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逗子・葉山に憧れる横須賀に足りないものは自己肯定感なのかもしれない。 /ヨソモノ、ヨコスカ。#05

横須賀西エリアがなぜか「南葉山」と呼ばれてる、という前回の話題
「葉山町のいいイメージにあやかっちゃえ!」という(主に不動産界わいの)、ある種のコバンザメ戦法について綴ったのですが。

横須賀歴3年めのヨソモノである私は、ちょっとモヤりました。
本来は西横須賀エリアなのに、「南葉山」に言い換えたほうが価値が高まると判断されるなんて悲しくない?と。
でも、地元の人のなかには「印象が良くなるいいネーミング!」という肯定的な意見(Twitterで見たレベル)も発見。あらま!

①プラス要素を受け入れる素直さを美徳とすべきか。
②モヤる私がひねくれすぎか。
はたまた、
③葉山パワーすごいからやむなし、という着地か。

うーん、③ですかね(平和的解決)。
だって葉山町のウェブサイトにある町の説明がこちらです。

葉山の発祥は1,000年近く遡ると言えるでしょう。平安時代の末期に三浦氏の一族が、三浦半島を基盤としてその勢力を誇り、源頼朝が鎌倉に幕府を創設すると、いち早く葉山は将軍をはじめ府内要人の行楽の地となり保養地ともなって幾度となく鎌倉からこの地を訪れたことは古文献にも明らかにされています。(中略)明治22年6月には横須賀線が開通したことから、名士の別荘が続々と建てられ、さらに明治27年には葉山御用邸が竣工し名実ともに別荘地葉山となりました。

※引用元:葉山町ウェブサイト 

「名実ともに別荘地」って、「名声」と「実力」というパワーワードを公が言い切るこの迷い無さ。まぶしすぎます。

この町職員募集のビジュアルも、見てやってくださいよ。

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※引用元:葉山町職員採用案内2020

「鉄道駅がない」というアクセスの悪さすら「電車なんてなくても困りませんのでねえ、葉山は」という意思表示に見えてくる始末。

しかし、見れば見るほどじわります。
「あたかも」から始まる導入による知性の匂い。続き「あたかも都心」は何を指すのでしょう。(無電車&バス=間違いなく「便利さ」ではないわけだから)センスのこと?もしや民度的な?
そこに重ねて「あなたも選ぶ」と断言してくる自己肯定感

にも関わらず。
ビジュアルはひなびたバス停と素朴すぎるママチャリ。
ここですよ。ロードバイクとか置かない余裕。

町がやってるインスタグラムもセンスいいし、自分たちの強みをよく分かってるなあ、と感服します。

ちょっとツボだったので「職員募集」つながり。横須賀市(2020)は意外なほどの爽やか路線で攻めてました!

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※引用元:横須賀市ウェブサイト

全般キレイにまとまっているものの、無難なキャッチコピーからは横須賀のウリってなんだろう……と迷う心も感じさせる。迷っててもさあ、軍艦、カレー、その先へ。くらい書いちゃおうよ!

そして問題作きました! 逗子市(2020)。

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※引用元:逗子市ウェブサイト

キャッチコピーというより、もはや催眠・暗示の域です。ビジュアル面では横須賀のほうがシュッとしてますが、「きっと×2」→「そう」の使い方とか、地元に対する迷いなき確信がにじみ出てる。葉山に負けない自己肯定感をにじませる逗子、すごい。

ちなみに興味本位でお財布事情なんかも見てみました。

年収ガイドというストレートな名前のサイトで神奈川県の平均世帯所得(年収)ランキング(2019)を見てみると。 1位は鎌倉市、2位が葉山町、そしてなんと3位:逗子市! 我らが横須賀市は……(小声)19位。

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※引用元:「年収ガイド」神奈川県 所得(年収)ランキング

