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論文の要約

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アート系の論文の要約、学術的意義を自分でまとめています。
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#装飾

【要約】天野知香「「装飾」の潜在力」(2019)美術フォーラム21 第40号

【要約】

本稿は、美術フォーラムの特集「「装飾」の潜在力」にあわせて執筆された論考である。本稿では、ルネサンス以降から近代、現代までの装飾や文様の捉え方や解説したうえで、1970年代という時代は美術(特に絵画)や装飾について大きく価値を変えようとした転換期にあたると考察している。その中で1970年代に活躍したがアメリカの美術評論家エミリー・ゴールディンを紹介している。
エミリー・ゴールディンは同

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【要約】ハイリンヒ・リュッツエラー(川上実訳)「装飾ーヨーロッパ美術とイスラム美術の比較ー」『芸術と装飾』(山本正男監修)pp6-19(1986)

【要約】ハイリンヒ・リュッツエラー(川上実訳)「装飾ーヨーロッパ美術とイスラム美術の比較ー」『芸術と装飾』(山本正男監修)pp6-19(1986)

【要約】

本稿ではヨーロッパとイスラムにおける聖堂などの建築に施された装飾を分析することによって、西洋や中東といった「装飾」の捉え方の違いを明らかにすることを目的としている。ヨーロッパにおいては「装飾」とは、ある物に対して付加的なものであるということが一般的な理解である。
しかしイスラム文様などにみられる装飾は、西洋的な概念に囚われず装飾が建築を覆い隠すように支配している。このような装飾に対する

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【要約と学術的意義】アドルフ・ロース(伊藤哲夫訳)『装飾と犯罪―建築・文化論集―』

(1)要約
アドルフ・ロース(1870-1933)の『装飾と犯罪』を中心に、素材と技術、それに伴った目的を重要視する建築論をはじめ当時のウィーンやヨーロッパの街並みや建築文化の傾向、また彼の交友関係である芸術家たちとの交流の文章やエッセイが23項収められている。
ロースは『装飾と犯罪』において、装飾表現について強い批判を行う。例えば、パプア人における顔面の刺青は自分を飾りたいという欲求の表現である

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【要約と学術的意義】藤井匡「隠喩としての装飾:伊藤誠の彫刻の表面」

(1)要約
本論の目的は、全体像を把握することが困難な伊藤誠の彫刻を、その彫刻の形態と表面の剥離の問題から論じることでその困難さを明らかにすることである。

伊藤誠自身の彫刻を「一見何がなんだかわからない物」を目的としている。しかし、その目的は新しい造形を作り出すことではなく、鑑賞者の視線の変化によって得れる造形の特徴である。このような作品は、伊藤の作品においてメッシュを使った彫刻作品に現れる。そ

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【要約】山口恵理子「特集 装飾論の展開とその可能性」『文化交流研究』筑波大学文化交流研究会編 pp33-45(2013)

(1)要約

本稿は、紀要『文化交流研究』の特集「装飾論」におけて寄せられた装飾にまつわる先行研究を紹介しているものである。著者がゼミにおいて取り扱った、ゼンパー(1860−63)、リーグル(1893)、ヴェルド(1895)、ロース(1910)、ペヴスナー(1936)、ヴォリンガー、ブーエ(1979)、そしてゴンブリッチ(1979,2006)、ロジャーフライ(1910,1917)の思想から装飾論を

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