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宮沢賢治詩集

わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)

春と修羅 序

無人島に持っていく詩、『春と修羅 序』。

暗唱すると息巻いていたが、たまらなく愛おしいからこれもリュックに入れていく。

でポイント。

漢字とひらがなのバランス最高。
一文字一文字ぞくぞくする。
有機交流電燈と因果交流電燈の青い照明。
字面じづらが良すぎる。
( )内がささやき声になるのは私だけ?
ですます調がかわいい。
いやいや、ひらがなが全部かわいすぎる。

こんなの目で堪能しないなんてもったいない。

悲しいことに意味はいまいちわからず。
詩を理解したいと、解釈をいろいろ調べてみたけれど、いつも途中で放りだしてしまう。
そんなことはあとまわしだ。
ながめていたい。
つぶやいていたい。
味わいたい。
浸っていたい。
愛でたい。
ああ、日本語って、素敵だ。

意味が理解できることは詩のゴールなのか?

詩を読むことを苦手にしている多くの人が、詩を読めたかどうかの基準を、「意味を理解できたか否か」に置いている。
(略)
だが、詩(芸術)を味わうとは、A『描かれる対象(意味、物、景色など)』を味わうと同時に、B『作者の技術・物の見方など(言葉遣い、タッチなど)』も味わうことなのだ。なぜこの詩人は、こんな単語を使っているのか、こんなリズムにしているのか、こんな構文にしているのかなど。したがって、言葉が持つ様々な要素の中から、まずは意味について考えることをグッと我慢してみよう。

スピン6
詩歌の楽園 地獄の詩歌
第六回 意味を抑えて、音を楽しめ
渡辺祐真

意味がわからなくてもいいのだ。

同じように、清少納言の『枕草子』も『春は曙』からはじまる冒頭部分をこよなく愛している。
春夏秋冬、好きなところを「これいいよねー」と並べていくところがポップでかわいらしい。

春は、 曙。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこし明りて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。 

枕草子

紫だちたる雲のほそくたなびきたる、が記憶の中でいつかの光景と重なる。
あれいいよねー。


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