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NBAドラフトの生産性を測るEOP

私は、バスケットボールのアナリストを目指しています。アナリストの仕事は試合などから「収集」「分析」「伝達」することが仕事です。今回ピックアップするテーマは「分析」です。

題目にあるEOP(Efficient Offensive Production)とはStephen M.SheaとChristopher E. Bakerによって作成されたNBAドラフトの生産性を測る統計方法です。

1.EOPの計算の仕方

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※EOPは選手のOffensiveな生産性は見えますが、Diffensiveな部分は間接的にしか見えていません。そのため、チームにとって得点源になる選手をドラフトできているか測るものとして使っています。

【用語説明】
FGM:フィールドゴール成功数 (2PM+3PM)
FGA:フィールドゴール試投数  (2PA+3PA)
AST:アシスト数
ORB:オフェンスリバウンド数
TO:ターンオーバー数
PTS:総得点

2.EOP+/Gトップ20で気づく、3つのこと

 以下の表は、1977年〜2010年のドラフトでトップ60以内でドラフトされた選手のEOP+トップ20です。(P.118 Table11.1:CareerEOP+Leader)この表を見たとき分かることとして3つ挙げられます。

①EOP+が勝っていても、EOP+/G(1試合ごと)で見ると順位が変わってくる
②トップ1.2.4位はドラフトPick順は13番目と16番目の選手である
③トップ20に入るスーパープレイヤーはEOP+/Gは平均20.16もある

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①EOP+が勝っていても、EOP+/G(1試合ごと)で見ると順位が変わってくる
 これはEOPがプレー時間、キャリアが長い人に有利になってしまうことが原因です。そのためキャリアの浅い若い選手が不利益になってしまうので、EOP+/G(1試合あたり)またはEOP+/M(1分あたり)などのレート統計で比較することが好ましいとされています。

②トップ1.2.4位はドラフトPick順は13番目と16番目の選手である

1位 1985年に13位でドラフトされた Karl Malone
2位 1984年に16位でドラフトされた John Stockton
4位 1996年に13位でドラフトされた Kobe Bryant

 スーパースターになる選手をドラフトする可能性が高いのは1巡目(10位以内まで)ですが、時にドラフトミスで逃したスーパースターがいることが分かります。

③トップ20に入るスーパープレイヤーはEOP+/Gは平均20.16である
 この本では、スーパープレイヤーのEOP+/Gの基準は15、チームの4.5番目の戦力 or ロールプレイヤーのEOP+/Gの基準8.0としています。

3.時代の変化、上がるEOP+/G

 時代を重ねるにつれてEOP+/Gが15を超える選手は増えています。1980年代はドラフトされた中の約6%しかEOP+15以上になる選手はいなかったのに対し、2010年以降EOP+15を超える選手は3人以上いないと決勝にいけなくなっています。

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 シーズン終了後に、決勝に行ったチームのドラフトの生産性を見ることで、そのドラフトの価値が分かります。

4. 8と15のプレイヤーのドラフトピック数

【EOP+/G 15を持つプレイヤーをもたらしたドラフトピック数】
・ドラフトピックで1位の人は60%、2〜5位の人は24%〜38%でEOP+/G15を持つスーパープレイヤーになる
・11位以下がスーパープレイヤーになる可能性は低く、11位以下の選手でスーパープレイヤーを生み出した時ドラフトミスとなる

 ドラフトがミスか成功かを見るためには、ドラフトピック順位の平均EOP+/Gから実際の本人のEOP+/Gで見ることができます。

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【EOP+/G 8を持つプレイヤーをもたらしたドラフトピック数】
・ドラフトピックで10位以内の選手は7割以上がEOP+/G8を持つロールプレイヤーになる
・ドラフトピックで11位〜24位の選手は2割が EOP+/G8を持つロールプレイヤーになる

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以上の過去のドラフトピックの傾向から、そのチームが15番目にドラフトピックした選手がスーパープレイヤーになることを期待するか、ロールプレイヤーになることを期待するかを考えるための指標にすることができます。

5.まとめ

*EOP+/Gはチームにとって得点源になる選手をドラフトできているか測るものとして使える
*ドラフトの年によって攻撃の質を定量化することが可能である
*EOP+/Gの順位はドラフトピックでスーパープレイヤーやロールプレイヤーを獲得する可能性を理解する指標にし、ドラフト戦略を考える