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治療しても良くならない腰痛と膝痛の原因とは?~Xさんの歩き方治療~【前編】

今回は、
慢性的な腰痛と歩くときの膝の痛みを抱えて苦しんでおられたXさん
の治療経験を元に、

  • 「歩くとは足を前に出すこと」だと思っている

  • 歩いた後に腰や膝に痛みを感じる

  • 「正しいウォーキングフォームは絶対に守るべきだ」と思っている。

というあなたに向けて、治療家(整体師・理学療法士・物理学修士)の立場でお話をしようと思います。
よろしくお願いいたします。


治療をしても消えないXさんの腰と膝痛の謎

今回は前編です。

Xさんに起きた痛みの原因追及が主な内容となります。

一緒に「痛みの原因は何かな?」と考えてもらえたらうれしいです。

Xさんは慢性腰痛、さらに歩いた時に両膝が痛みます

腰が痛い。歩くと膝が痛いXさん。
これはつらいです。

Xさんは、壮年の男性です。
デスクワークのお仕事をされています。

かなり状態の悪い慢性的な腰痛を抱えておられます。

前のものを取ろうと腕を伸ばしたときや、
激しい咳をしたときなどに
ぎっくり腰
になることもあったそうです。

日中は常にコルセットをされ、
「これが外せないんですよ・・・」
と言われていました。

「腰が痛くなるのは、
年を取って体が衰えたからだ。
だから、体を鍛えないといけない!」

と真面目なXさんは、
コロ○がやや落ち着いてきたタイミングで
ジムに通うようになったそうです。

最初はランニングマシンで走っていたそうですが、
「膝が痛くなっちゃって、走らないで歩いています」
そうです。

ですが、それでも
膝の痛みはよくならない
状態が続いたそうです。

「シューズをちゃんとしたものを買わないといけないんだな」
と、あれこれ「良いシューズ」を探してもおられました・・・

紹介を経て私がXさんと出会ったときは、そのような状態でした。


Xさんの治療の経過と、消えない痛み

Xさんの治療が始まりました。

Xさんの体の状態は、控えめに表現しても
かなり悪い
状態でした・・・

「よくこれでお仕事されていたな」
と、そのお体の状態から、
Xさんの責任感の強さを感じ、尊敬の念をいただきました。

私の手による治療の細かい経過は、
専門的になるので割愛しますが、
Xさんの努力のおかげもあって、
経過は良好でした。

「最近は安心してくしゃみができますよ。前はギックリ腰が怖かったけどね」
「朝起きたときに違いが感じられますね。起きてトイレに座った時、
『あ、腰痛くない』
って気づくことありますよ」
という嬉しい報告をいただくようになりました。

ここまでは、順調でした。

しかし、どうしても消えない痛みがあったのです。

  • 腰痛がなかなか完全に治らない。

  • 歩くときの膝の痛みが消えない。

という2つです。

ご本人は、
「年だからしょうがないですよ。ここまで良くしてもらって感謝です」
と私を労っていただきますが・・・

私の頭の中は、
「う~~~ん、なんでだぁ~?」
と考え続けていました。


消えない痛みの原因はどうやら「歩き方」?

体の状態が改善傾向となり、
Xさんはますます喜んでジムに通われていました。

気になる言葉がありました。

「やっぱり、(ジムで)がんばると痛みが出ちゃうね」

ジムに行った後は痛みが出るそうです。

最初のころは私も、
「痛くなるのは頑張りすぎですよ。次は気を付けましょうね」
と答える程度で、具体的なアドバイスはほとんどしていませんでした。

しかし、なかなか痛みが消えないとなると、
いくつかある疑わしい原因の一つとして、
ジム
が浮かび上がってきました。

そこで、ジムでのトレーニング内容について詳しくお聞きしました。
真面目なXさん。
最初の頃は、トレーナーさんから指導をしてもらったそうです。

内容を確認させていただくと、
腰痛に配慮したものになっているようです。
「さすがトレーナーさん」と思いました。

ですが同時に、
ここでXさんの消えない痛みの
一番怪しい容疑者
がわかりました。

それは

歩き方・ウォーキングフォーム

です。

優秀なトレーナーさんは
「正しいウォーキングフォーム」
をきちんと指導されていました。

同じことが書いてある図を下に載せます。

画像は引用先へリンクされています

この正しい歩き方とう情報は、ある程度
「常識」
ともなっています。

まじめなXさんはこれを
「意識」
して忠実に行われていました。


あなたが誤解しないようお伝えしますが、
私は、
「いろいろな歩き方があって良い。歩き方に個性があって良い」
と思っています。
もちろん、痛みが無ければですが。

一般的な「正しい」歩き方ももちろん否定しません。

問題は、
「この歩き方が正しい。これ以外は間違い。」
という考え方です。
この考え方で、体に痛みを抱えている方にたくさん出会ってきました。

Xさんもその一人です。

早速、Xさんと一緒に、
今のXさんに合った歩き方
を一緒に考え、実践していただきました。

その時のポイントとなったのは、
歩くときの「筋肉」でした。

次にその解説をしますね。

「歩く」という動作を、筋肉から考えてみる

過去の私の記事にも、歩くことについて言及しているものがいくつかあります。
「昔の日本人の歩き方」という歴史から。

歩行は「前に出す足」よりも「支える足」の方が重要とした治療経験から

さらに、階段を登る動作を物理学的に考えてみた最近のこの記事。
ここでの考察は、実はそのまま歩行にも当てはまります。

今回は
筋肉の観点
から歩くという動作を考えます。

「正しいウォーキング」で使う筋肉の主なものとは?

