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トーキョー▪プリズン

柳広司さんの作品です。第二次世界対戦直後の巣鴨プリズンでのお話です。

 主人公はニュージーランドから従兄弟を探しに日本へ。情報を得るためにスガモプリズンに来たのですが、交換条件としてスガモプリズン内の服毒事件の解明と囚人の貴島の記憶を取り戻すことを約束させられます。

 手に取ったときは戦争もののつもりでした。読み進めるにつれミステリーらしさが増していきます。

 最後まで読んだときに、もう一度、この本は戦争ものだったのだなと再確認しました。

 戦争は圧倒的な力で、個人としての感覚や良心を飲み込んでしまうようです。国家としての正義、秩序のための制裁、やらなければヤラレテイタンダ。

 私は戦争を肌では理解していません。ニュースで見る戦地は映画のようで、なにかを感じたり考えるより先に、思考が何故こんなことになっているのか?というところで固まってしまいます。

 対国家、対宗教、対人種。戦の規模を違えれば学校のクラス対一人、対ご近所さん。もっと言えば自分のなかの理想と現実。

違いは正しく認識すれば、互いに生かせるのに、もったいない。残るのは瓦礫と遺恨。

 この本のエピローグに、小さな希望が書かれています。でも戦争当事者にとっては希望ではなく生き残ったものの責任だと。

 ついた傷の血は止まっても跡は消えないのですね。

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