもっと楽しい時代になると思います。極端に言えば、どんな職種もクリエイターだと思うんですよ。銀行員さんが融資の計画をたてて、どう投資して、いつ回収するかって、企画だと思うんですよね。街づくりもそうだし、小池百合子さんがやってることはクリエイティブディレクションと言えるかもしれない。だから、いわゆるデザイナーとか、広告業界のプランナー、クリエイティブディレクターみたいな言葉は徐々に崩壊していると思うんですけど、わかりやすいと思って僕も(クリエイティブディレクターと)言ってるだけなんで。

タモリさんは「タモリさん」って職種だと思うし、可士和さんは「可士和さん」と言う職種かなっていう気がするんですよ。今日(のインタビューは)、太田さんって思い出してくれたこと自体がすごく嬉しいし、逆に山を走るとしたらイシダさんに相談してみようって思うし。なんか、アウトプットの知名度よりも、人の考え方への共感の方が高くなってるのかもしれないですね。カンヌで賞を獲ったから仕事を依頼しようとはあまり思わなくて、どういう考え方をしてるから相談してみようとか、そんな時代なのかなって。

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撮影で地方に行くことも。はしゃいでますね(笑)


今こそ失敗の経験が生きる時代


 ーー大学で先生もやってるじゃないですか。マスでなく、個々のコミュニケーションの時代に、どういう事を教えるんですか?

 東北学院大学で、なぜか文学部で教えてるんですけど、そこで教授に言われてるのは、今の学生は調べたり知識はすごく多いんだけど、そこから自分でどう考えて、どう思っているって表現する事ができない学生が多いらしくて、「太田君そういうの得意でしょ」って言われて。何を見て得意って思ったかわかんないですけど(笑)

授業では、例えば「自分たちの大学の嫌だと思うところ」というテーマを決めて、学生に考えてもらう。「家から遠い」とか「学食が美味しくない」とか出てくるわけです。学食が美味しくないのが嫌っていうのは、「学食では家よりも美味しいものが食べられるって期待してるって事」って聞くと、「そうかもしれない。家でコーンフレークがメインだから、学校で美味しい食事を食べれるのを期待していたのかも」って嫌の理由を深堀りして、本質も見抜く体験をしてもらう。僕は僕で、今の学生がどういう事考えているのかを知ることができる。1年間に50人の学生にインタビューしていると考えると14年で700人の考え方を聞けて、だいぶ仕事に生きていると思いますね。


 ーー太田先生の授業で学生が学ぶ事は?

今って大学の先生も就職課の人も、学生にこうしろって教えることが難しいんですよ。昔とちがって、色々な選択肢があって。自由にやったら良いんだよって時代だと思うんですけど、学生って自由が怖い。失敗しない方法が何なのかすごく気にしてる気がしますね。
でも、失敗したとしても失敗って思って欲しくないから、こう考えればプラスになるよ、みたいな考え方で、だから失敗しても生きていけるよっていうのを教えている。死ななきゃ大体プラスになるんじゃないですかね。


 ーー太田さんの失敗は?

 たくさんありますよ。酔いつぶれてバック盗まれたこともあるし。いろんなことあるけど、まぁでも勉強になって気をつけようって思うし、怪我したら怪我しないようにしようと思うし。仕事もそうですね。失敗させていただいてるって言っちゃあれだけど。もちろん、一生懸命やりますけど。でも、今こそ失敗の経験が生きる時代じゃないですか。
どんな会社も、やったことないことをやろうとしてるじゃないですか。だから、やったことない事をやろうとしてるから、やった事のない事をいっぱいやって、こうやった時にこんなことが起きてしまった、という事をいっぱい知ってたほうが成功確率が分かる気がするので。今の時代だから、失敗経験がより役立っていると思います。

(高校の時に)文系か理系か選ぶ時の事を考えると、数学とか物理が好きだったから理系でもっと深めればよかったかもなぁと思ったり、食べてくなんて難しいからって思わず美大に入ってればよかったかなとか思ったり、就職する時も最初からデザインやってた方が良かったかなって思う時もあって、瞬間瞬間で言えば失敗の選択の連続だったと思うんですけど。でも、高校で文系を選んで、大学で経済学部を出て、システムエンジニアになったから、今の仕事やってるのかなって思うと、失敗かどうかわかんないですよね。

 ーー僕は全く逆で、文系を選んで、美術系の大学いって、デザイン会社はいって。太田さんの全く逆の選択で。結果、反対の選択をした太田さんがクリエイティブディレクターをやってて、僕はむしろ分析とか理系方向の興味の方が最近はあって。

 なるほどね。デザインをいまだに純粋に好きでいられるのは、やってなかったからとも言えるかも。大学の課題として絵を描いたり、デザインをしてたら嫌になっちゃったかもしれない。
「失敗」ってポジティブな言葉ではないけど、わかんなくなってきますね。成功した数とか失敗の確率とかじゃなくて、最初に出来るだけ多くの事をやってる方が、時代的にはフィットする気がします。失敗した経験や知識が求められてる。

