フリージャーナリストの悲劇を繰り返さないために
フリージャーナリストの安田純平さんがシリアで拘束された動画が投稿された。
インターネット上で流れた動画では、家族への思いを語った後、日本政府を念頭に対応を求めるような発言を行った。
これに対して日本政府が行った行動は明らかにされてはいないが、対応が後手に回っていることは否定できない。
実は昨年の2015年12月、国際NGO「国境なき記者団」から安田さん国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」に拘束されたという情報は入っていた。
だが、その後、国際NGO「国境なき記者団」が「確認が不十分だった」としてこの声明を撤回。政府によってそれ以上の調査はされてこなかった。
もしもそのときに迅速に対応できていれば、3月に入って再び安田さんの動画が流されることはなかったのではないだろうか。
海外で拘束された場合、日本からは当然武力による介入で救出することはできなくなる。交渉といっても、相手はテロリストである以上、身代金を支払うような弱気な姿勢も見せられない。
その結果、拘束されたジャーナリストが命を落とすリスクは非常に高くなると言えるだろう。おそらく、そうしたことは政府も事前に認識していたに違いない。
現在、日本政府の方針ではシリアへ入国する者に対しては危険性があることを警告するだけに留めているが、死亡するリスクが極めて高い以上、生命を保護する名目で完全に渡航を禁じることもできたのではないだろうか。
また、海外で今回のように日本人が拘束された場合、身代金には応じないという政府の姿勢をあらかじめ海外メディアを通じて印象づけておくことも必要だった。今回のケースでは身代金目的で拘束したことも十分に考えられる。
吉田さんがシリアへ入国したのは、過激派組織「イスラム国(IS)」に殺害された友人の後藤健二さんの足取りをたどるのが目的だったという。
今後、同様の理由でシリアへ向かう日本人ジャーナリストが出てくることは十分に考えられる。
同じような悲劇が二度と起こらないために、日本政府の迅速かつ適切な対応が求められる。
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