憧れるほうが自然なんだな。
隣接地域がトップ3なんだもの。

私の心に住むみつをが、いま横須賀にそっと寄り添っています……。

好奇心の赴くまま、所得(年収)別の世帯割合も見てしまいました。

◆人口における「年収500万以下世帯」割合
鎌倉市49%、葉山町48%、逗子市55%、横須賀54%。
◆同「年収500万以上~1000万以下世帯」割合
鎌倉市30%、葉山町30%、逗子市26%、横須賀26%。

ここまでは鎌倉=葉山、逗子=横須賀という感じですが、差がついたのは一般に「高所得者ゾーン」と言われる世帯。

「年収1000万以上世帯」
鎌倉市14%、葉山町12%、逗子市14%、横須賀6%
横須賀は他市町の半分~半分以下なのね。

※2021/3/18補足:横須賀市は「不明」が最も多く15%もいます。(不明割合:鎌倉6%、葉山町10%、逗子市5%)

古都・鎌倉はさておき、高級別荘地としての逗子・葉山ブランドがある=ゆとりのある人が集まる「場」を持っているというのも要因なんでしょうかね。

高齢者比率や、昼間と夜間の人口変化とか、もっと細かい調べどころはありますが、いったん「所得(年収)」というシンプルな数値データだけで言うと、逗子・葉山エリアは生活に余裕のある人たちを対象にしたサービス業が一定程度は成り立つだろうけれど、横須賀だとちょっと難しいかもしれない。

この「生活に余裕のある人たちを対象にしたサービス業」が、街の雰囲気に寄与するんですよね。毎日は行かないにしても、憧れる「レストラン」がある。ステキな「セレクトショップ」や「雑貨店」がある。センスのいいアレンジをしてくれる「花屋」がある。どこもちょっと高いんだけど、おしゃれをして行きたい、と思える場であったり、贈り物として差し上げたい、と思う物であったり。

海沿いにある街は数あれど「ゆとり・高級感」と「海のある気持ちよさ」がセットになっている街って、実はそんなに多くない。横浜の高級住宅地・山手町あたりだと、ガヤガヤしたエリアも近いですし。逗子・葉山のイメージが良いのはそういうところである気がする。

ただ、声を大にしていいたいのは、これは決して「鎌倉・葉山・逗子が上で、横須賀が下」という話ではないよ、ということ。

葉山にいくら近かろうとも、そもそも「街の持ち味」がまったく違うんじゃないかな、というのがヨソモノの率直な感想です。

横須賀が憧れてる(ように見える)逗子・葉山の醸し出す「ゆとり・高級感」と、横須賀が避けて通れないポイント「ミリタリー」。アイス×餅の意外なハーモニー=雪見だいふく的にまとまればよいですが、「高級感×ミリタリー」とか「別荘地×ミリタリー」とか、いかんせんどう組み合わせてもミリタリーがパワーワードすぎる。

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この前、汐入のショッピングモール『Coaska Bayside Stores』に行ったら、大きな窓から美しい夕焼けと一緒に、米軍基地と海上自衛隊が見えました。すぐ横では家族連れや中高生が楽しそうに集ってる。
これが横須賀という街のリアルだし、同時に日本のリアルでもある。

軍港の歴史は変えられないし、米軍も自衛隊も動かせるわけじゃない。戦艦三笠と海軍カレーをアピールしながら、都会人に「葉山みたいに暮らせるんですよ」と言っても、やっぱりイメージはチグハグに映る。でも、酒場カルチャーが発展してたり、外国人と高齢者がローカルとして共存してたり、横須賀にしかないお土地柄の魅力はちゃんとある。

青山に住みたい人もいれば、高円寺や中野に住みたい人もいるんです。横須賀はどちらかと言えば後者系なんだから、庶民的な親しみやすさをベースに勝負するほうが向いているような気がするんだけど。

横須賀が、逗子・葉山に憧れるべきポイントは高級感じゃなく、我が街が好きだ!我が街に住みなよ!と胸を張れる健やかな自己肯定感を持ってるところなのかもしれない。

またもや、長くなったのでいったん終わります。
次回は、今回書けなかった湘南カーストと横須賀の強み的なことを勝手に掘り下げていこうかな、と考えております。

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