日本酒とか建築とか、今やってる仕事と全然違うことのように見えるんですけど、バスケのピボットフットみたいな、片方全然違うことをやってても、変わらない軸足があって。違う分野で色々やってみると、自分の中の変わらない軸足が分かってくるじゃないかな。結局ここは守るんだなぁとか。
僕、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に暮らしていたんですけど、おじいちゃんおばあちゃ
んネタでいつも泣いちゃうなぁと。広告の仕事やっても、おばあちゃんおじいちゃんが見たらきっと嬉しいと思うんですよね、みたいな案入れちゃったり。僕はそういうのが大事に思ってるんだなーって。色々やることによって、自分の事がだんだんわかってくるとも言えます。
だから、いろんなことを知ってるって言うこともメリットだと思うんですけど、自分が大事に思っている事がよりはっきり分かってくるので、自分が大事に思うことをどんな仕事でも伝えるようにしていくと、どんな仕事でもやりがいが持てると言うか、楽しめると言うか。

 ーーなるほど。この後、「クリエイターとしての強みは?」って伺おうと思ったんですが、クライアント向けのセールスポイントを作り上げる事ではなく、色々やることによって、自分の中の興味ポイント、自分が何を大事にしているのかを見つけ、それが自分のやりがい・モチベーションに繋がってる。

 そう、そうだと思います。それが結果的にクライアントさん側から見ると、やりがいを持って取り組んでくれる人って嬉しいと思うんですよ。企画を考えるのが楽しくて、クライアントさんの期待している以上の提案をすると、喜んでくださったり、そこまで考えてくれるんですね、って驚かれたりします。やっぱり、やりがいを感じながらやると、自然に追求したくなって、そういうポジティブな循環が生まれている気はしています。

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美味しいビールが好き。20代から白髪です。


職種切りを越えられたら、次はカルチャー切り


 ーークライアントサイド的に考えると、今回の案件はちょっと面白いことやりたいから、面白い事を考える太田さんに依頼しようって事だと思うんですけど、太田さん的には、クライアントの中に太田さんの興味が一致するかどうかが大事?それで仕事を選ぶって感じですか?

 見つけようと思っちゃいますね。どんな仕事、どんなジャンルの仕事でも、「こういう事なのかな?」って発見は絶対ありますし、それを調べていくと、興味あるとこに絶対たどり着くんで。興味ないことって世の中なくないですか?何を見ても興味がわきます。何でこの照明使ってんだろうとか、何でこの木を植えてんだろうとか。なんでこの作りなんだろう、なんでこの動線なんだろうとか、それぞれ理由があるし。そこから、子供達も走れるようにしたらいいんじゃないかとか、じゃあ夜中でも本が読めるような照明のスポットを当てた方がいいんじゃないかとか、もっとこうすると、もっとこうなるなって。楽しいですねどんなことも。


 ーー何にでも興味を持つことが出来るっていうのは、太田さんの能力だと思います。

それはあるかも。ずっと気になりますね。なんでこうなってんだろうみたいな。そのしつこさを面倒くさがられたりもしましたね。もう全部やりたいし、全部考えて、どんな相談でも何か答えを見つけられる気がしちゃう。色々勉強しながらですけど。あとは、スケジュールの問題とかリソースとか、そういうのは優秀なプロデューサーにお願いしつつ。やりたいことをやりたい。何でも覚えたいですね。


 ーーそういう体制作りというか、会社の計画ってあるんですか?

 おかげさまで、4月5月で5人増えまして。顧問を入れると今23名。これまでは、オフィスの広さで何人ぐらい入るからって物理的に人数考えてたんですけど、コロナでテレワークが進んで、空間を意識せずに、社員を増やすことができるようになった。空間から解放された感じがあるので、優秀な社員がいて一緒にやりたいって思ってもらえたら、100人200人とどんどん増やしていきたいですね。その時にやってる仕事はいろいろな事をやってると思いますけど、モノづくりをしてる人がいたり、地方で活動していたり、環境問題考えている人もいたり、海外とかもありだと思います。海外は特に興味あります。


 ーー具体的にどこの国で、どういう事やりたいとか。

 いろんな業種の文化を学びたいっていう話から繋がるんですけど、東京らしさとか仙台らしさも知りたいし、日本らしさを知ってくると、アメリカらしさなのかイギリスらしさのかフランスらしさとか。あの先進国と呼ばれる国でも同じような概念を持ってるはずなのに、なんであの国の方針と違うんだろうっていうのも、それぞれのカルチャーを勉強しながらいろんなもの作り、 Web とか CM 映像とかイベントとかの業種切り、職種切りの壁を越えられたら、今度はカルチャー切りだと思ってて。同じものを東京で作るのと仙台で作るのは多分違うし、同じようなイベントを作るにしても、イギリスでやるイベントと東京でやるイベントとドイツでやるイベントは違うだろうし。みたいな、とにかく知りたい。どこまで行けるかなっていう、あとは時間的な制限ですかね。


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やっぱり故郷、東北が落ち着きます。


食べたこともない食べ物のウェブサイト作ってていいのか


 ーーコロナで変わった事という質問に書いていただいた「普遍性の大切さ」とは?

