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La doce -ボカの流儀-

サンシーロ, ウェンブリー, カンプノウ, マラカナン, そしてボンボネーラ
高校生の時にサッカーの虜になって以来
この5つのスタジアムでフットボールを見ることが
いつしか私の夢になっていた。
今回はその一つ、ボンボネーラのお話

ブエノスアイレスに立つ

南米に来てから約2年半。。。
遂に、ボンボネーラでボカジュニアーズの試合を見れることになった。
今季のリーグ最終戦に標準を当て、チケットを探し、有休をとり、やっとの思いで
ブエノスアイレスの地を踏むことになった。

サンパウロに比べるとブエノスアイレスは肌寒くジャケットが欠かせない。
寒さと雨でどんよりとした空、欧米風の建築物が立つブエノスアイレスは
まるでヨーロッパにいるかの錯覚に陥る場所であった。
街ゆく人々もどこか落ち着いた表情だ。
ブラジル同様の南米ラテンのリズムを想像していた私に取っては少し意外で
あったが、ブラジルに慣れている私にとってはアルゼンチンのこういった空気は新鮮で、非常に興味深く、フットボールに対してもそんな欧州文化を期待してしまう。
到着初日はそんな思いを馳せるなか、本場のパリージャ(炭火焼きのステーキ)や
赤ワインを堪能した。
翌日は今回の滞在の目的であるボカのゲームだ。

いざボンボネーラへ

前日の雨空から一転、快晴に包まれたブエノスアイレスは
昨日までの欧米風の様相から一気に南米の顔へと変貌を遂げた。
空の青さと、人々の活気。そこに街の雰囲気が加わって
正に”南米のパリ”と化していた。やっぱり南米の顔を見せてくれたブエノスアイレスに否が応でも夕方からの試合を期待してしまう。
欧州と南米の融合、、ワクワクする。

15時、指定された場所に行くと、そこには私と同じくらいの年代の男性が二人。
ルシアーノとフアン。彼らが今回一緒に行くボカのサポーターだ。
欧州やブラジルと同様、アルゼンチンでも試合のチケットはほぼほぼソシオ(会員)にしか販売されない。当日券が出ることもあるが、今回はリーグ最終戦ということで事前にチケットを提供してくれるアルゼンチン人を見つけ、チケットを確保していた。
そこから彼らの車に乗り込みスタジアムへ向かった。

フアンは英語が堪能で、ボンボネーラに着くまで自己紹介からボカや日本のフットボールについてなど様々な話をし、次第にお互いの緊張はほぐれていた。
全く初めて会う人とものの10分で打ち解ける事ができるサッカーはやはり偉大だ。
彼らはチケットの確保以降、何かとアルゼンチン旅行に必要な情報を提供してくれたり、両替商を紹介してくれたりと、試合観戦以外でもサポートしてくれていたしポルトガル語と英語でのコミュニケーションは思っていた以上にスムーズだった。ポルトガル語とスペイン語は似ていると言うのは知っていたがこれほど通じるとは予想外だった。
後日ブラジルの友人に聞くとポルトニョルと言って、同じワードを使ったり、ワードが似ていたり、何やら共通点が多く、このような表現をされることがしばしばあるようだ。
そして次第に車の窓越しに青と黄色のユニフォームが目につくようになってきた。。とうとうボンボネーラが近づいてきた。

スタジアムの周辺に駐車をするとそこはもうボカ一色であった。
スタジアム外は既にお祭り騒ぎで、至る所でビールを片手にサポーターたちが群衆となり、よくある南米のサポーターのイメージ図と重なっていた。
チャントが鳴り響き、フラッグが揺れる。。。欧州のサポーターと比べて、悪く言えば無秩序、よく言えば自由に各々が楽しむスタイルは南米特有のどこか陽気な雰囲気を漂わせる。やっぱり南米だ笑
アウェーのサポーターがいれば、ひとたまりもないだろう。。マラカナンでのブラジルのサポーターからはそういった雰囲気が感じられたが、ボカのサポーターからはそういった怖さはそこまで感じなかった。
この感覚の理由が次第にわかっていくことになる。

入場までにはセキュリティとチケットチェックが3回ほどあり
遂にスタジアムにたどり着いた。チョコレート箱という愛称のこのスタジアムは思っていたよりコンパクトで、住宅街にポツンと位置している。
入場口の電子ゲートにチケットをかざして、とうとうボンボネーラに足を踏み入れた。

