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農業体験で得られること。癒されるのにはワケがある。

畑や森の土に触れると、なぜだか癒されたような気持ちになったことはないだろうか?
恵那市に移住してから自宅の畑でたびたび農作業体験を開いている。
移住前の東京近郊の友人など身近な人たちが対象ではあるが、オレもせっかく移住したのだから、自然に触れられる場としてオープンな場にしていきたい、という思いがある。

オレはあまり気が付かないのだが、妻曰く作業してくれた人たちは来た時と帰る時とで、顔つきが変わってる、のだそうだ。

どこか張り詰めたような顔が、緩やかににこやかな表情になっているらしい。

よく土に触れると気持ちいい、とか癒されるとか言われるが、そうした効果のおかげだろうか。

何にせよこうした時間が来てくれた人の役に立っているなら何よりだ。(約2600字)

ジャガイモ植え付け体験

最近も友人とその仕事仲間たちの家族数組が、農業体験をしに来てくれた。

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今回は収穫までの期間が早いジャガイモの植え付け体験をしてもらった。
収穫だけの体験はよくあるが、せっかくなんで自分の植えたものを収穫する、という一連の経験から生まれる何かを感じてもらおうと、植え付けもやってもらった。

もちろん植えたら何もしないでも収穫できる、ってもんではなく、いろいろ手間はかかる。そのプロセスも大事ではあるが、まずは普段生活の周りにないであろう、土に触れる、という体感だけでも十分だ。

まだ保育園の子から中学生、親御さんまで、スコップと種芋両手に、サクサクと植えてもらった。

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(今回は自然農的に不耕起で植えてみようと実験してみている。ここの畑は2~3年ほど耕かさず伸びた草を細かく刈るだけの状態にしてある。さてどうなるか。)

事前に、土に触れる前と後で自分の中の変化に目を向けてもらえたらと思って、何を期待しているか、シートに書いてもらった。

それと、畑の中には何があるか、見つけたものを覚えて後で発表してもらうことを伝えておいた。

作業自体は12mぐらいの畝を2本植え付けるぐらいだったので、ほどよい時間で終了したが、その間子どもたちも集中している様子がわかった。

ミミズが出た、とか、モグラ穴を発見した、見たことない虫がいたとか普段の生活にはないものをたくさん見つけてくれたようだ。
食べられる野草を噛んでみたり、水路の水で濡れてみたり。
最終的に畑の周りを駆けずり回る子どもたち。楽しそうだ。

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一通り終わった後、一応農家らしく、ジャガイモがどうやって育つか、なぜ健康で美味しい野菜を食べることが必要なのか、土の中で何が起こって植物は育つのか、など簡単な説明をした。

キーワードは微生物

「土を触ると気持ちいい」は科学的

土の中には天文学的な数の微生物であふれている。その微生物たちの作用で植物は健康に育つことができる。微生物も植物からの分泌物でさらに活発になる。共生状態が土の中に存在している。微生物は有機物をエサにすることでしか増えない。

人間の腸内も同様。腸内の微生物が野菜の食物繊維をエサに活発に働き、免疫力を高める助けになっている。それだけでなく、微生物が食物繊維を食べているときに発する、神経伝達物質が人間の感情にも影響する。ここにも共生状態がある。

ここでは書き尽くせないが、土と腸内の裏返しのような関係は、「土と内臓」に詳しい。

人間自身の体内は微生物にとっての豊かな土壌である、ということを知ることで、身体や環境への見方を一変してくれる本だと思う。

さらに、最近の研究では、土中微生物の分泌する脂質が、人間の抗ストレス力に作用する、ということも明らかになってきている(セロトニンという話もある)。
つまり、土を触ると気持ちがいい、というのは何もスピリチュアルな話ではなくてミクロな世界で起きている科学的な作用である、ということだ。

二次情報ではあるが、参考までに。

さて、今回の参加者に土に触ってみた感想を聞いてみた。
「土が暖かった」「楽しかった」いろんな声を聞かせてもらったが、やっぱり顔がリラックスして見えたのが印象的だった。

こちらからしたら、本当にちょっとした作業ではあるのだが、こちらの予想以上のポジティブな反応をしてくれたのが嬉しかった。

農業体験のススメ

都会の中ではなかなか見つけにくくなった土のある場所。それも多様な生物が住んでいて、豊かな土壌なところを探すのは難しいかもしれない。

それでも年に数回でも土に触れてもらう機会を作ることは確実にリフレッシュになる。ちょっとした収穫体験などあればぜひ出かけてみてほしい。

その際は設備の整った観光農園でも良いが、有機農業や自然農でできるだけ素に近い環境で栽培している農家さんを選ばれたら、感受性のアンテナがビンビンと反応してくれるだろう。

少し慣れてくれば市民農園などもあったりして、自分で畑を借りることもできる。農園ごとにルールなどいろいろあると思うので、しっかり管理する気持ちが必要だが、野菜もそれに応えて育ってくれるはず。

自分で育てる、という意味ではプランターでもいいと思う。資材を適切に選べば十分に土と近づけるだろう。

こうした気軽に触れ合うことでなら時間や労力に負担のない範囲だから気持ち良いところで終われるが、がんばって稼業にしようと思うと、人によってはオレのように気持ち良いを凌駕する心身に深刻なダメージを負いかねない。

前にも書いたが、農業への想いが溢れてしまって就農こそが第2の人生、となる前に色々と自分と向き合うこともおススメする。

最後に、普段金融マンとして働いている、という参加者の方に感想を聞いたら、ポツリと「自分の仕事って何なんだろうなぁと思った」と言われていたのが印象的だった。
自然や食、水と言った根源的なものに囲まれている場では、たしかに実態のないものを扱う仕事というものを疑ってしまうことはあるかもしれない。

でもオレは基本的にはバランスの問題だと思うので、まずは自分の隣にはこんな世界がある、そしてそこはとても心地よい、ということを知っていることが大事だと思う。

その世界を知りながら、何をするか。どう自分の仕事、置かれた場所に反映させていくか。

全ての人が田舎暮らしや農業をやらなくとも、都会の人たちがヒトとしてのバランスを心身に育ててくれるなら、きっと良い社会は生まれるはずだ。

そのお手伝いになることがオレにできるならこの上なく嬉しい。

ジャガイモは無事収穫を迎えられるよう、見守っていく。
収穫できたときまた何を思ってもらえるか、楽しみだ。

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