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ロックンロールは死んだ、でもロックンロールは永遠なる存在だ

1979年、かのニール・ヤングはクレイジー・ホースを率いてある曲をリリースした。

"Hey Hey, My My (Into the Black)"

"Rock and roll can never die"という一節が有名なロック讃歌だ。

70年代はサイケデリックな60年代の残響を引き継いだプログレッシブ・ロック、ハード・ロック、グラム・ロックの台頭により幕を開けた。

プログレシッブ・ロックはサイケの難解さを受け継ぎ、ハード・ロックはアシッド・ロックの轟音を引き継ぎ、グラム・ロックは宇宙への憧れを含むあらゆるナンセンスな愛と平和的なフィクションを受け継いだ。

これらの音楽は出始めこそクラシック・ロックを形作る重要な要素であったが、徐々に演奏テクニックや、高価な楽器、ブランド物の服、演劇性などを求められて普通の若者には手が届かない、もしくは一握りの天才のみに参加する事が許される崇高な遊びに成り果てていた。

AORやアリーナ・ロック、一部で呼称されるアメリカン・プログレ・ハードはクラシックロックが行き過ぎた商業主義のロックバンドに付与される蔑称のような物で70年代中盤以降にメインストリームにいたアメリカのバンドを指すのに好都合な言葉だった。

カンサス、ボストン、スティクス、イーグルス、スーパートランプなどが代表的なバンドで、良く槍玉に挙げられたものだ。

彼らがビルボードチャートを賑わせていた頃、イギリスではあるバンドがUKチャートを脅かしていた。それは社会現象となり英国紳士足り得ない普通の若者のコミュニティに大きな渦を巻き起こし、彼らに共感し新たなバンドが次々と現れた。それはロックンロールの初期衝動に似ていた。

"God Save the Queen"

Sex Pistolsによる英国讃歌だ。ジョニー・ロットンの人を喰った歌い方が痛快で皮肉たっぷりなこの曲は皆の予想通り放送禁止となったが後の祭り。イギリスの若者を奮い立たせた。

ニール・ヤングは古い世代のロックンローラーと馬鹿にされながらも彼らに共感して"Hey Hey, My My (Into the Black)"を書いたのだろう。

確かにアメリカではロックンロールは死んでいた。だがイギリスでは息を吹き返していた・・・この表現は少々大袈裟かもしれない。何故ならイギリスではブラック・サバスやUFOなどの名前がUKチャートで見られるほどロックンロールに飢えていなかった。

そもそもイギリスではロックンロールは死んでいなかったのだ。アメリカの70年代中盤はAORとディスコが全盛を迎えており、ビルボードチャートを世界の音楽の動向を示す指標として提示するのはありきたりな事であった。

ニューヨークのアンダーグラウンドシーンの発信地CBGB

しかし、メインストリームが存在すると言う事はアンダーグラウンドも存在する。アメリカではラモーンズ、デレヴィジョン、パティ・スミス、トーキング・ヘッズなどが活動しており、イギリスの"あるバンド"セックス・ピストルズに影響を与えたリチャード・ヘルもそこにいた。

先述の通りイギリスのメインストリームはアメリカのそれとは違いディスコ一色では無く新興勢力のメタルやニューウェーブもチャートに登場しており、アメリカのアンダーグラウンドシーンを受け入れる土壌が存在していた。

ラモーンズを例にとるとビルボード上でのヒットはUKチャート上に比べると数少ない。というか、最高位が"Rockaway Beach"の66位と言う有様だ。イギリスでは"Babv, I Love You"の8位だった。

結論"ロックンロールは死んだ"というのは妄言だ。現代まで"ロックンロールは生きている"

先日ローリング・ストーンズが最新アルバム"Hackney Diamonds"をリリースした。ロックが死んだと言われ始めて約50年後の2023年の事である。

ロックンロールが死んだと言われていた70年代後半の楽曲をピックアップしたコンピレーションアルバムをApple Musicのプレイリスト機能で作りました。

メインストリームもアンダーグラウンドもジャンルもごった煮ですが、通しで聴けばセックス・ピストルズから始まり、ニール・ヤングで終わる構成にしています。あなたはこんな事を思う事でしょう。

"ロックンロールが死んだ?そんな馬鹿な。ロックンロールは永遠に不滅だ"と。

Dlsc1
1 Bodies - Sex Pistols
2 Born to Kill - The Damned
3 C.I.D. - U.K. Subs
4 Borstal Breakout - Sham 69
5 Aloha Steve & Denno - Radio Birdman
6 This Perfect Day - The Saints
7 Nice Boys - Rose Tattoo
8 Whole Lotta Rosie - AC/DC
9 Dust My Broom - ZZ Top
10 Madison' Blues - George Thorogood & the Destroyers
11 Train, Train - Blackfoot
12 Falling Star - Robin Trower
13 Jet Airliner - Steve Miller Band
14 High Roller - Cheap Trick
15 Got to Get Out - Nick Gilder
16 I Stole Your Love - Kiss
17 52 Girls - The B-52's
18 This Is Pop? - XTC
19 Metal Postcard (Mittageissen) - Siouxsie & the Banshees
20 Bela Lugosi's Dead - Bauhaus
21 Shadowplay - Joy Division

Disc2
1 The Sails of Charon - Scopions
2 Hell Bent for Leather - Judas Priest
3 Mainline Riders - Quartz
4 Overkill - Motörhead
5 Chinese Rock - Johnny Thunders & the Heartbreakers
6 Pinhead - Ramones
7 Venus - Television
8 Oliver's Army - Elvis Costello & the Attractions
9 Tommy Gun - The Clash
10 The Eton Rifles - The Jam
11 Ever Fallen in Love (With Someone You Shouldn't've?) - Buzzcocks
12 Another Girl, Another Planet - The Only Ones
13 Telephone Girl - Eddie & the Hot Rods
14 Milk & Alcohol - Dr. Feelgood
15 Silver Bullet - Chris Spedding
16 Cruel to Be Kind - Nick Lowe
17 I Need to Know - Tom Petty & the Heartbreakers
18 Feel Like a Number - Bob Seger & the Silver Bullet Band
19 The Promised Land - Bruce Springsteen
20 Because the Night - Patti Smith Group
21 2-4-6-8 Motorway - Tom Robinson Band

Disc3
1 Spread Your Wings - Queen
2 Hot Blooded - Foreigner
3 Ain't Talkin' Bout Love - Van Halen
4 Electric Guitar - Talking Heads
5 Blockhead - Devo
6 Ghost Rider - Suicide
7 California Über Alles - Dead Kennedys
8 Nervous Breakdown - Black Flag
9 Human Fly - The Cramps
10 The Way I Walk - Robert Gordon & Link Wray
11 Rockabilly Rebel - Matchbox
12 One More Time - Joe Jackson
13 Sex & Drugs & Rock & Roll - Ian Dury
14 Beauty & Beast - David Bowie
15 Death Disco (Swan Lake) - Public Image Ltd
16 Another Brick in the Wall Pt.2 - Pink Floyd
17 Wuthering Heights - Kate Bush
18 The Logical Song - Supertramp
19 Message In A Bottle - The Police 20 My Way - Sid Vicious
21 Hey Hey, My My (Into the Black) -
Neil Young & Crazy Horse

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