ボンボネーラの入場ゲート前

ボカサポーターとamigo

通路と階段を上がって最上階へ
バックスタンドの3階の端の方が私たちの席だ。
そこからはLa doceと呼ばれるゴール裏がよく見えた。
急な斜面のようなスタンドの3階からピッチを見下ろす。
高所恐怖症の私にとっては少し怖く感じられたが、
そんなことをすぐに忘れ去ることができる。
この360°青と黄色で囲われた圧巻の景色に思わず息を呑む。
アウェー席は無く、観客の100%がボカサポーター。
どおりで、スタジアム外で他サポーターを見ないわけだ。
鳴り響くチャントは4方向からピッチに降り注がれる。
収容数は決して多くないが
スタジアム全体から発せられる歌声は全方位の互いのサポーターを反響させ
選手を鼓舞し、相手チームへのブーイングでは最大限のプレッシャーを与える。
否が応でもこの歓声と熱気に体が震える。これがボンボネーラ。
それは正に12番目の選手を意味するラドセと言う言葉にぴったりで
ゴール裏だけでなく、この360°を囲むボカサポーター全てを意味するのがラドセなんだと。

周りを見渡すと老若男女、様々なサポーターが観戦に来ている。
LucianoとJuanが道中、ボカはリーベルと違って泥臭いサッカーをする。
それがボカなんだと語っていたし、実際私自身もボカのイメージは男臭いイメージであったが、案外そんなことはなくさまざまな層のサポーターがいたことも少し意外だった。無論ゴール裏にいけばそう言った熱い男たちが多いとは思うが。。

”おいハポネース、写真を撮ってくれ”と後ろに座っていたおじさんにいきなり声をかけられた。最初はスペイン語なのでよくわからなかったが、ジェスチャーを見るとそう言っているのだろうとすぐに理解できた。私のiPhoneで撮って欲しかったようで写真を撮ると、ちゃんと撮れているか見せてみろと。
撮った写真を見てすごくご満悦なおじさん。
横にいたJuanがおじさんにケータイを盗るのかと思ったよと笑って話すと、
おじさんは笑いながら
”そんなことするわけないだろ、アミーゴなんだから”と

アミーゴになったおじさん

そうこうしているうちに、ゲームが始まりそうだ。
チャントの大合唱が一段と大きくなっていく。
ゴール裏だけはなく全員がチャントを歌う、
”Boca, mi buen amigo!!!!!" (ボカよ, 我が良き友よ!!)と

ボカサポーターの真髄

このボカよ、我が良き友よと言うチャントで気付かされる。
ボカサポーターにとってクラブは友なのだと。
世界中の多くのチームのサポーターは自らのクラブを恋人と称し、
愛していると叫ぶ。時には自分自身と重ねる。

しかしボカは違う。ボカは自らのクラブを友と歌う。
今までクラブを友と歌うクラブがどれほどあっただろうか。
私にとってもクラブは恋人であり自分自身と重ねる事が多かった。
彼らはクラブを友とし、サポーターを友とする。年齢や人種関係なく同じボカをサポートするものを友とする。友であるボカの友はみな友であると言ったところであろうか。
そしてその友とチャントを歌う。それが大合唱となりクラブの背中を押し、支える。これが私がスタジアムで感じたラドセであり、
この考えこそが、ボカジュニアーズがアルゼンチンひいては全世界にサポーターが存在するクラブたる所以の一つではないかと思う。
友達くらいがちょうど良いのかもしれない。
愛だのなんだより、友情くらいの方がフットボールクラブとサポーターの関係にとっては都合が良いのかもしれない。

ボカサポーター
La doce ゴール裏

我が京都サンガ

京都サンガファンでもある私は最近、twitterでゴール裏のあり方やサポーターのあり方が話題に上り,議論されているところをよく見かける。
少々うちわの議論になって、新規サポーターからすると少々とっつきにくい印象もあるかと感じる。せっかくのJ1という舞台でクラブを大きくするチャンス。

だから、サンガというクラブとサポーターも友達くらいの感覚でいいんじゃ無いだろうか。他の京都サポのことも友達の友達くらいに感覚で接する事ができれば
より身近でアクセスしやすいものなるのではないだろうか。
クラブを恋人と捉えれば、隣に立っているサポーターは恋敵になってしまう。
一緒に戦うべき存在なのだから、友であり仲間であった方がいいに決まってる。
クラブを恋人のように捉えることは、時に周りが見れなくなるかもしれない、
恋は盲目と言うように。
だからクラブもサポーターも友達くらいがちょうどいいんじゃないかと思う。

そして全員が歌えるチャントが何曲かあれば良い。
サポ全員でチャントを歌う一体感、そしてそれが友の背中を押す。、
それはクラブという友だけではなく、隣に立つサポーターというもう一人の友の背中を押し支え合う。
そんな考え、環境が京都サンガに根付けば、自然とビッククラブへの道を歩めるのではないかと思う。

最後に

試合に戻ると、2-2で引き分けだったが他会場の結果によりボカのリーグ優勝が決まった。試合後二時間ほど優勝セレモニーを見て帰路についた。
何よりも夢にまで見たボカの試合を観戦できただけではなく、リーグ優勝の瞬間に立ち会えたことは感無量であった。

クラブワールドカップで見た、ボカジュニアーズ。
パラシオ、リケルメが踏んだピッチを生で見る事ができたこと、
そしてボカというクラブの真髄を肌で感じれたことに感謝し
次なるフットボールの地へ思いを馳せたい。


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