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論文の要約

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アート系の論文の要約、学術的意義を自分でまとめています。
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#芸術

岡田温司「芸術作品は有機体か?」

岡田温司「芸術作品は有機体か?」

ゴンブリッチの戸惑い

絵画において、「有機的である」という言葉は褒め言葉であるといわれている。しかし、もともと無機物である絵画が有機物になぞらえ例えられるということは、辻褄のあわない比喩のようにも感じる。
そもそも絵画で言われている「比例」や「調和」ということばは、宇宙的で数学的な概念であると筆者は説明する。さらに筆者は、このような有機体のメタファーが、「国家や社会を有機体になぞらえてきた19世

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【要約】田中理恵子「「生成」としての音楽」

【要約】田中理恵子「「生成」としての音楽」

【要約】

本稿では、文化人類学のモノや「生成」する議論を援用しながら、ラテンアメリカの音楽が「生成」されるものであることを考察する。この考察では、アルゼンチンやキューバ地区(ラテンアメリカ)のオーケストラやオペラが「オーケストラになる」「オペラになる」といった「生成」される状態を明らかにしていく。

文化人類学では、ボアズやストロースなどが芸術作品を分析しているにもかかわらず、あまり芸術作品を研

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【要約と学術的意義】阿部美由起「ゴーフリット・ゼンパーの素材概念」『美學』第51巻4号(204号)2001年3月31日刊行

(1)要約
本稿では、19世紀の建築家ゴーフリット・ゼンパー(1803-1879)の素材概念についての考察を行なっている。ゼンパーの建築思想において、素材は非常に重要な要素として位置を占めていている。例えば、「目的に応じた素材と技術」によってできる建築や芸術が彼にとって理想のものとしているのだ。

このゼンパーの素材を重要視する視点は、美術史家アロイス・リーグルらによって「唯物論的」であると言われ

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【要約と学術的意義】浅井麻帆「1890年代後半のウィーン分離派とゴーフリット・ゼンパー」

(1)要約

本稿では、1890年後半に建築家オットー・ヴァーグナーをはじめとしたウィーン分離派が、1850−70年代に活躍した建築家ゴーフリット・ゼンパーからどのように影響を受けていたか考察するものである。
筆者は、ヴァーグナーの名言「建築の唯一の主人は必要(芸術は必要のみに従う)」は、もともゼンパーからの発言だったということを指摘し、ヴァーグナが所属したグループの分離派がどのように影響を受けて

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【要約とメモ】渡辺文「芸術人類学のために」『人文学報』第97号(2008年8月)

1 はじめに
2 芸術論の変遷
3 芸術人類学の展開
 3-1 文化相対主義
3-2 本質主義
3-3 機能主義
3-4 マテリアルカルチャー論
4 考察
 4-1 芸術人類学批評
 4-2 芸術人類学の展望
5 おわりに

(1)要約

本稿は、「芸術」の議論が人類学にとてどのような点において正面から論じ難い領域であり続けたかを理解し、今「芸術人類学」を低所するための基盤を作る

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