歩行と筋肉について解説をしているサイトはたくさんあります。
例えばこんなサイトがありました。


歩行と筋肉の関係は本来は大変複雑なものです。
ですが、
今回は難しく考えず、
単純化して考えてみましょう。


歩くとは
「足を前に出す運動」
と思っておられる方が多いですよね?

歩くときに足を前に出す筋肉には何があるのでしょう?
それは、腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)です。

「腸腰筋」とは、大腰筋と腸骨筋の総称

背骨や骨盤の内側から出発して、
鼠径部の前を通って、
太ももの骨にくっつきます。
この筋肉が収縮すると、股関節を前方向に動かします。

随分と曲がりくねった筋肉だなぁ~
と思われたかもしれませんが、
これは、私たちの祖先が
四つ足歩行
をしていた名残です。
四つん這いになると、この筋肉の曲がりくねった状態が少し解消されます。
これは余談でした(笑)


ごくたまに「太ももの前の筋肉で足を前に出す」という方がいます。
大腿四頭筋ですね。

大腿四頭筋の仕事はあくまでも
膝関節を伸ばすこと

ですが、これは基本的に膝関節を伸ばす筋肉なのです。
(正確には股関節を曲げることもできますが、通常の歩行時にはあまり働きません)
私も理学療法士となるための実習をしているときに、同じ間違いをしたことがあります。
実習先の先生に「やっぱりもっとお勉強だね」と言われました(笑)


さて、Xさんは
踵から接地することを
意識されていました。

このことを意識すると、
どうしても

膝関節を伸ばそうとしてしまいます。

足を前方向、遠くに出そうとしますからね。
この時に大腿四頭筋が働き、踵から接地します。

たしかに「膝を伸ばしてかかとから着地」と書いてありますね。


さて、この歩き方。
Xさんにとっては、一体何が問題だったのでしょうか?



「正しいウォーキング」の何が問題だったのか?

私が考えた、Xさんに生じている問題について解説します。

・腸腰筋が伸び縮みしづらく硬く弱い状態なのに、酷使していました。

Xさんは、

  • デスクワークで座ったままの姿勢でいる時間が長い

  • コルセットを長時間使用している

状態でしたので、

腸腰筋は大変硬い状態

でした。
これは、手で治療しているときに実際に触れて感じておりました。

私の治療で、腸腰筋の状態は改善したとはいえ、
完全に治った状態ではありません。

正しいウォーキングを行おうと、
足をできるだけ前に出そうと、
この腸腰筋を働かしていました。

治療により、
硬さは緩み始め、
健康な状態になりかけていたXさんの腸腰筋は、
「正しく歩く」ことで、再び硬くなっていったのです。

そのため、腰痛がなかなか治らなかったと考えます。

「腸腰筋と腰痛が関係あるの?」という方は以下の私の記事や動画がお役に立てるかもしれません。
要点を簡単にまとめると、以下の通りです。

腸腰筋がうまく働かないと、
その分を腰の筋肉が常に頑張る状態が続きます。
腰の筋肉がリラックスできないと、血行不良などが引き起こされ、
常に腰が痛みを訴え始める。



・膝を伸ばした状態で、踵を繰り返し床に打ち付けることで、膝関節に負担がかかっていました。

Xさんの場合、
踵から着地することは、
膝関節を痛めることにつながっていました。

その理由は以下の通りです。

例えば何か棒があって、その棒の真ん中に切れ込みがあったとします。
その棒を地面に強く打ち付けると、切れ込みから
ぽきっ
と折れますよね?
(角運動量保存則という物理法則で説明できますが、今回は割愛します。)

Xさんの膝関節は、まさにその状態でした。
新しい靴を探していたのは、その衝撃を吸収したかったのだと思いますが、すでに膝はかなり痛めた状態でした。

踵で接地するたびに、膝関節に大きな負担がかかっているのではないか?


このような仮説をたてました。

これが正しければ、
Xさんの腰痛も膝関節の痛みは解消されないと考えました。

「正しい」とされる方法を忠実に守っていたのに、
それが「痛みを発生させる」原因となっているのかも・・・?

なんとも皮肉なことです。

では、このXさんの習慣を、どのように修正していけばよいでしょうか?

ここが、私の仕事の大事な部分ですが、とっても難しい部分でもあります。

今回はここまでとして、続きは次回にお話ししたいと思います。


ありがとうございます。一旦一休みしましょう

いつも、最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回の前編をまとめをさせていただきます。

  • 正しい歩き方・ウォーキングフォームが、痛みの原因となる可能性があります。

  • 「正しい」とされていても、痛みをあなたが感じられるのならば、それは「正しくない」と考えた方が良いかもしれません。


後編へ続きます!



お話は以上です
最後までお読みいただきありがとうございます。
私は文章にするのが苦手ですが、
できるだけ伝えたいことを書いてみました。
もし間違いや不明な点がありましたら、
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喜んで加筆修正いたします。

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