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光とその周辺

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主にエッセイ、レビュー、日記。
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記事一覧

雑居ビルを眺めながら 11

 アーケードから外れるように階段を下り、地下道を通り抜けると、ぽっかりと開けた空間に出る…

一方井亜稀
3か月前
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雑居ビルを眺めながら 10

海辺の街で大きな雑居ビルは見当たらなかった。おそらく自分が見落としていただけなのだが、商…

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雑居ビルを眺めながら 9

ビルとビルの隙間を覗くと、その先に金網のフェンスはあって、蔦が絡まっている。旺盛に伸びる…

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205号室に暮らした 春編

#時は過ぎて 引っ越しを決めたのは家が傾いたからだった。何だか当然のように書いてしまった…

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205号室に暮らした 春編

#大陸の風 鶴田さんがいなくなってしばらくして、中国からの留学生らしき人が引っ越してきた…

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205号室に暮らした 春編

#鶴田さん 一階に住むその人をなぜ鶴田さんなのか知っているかというと、玄関に名前が掲げら…

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雑居ビルを眺めながら 8

窓の外に煤けたビルがある。多くが空き部屋なのか、人の気配はない。午後の光が部屋の奥を照らして、壁紙が剥がれ落ちているのが見える。別の部屋にはカーテンがかかって、中の様子は伺い知れない。一階は商業施設になっているはずだが、アーケード側からは屋根に塞がれてビルの全貌を見ることは出来ない。普段は目に入ることもない景色を眺めながら今、コーヒーを飲んでいる。まるで網をかいくぐったように在るカフェの窓。ここからは、ビルの裏の顔ばかりが見える。 美しいものを表とし、隠されたものを裏という

205号室に暮らした

#テレビ 朝起きて、カーテンを開けるとベランダの柵に脚立が掛かっていて、大家が上ってきた…

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205号室に暮らした

#水 アパートの向かいには小さな食堂があって、いつも大学生でにぎわっていた。バイパス沿い…

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205号室に暮らした

#イノセントワールド ある晩のことだ。眠っていると突然、ドン、と響く音がして咄嗟に地震か…

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雑居ビルを眺めながら 7

昔、街中の商業ビルで働いたことがある。閑散という言葉を知らない、今ほどオンラインも充実し…

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染みのような陽やけと煙りの道筋 ―吉増剛造さんのライブパフォーマンスによせて

今日は、6月5日(土)に足利市の artspace&café で行われた吉増剛造さんのライブパフォーマン…

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雑居ビルを眺めながら 6

空いている席に腰掛けると、全面ガラス張りの窓の向こうを眺める。目はしばらくビルとビルの間…

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雑居ビルを眺めながら 5

いつかまたそこへ行こう、と思って久しく行かない。そんなこと、一回や二回じゃない。たまたま仕事で、用事があって、近くまで来た。それで、少し歩けば辿り着けるのだけど、今日は時間が足りないと思う。あるいは、疲れたと思う。公園のベンチに腰掛けると、遠くに高層ビルは建って、それから老眼のようにぼやけた手前のビルに焦点を合わせると、煤けたビルの裏側が見えた。この前まで、違うビルに隠れて見えなかったはずだが、すっかり開けた手前の駐車場から見上げたら、煤けた壁はまだ日向に慣れてはいない表情を