絵本 de 昔話『猿と猫と鼠』
作画:茜町春彦
原作:柳田国男
昔々ある所に、爺と婆とがありました.
婆は精出して木綿を織ると・・・
・・・それを爺が風呂敷に入れて方々の町を売り歩いていました.
或る日、爺は木綿を売りに出て・・・
・・・1人で山路を帰って来ると・・・
・・・遥か向うの山の木に大きな雌猿がいるのを猟師が鉄砲を持って撃とうとしておりました.
雌猿は手を合わせて、こらえてくれと云う様子をして拝んでおりました.
可哀想な事をすると思って止めに行きますと・・・
・・・思わず鉄砲が反れて爺は肩先を撃たれました.
猟師はトンだ事をしたと思って逃げてしまいました.
そうすると、何処からともなく多くの子猿が現れて、一生懸命に介抱をしてくれました.
そうして猿の家へ連れて行って・・・
・・・大層な御馳走をしたそうです.
婆が心配しているから、もう帰ると言いますと、猿たちが御礼に宝物をくれました.
これは猿の一文銭と云って世にも大切な宝物ですが、命の親様に差し上げます.これを祀っておくと金持ちになります.
本当にお猿が言った通りでありました.
家では婆が年の暮れだというのに、木綿も売らずに爺が帰って来たので・・・
・・・散々に怒りましたけれども・・・
・・・猿の一文銭の御蔭で僅かな間に金持ちになりました.
ところが近所によくない人があって、急に爺婆が金持ちになった訳を聞いて・・・
・・・知らぬ間に、その宝物を盗んでしまいました.
爺と婆とはビックリして方々尋ねて見ましたが、どうしても在りかが知れません.
そこで家に飼っている玉という猫を呼んで、玉よ、猿の一文銭を3日の内に探し出して来い.探して来てくれたら御褒美だ.探し出さなければ、これだと言って・・・
・・・光る短刀を抜いて見せました.
猫はこれを聞いて直ぐに飛び出して、1匹の鼠を捕まえて・・・
・・・言って聴かせました.
鼠よ、うちの爺様の宝物がなくなった.3日の内に見付けて来い.見付けて来るならば助けて遣る.もし見付けないと尻尾まで食べてしまうよ、と言いました.
鼠は食べられると大変だから3日の間、近所の家々をまわって猿の一文銭を探しました.
そうして、終いに隣の悪者の家のタンスの中にあるのを見つけて、引き出しをかじって、それを取り出し持って来て・・・
・・・玉に渡しました.
玉は喜んで、それを咥えて爺様に渡しました.
爺も婆も猫の玉も鼠も共々に大喜びで、皆が皆いつ迄も繁昌しました.めでたしめでたし.
(因幡)
参考文献:日本の昔話(2006年10月25日36刷 柳田国男著 新潮文庫)
使用画材:ArtRage 3 Studio Pro(アンビエント社)Photoshop Elements 10(アドビシステムズ株式会社)
初出:パブー(2014年1月28日)
パブー投稿作品を修正して移植しました.