 左右されたくないなーっていうのがあって。「今の時代はインスタだよ」、「今の時代はもう tiktok だよ」って言ってたとしても、1年後「まだインスタやってんすか」みたいな話になるとしたら、最先端のテクノロジーを使うことが仕事の勝ちみたいな所にしてしまうとなんか切ないなーと思っていて。ちょっと前までは、仙台の仕事をしていると、「これからは東京の時代じゃない、地方の時代だ」ってみんな言ってくれるんですけど。でもその前は、「これからはグローバルの時代だ」「世界標準の事をやっていかなきゃいけないんだ」って。時代ってそんな簡単に変わっていいのって疑問に思うけど、一方でそういう方向に持っていきたいって世の流れがありますよね。
コロナ前は、「人と会うのが大事だよね」って言ってた人が、コロナになって「リモートで出来る事はリモートでやろう。なんで会う必要があるんですか」って言ってるのが、流行りを追いかける感じに見えて。そういう知識や、世の中そうなんだろうって思う事自体は大事だと思うんですけど、僕はそういう最先端の常識みたいな所よりは、さっきのおじいちゃんおばあちゃんの話ではないですけど、50年前もおじいちゃんを大好きな孫がいて、今もうちの子供がおじいちゃんおばあちゃんのこと好きって言ってるのを見ると、この変わらない普遍的な感じがすげーって思う。今も江戸時代も食べられてる蕎麦ってすげーって。そういう普遍的なモノの上に、時代ごとにプラスされるトレンドのものがあって。今だとスマホだとか。
流行の下に隠れている変わらない普遍的なものを無視してしまうと、すぐ流れてしまう、変わっていってしまう。コロナ禍になっても、結局お腹減るなとか(笑)。そういう変わらない事に気づけたって意味では、ありがたいなって。


 ーー仕事の転機としては「東日本大震災」とお答えいただいています。

 10年前の震災の時は僕も若かったんで、田舎じゃできない仕事を東京でやるんだって、違う人生みたいなもの求めてたような感じ。それが、震災で二日間実家と連絡取れなかったんですよ。
その時すごく怖くて。テレビ見てたら怖い映像がどんどん流れてるし。もう何時間単位で何百人って死傷者の数が変わってたりするのを見ながら、昔遊んでいたような場所だったり、空港だったりがテレビに映って。その時に、こんなに実家の事とか、地元の事とか、もうなんか学生時代に過ごした場所っていう思い出になってるだけの場所なのに、なくなるって事は恐ろしいんだなーっていう感じとかに気づいたりして。
その時に、「何の仕事してるんだろう自分は」と思って。「食べたこともない食べ物のウェブサイト作ってていいのかな」とか、「自分では買わない服のブランドおしゃれに見せていいのかな」とか思ったりしてると、それ以来、仕事をするブランドさんの服を買ったり見に行ったり店員さんと話ししたり。そうすると、やっぱり愛着も湧くし、すべき事なんじゃないって本当に思うし、それがさっきの「やりがい」にも繋がったりっていうのが、どんどん生まれてくるんで。
震災だったりコロナだったりとか色々ありますけど、大事なとこって意外と変わらないし、変わらないのであれば、今後もそこは大事にしていきたいなっていう軸になって全ていきてますね。


▼インタビュー後記:インタビュアーイシダまとめ

コロナでテレワーク中心となり、通勤時間分時間ができました。時間があれば、それだけ走りに行っていたのですが、目標としていたトレイルランニングの大会も次々と中止となり、走るモチベーションもちょっと下がっていた時に、この時間をもっと何かに使えないか、みんな何してるんだろう、面白い事をやってる人に話を聞いてみようと思い立って、最初に頭に浮かんだのが、仕事でお世話になった事もあった太田さんでした。インタビューの中で答えていただいているように、何でも面白がってくれる太田さんの事だから、なんとか時間作ってくれるのでは、と期待しながらも、忙しいはずなので、連絡とれるかなって若干不安を感じながらも、即答OKいただきました。
これまで何でもお話していましたが、考えてみたらマンツーでがっつり1時間お話したのは初めてでしたが、期待している遥か上のお話を聞くことができました。何であんなに面白いアイディアが出るんだろう、そういう人は、そういう頭の作りをしてるのか、なんて思ってましたが、面白アイディアが出る頭ではなく、どんな事でも面白がる事ができる性格だったり、だから何でも(時間がある限り)受けることができる、って所にあるんだなと。
得る事の多いインタビューでした。このインタビュー企画、続けてみようかと思います。



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