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旅をしながら、自分らしく

僕は、オーストラリアの自宅からフルリモートで働くフリーランスエンジニア。どこに出勤することもなく、自宅から黙々と仕事をしている。
一度も就職したことはなく、30歳から未経験でBubbleエンジニアになって3年目、間もなく個人事業を法人化させる。

その中で様々な人と仕事をし、たくさんの素敵な方たちと出会うと共に、「これは害悪だ」と思える人たちにも出会ってしまったことがある。

それは、「旅する○○」、「自分らしく働く○○」という肩書を持つ人たちだ。

自分らしくなるために。旅するデザイナー。好きな時間に仕事をするフリーランス。

そんな肩書を掲げる人たちと仕事をして、うまく行った試しがない。

とあるプロジェクトにエンジニアとして参画したとき、デザイナーとの意思疎通がかなり取りづらく、期日を設定したものに関しても、それが守られないということが何度もあった。

月曜日提出予定の物を、水曜日に「あれってどうなってますか?」とリマインドすると、「遅くなってすみません!週末に対応します🙇‍♀️」ときた。
リマインドの時点で限りなく赤に近い黄色信号なのに、既に遅れているものの対応がどうして週末になるのか?

ふと、彼女のSNSを発見した。そこには「旅するデザイナー」と書かれており、たくさんのフォロワーがいた。

納期に遅れている時期は彼女の旅真っ最中で、「好きなところで仕事をできるのがフリーランスの強み」といった発信がされていた。

いやいや。旅する前に仕事せぇよ。

先日、別件でこんなことがあった。とあるウェブサイトのデザイン制作を依頼していたのだが、最初に言っていた納期がなかなか守られない。

特に実装を急いでいるものではなかったため、「時間よりも質を優先して作っていこうね」と伝えてはいたものの、それを150%鵜呑みにされて、作業がズルズル止まっていたようだった。

最初に伝えていた納期から2ヵ月以上経っても完成せず、進捗報告も適切ではなかったため、「あとは僕が巻き取るからここで切り上げてください」と伝えて、それまで分の稼動料を支払って終わってもらった。

しかし、後ほどSNSを見ると、「好きな時間に好きな人と働ける。フリーランスになってよかった」といった発信がされていた。
こういった働き方が、自分らしいと。

いやいや。好きな時間に自分らしく働いた結果、納期間に合ってないやん。
取引先に迷惑かけてるやん。。

フリーランスとはいえ、取引先があり、金銭が発生しているということは、それは歴とした仕事であり、社会活動だ。
最低限の納期や、遅延するなら遅延する旨の適切な報告、相談など、フリーランスだとて蔑ろにしていい訳がない。

当然、この人たちには今後、仕事を依頼することはなくなる。

それでも、こういった人たちは「好きな時間に好きな場所で働くことが自分らしい」として、それを肯定している。

最低限の社会的なマナーも守れないような自分らしさなら、捨ててしまえ、とさえ思う。

僕たちは、自分ひとりで生きている訳ではない。
いろいろな人の協力があって、そこに価値を生み出すことによって、生活できる金銭が発生する。

相手に提供できるものがなければ、ステークホルダーと協力し合うことができなければ、社会的には何の価値もない。

だからまず、人のためになれる程の実力を、スキルを身に着けるべきなのであって、最初から「自分らしくなりたいからフリーランスになる」というのは本末転倒であり、全くもって理にかなっていない。

しかしそういった発信をするインフルエンサーは多い。なぜなら、キラキラした発信や人を応援する言葉は、それだけで人が集まるからだ。
その上で、スクールを運営したり情報商材を発売すれば、収益は上がるだろう。

でもそれは、誰のため?
またそうやって、仮初めの自分らしい自分に憧れて、自分が何者かも分かっていない人が、被害者が増えていく。

「あなたにもできるよ」と、皆が皆を承認し合い、肯定する流れが、厳しさから逃げる人たちを生む。
「自分らしくある」ということは、何ら免罪符にはならない。
「好きな時間に働く」ということは、ただ始業と終業の時間が決まっていないだけで、納期を無視してOKという訳ではない。

そもそも自分らしさなんて、自分自身でも分からないことの方が多い。
僕の友人の方が、僕よりも、僕の性格やクセを分かっていることだって多々ある。

何が自分らしいか、どういう生き方をすれば幸せなのか、それを知るためには一生を賭けて、自分が決めた事を実行し続けるしかない。

自分の決断に素直に、覚悟を持って日々を過ごしていくしかない。

その上で、いずれ死ぬときに「幸せな人生だった」と思うことができれば、それが自分らしい人生だということなのではないだろうか。

自分らしい自分は、数ヵ月スクールに通って手に入るものではない。
好きな時間に仕事をするためには、まずその分野で圧倒的なスキルと結果を残し、突き抜けなければならない。

自分らしくあることに甘えてはいけない。

まずは目の前の日々を、素直に生きていきたい。

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