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新しい家と暮らしと家族

引っ越しから2ヶ月が過ぎた。
新しい暮らしにも随分慣れて来て、買い出しのタイミングと必要なストックの量も分かって来たし、暖炉で火を起こしたり、灰の掃除や薪の補充など一連の作業も、割と楽しんで出来ている。ちなみにうちの暖炉は扉が閉められるタイプなので、薪ストーブに近いかもしれない。これ一つで、2階まで家を丸ごと暖めてくれる。蝋燭の炎などもそうだけれど、昔から炎を眺めるのが好きだった。ゆらゆらと揺らめくその動きをただじっと見つめていると、心の奥深くが静かに満たされるような気がする。

4年間手入れされていなかった庭の草は伸び放題。まずは枯れ草と枯れ枝の整理から始めた庭仕事も、シクラメンやバラが生えているのを所々で発掘したり、木のように生い茂るセージを剪定して飲んでみたり(風邪の予防に良いらしい。レモンジャムと合わせたら美味しかった)、毎日何かしら発見があって飽きが来ない。

ただ最初の2-3週間は、前のアパートの引き渡しに伴う大掃除とパリへの往復、引っ越し業者との予期せぬトラブル(当日来たトラックが見積もりより小さかった)、新しい家の湿気と寒さ問題など(暖炉を使い出してから大幅に改善した)、例年になく多い雨模様の天気も相まって、気持ちが塞ぎそうになることもあった。

私も夫も田舎暮らし初心者なので、全てが手探りなのだけれど、まあ色々と工夫したり、それなりに失敗もしつつ学びつつ、中々良くやっているよな、と、自然と労う気持ちが湧いて来た今日この頃。実は以前こちらに書いた、私達の理想の暮らしの必須要素である「猫」との出会いを果たし、ここ2週間程は、生活リズムが更に一新したのだった。

思えば夫との出会いも突然かつ偶然だったが、猫もまた然り。夫が郵便物を出す必要があると言うので、二人で散歩がてら外出した時のこと。帰り道、とある家の敷地から猫が飛び出して来た。茶トラの毛長猫で、尻尾が太いせいか一見キツネのように見える。小振りで、まだ大人ではなさそうだ。三匹の大きな犬に門の向こうから吠え立てられ、道の反対側で怯えていたので、夫と二人で近寄り宥めてみると、初対面にも関わらず撫でさせてくれる。これはどこかの飼い猫だろう。

しばらく様子を見ていると、特に何処かに帰ろうとするでもなく、一つ一つの家の門の辺りをうろついては移動する。迷子だろうか。辺りは既に暗く寒いので放っておけず、しかも呼ぶと付いて来るので、結局家まで一緒に帰った。翌日、まずは飼い主を探そうと、保護した場所近くの家を訪ねてみると、一軒目で当たり。聞けば、小さい頃に捨てられていたのを拾って面倒を見ていたけれど、家には既に犬が2匹と猫が2匹。誰か引き取り手がいれば譲りたいと思っていたという。それはこちらも願ってもないということで、正式にうちの子として引き取ることになった。

こうして、思いがけず理想の暮らしが実現したと言える訳だが、家の中も外も、まだまだ改良が必要な部分が山のようにある。断熱工事の必要があるし、内装も手を加えたい場所ばかり。予算と相談しながら、一つ一つゆっくり実現させて行きたい。引っ越してから出会う人出会う人、皆、口を揃えて言うのが「家(の工事)は終わりがない」ということ。満更でもないように見えるのは、自分の家に、自分で手を入れ少しずつ変えて行く過程そのものが、喜びであり、掛け替えのない時間と思い出を残してくれるからなんだろう。




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猫のいるしあわせ

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