記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『歯まん』ネタバレ感想/人と違う自身の体に恐怖する少女

2015年制作(日本映画)
監督、脚本:岡部哲也
キャスト:馬場野々香、小島祐輔、水井真希、中村無何有、宇野祥平、泉水美和子、坂井天翠、古川真司、瓜生真之助、染谷修司、大西恵美子
配給:アルゴ・ピクチャーズ
カリコレ2018/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018上映作品

高校生の遥香は、恋人の洋一とラブホテルに。そこで初めて性行為をした遥香だが、その最中自身の性器に歯が生え、洋一の性器を噛みちぎってしまう。

呆然とする遥香の目の前で血飛沫が。ピューっと飛び出る血飛沫はチープさと相まってなかなかシュール。呆然としながらも次第に恐怖が遥香を襲う。洋一は呼びかけても応答しない。

出血箇所をおさえて、病院に運べば死なないのではないか、と思わなくもないが、その辺りは突っ込んでいたらキリがないので…。

その場を飛び出してしまった遥香はその日から幻覚のようなものに苛まれ、恐怖を募らせるが、誰にも相談できずにいた。カフェで泣いていたのを見ていたという女性に声をかけられる。

「自分だけが不幸みたいな顔しているけれど、世の中あんたより不幸な人がいっぱいいるんだからね」

風俗で働いているという女性と遥香は時折話すようになる。ニュース報道では、ラブホテルで亡くなった男子高校生の報道が流れ、遥香は恐怖を募らせるが、犯人に繋がる手がかりは見つかっていないという。

恐怖から学校にも行けずにいた遥香に、八百屋のおじさんが声をかけてくる。(このおじさんを演じているのはインディーズ映画ではお馴染みの宇野祥平氏である)そして突如遥香を連れ去りレイプする。

レイプされながらも抵抗し、自身の危険性を伝えようと「死んでしまう!」と警告するも、行為に夢中なおじさんは気づかずまたしても遥香は性器を噛みちぎってしまう。

おじさんの死体を埋めるため泣きながら運んでいた遥香を助けてくれたのが裕介である。どう見ても犯罪行為というのは分かると思うがなぜか手助けをし、その後時折話すようになる。話すうちに互いに惹かれていくが…遥香は二度と大切な人を殺したくないと葛藤する。

序盤はエログロありのコメディタッチで行くのかと思いきや、遥香と裕介の恋は真面目に描かれ、切なさが伝わってくる。しかし、そこに風俗をやっている女性が自分は裕介の姉だと言い、遥香に裕介に近寄るなと警告し始める。

姉の登場によって身を引くも互いの思いは抑えられず…という展開になるのかと思いきや違うのである。この女性は裕介の姉ではなかったのだ。裕介も知らぬ女性なのである。それなのに裕介の家に侵入し、遥香を縛りつけ強引に性器を触る。突如サスペンスになったのか?と面食らう。

見知らぬ女性を殺した裕介に遥香は「埋めよう」と言う。共犯関係になり更に距離を縮める訳だが…とっくの昔に共に埋めているので共犯関係なのだれど、と突っ込みたくなるのはまあまあ。しかし、罪の共有により体を重ねるという背徳は映画として見は分には面白い。

そして、裕介に遥香は自身の性器の話をし、性行為ができないと伝える。性行為ができない相手より他の人の方がいいと言う遥香に、裕介は突如投げやりになりこのまま明日生きている保証もないから性行為をしようと言い始める。

それまで親切に遥香の話を聞いていた優しいキャラクターであったのに、退廃的な空気をまといはじめた裕介にキャラ変もいいところだと思うが…キャラ変するのは裕介だけではない。泣きながら拒否していた遥香であったが、行為の最中快楽に身を委ね嬉々として血飛沫を浴びる姿が描かれる。

その上カマキリの捕食シーンが映し出される。カマキリのメスは交尾後、卵の栄養とするためオスを捕食することで知られる。カマキリを映し出したということは、遥香が凶器と化した自身の性器を受け入れたのだろうか。

だとしたら、それまでのシリアスで切ない葛藤は何だったのかという話になる。ただ、個人的カマキリの捕食シーンはなぜか見てしまうものがあり、どちらかと言うと好きな私にとっては、その方向に遥香を開花させるなら、もっと振り切って欲しかったと思う。

序盤から中盤まで描かれた遥香の葛藤はそれなりに丁寧に描いていたものであったので、後半の急展開は突然的過ぎて説得力に欠ける。その上、裕介の姉と名乗っていたのに全く見知らぬ他人であった女性の存在もよく分からないのでストーリー上ただ邪魔な存在になっている気がした。

設定は気になっていたものの、あまりハマらない映画なのではないかという予感から、気になってはいたがなかなか見れずにいた。しかし、結果的に言うとちょっと惜しいなと思うところはあれど全体的には嫌いではない。

まだあまり見られていないが、死姦に興味を持っている(厳密に言うと死姦に及ぶ深層心理に興味がある)ため、行為の最中に相手を殺してしまうという設定や、飛び散るのが体液ではなく血飛沫というのもビジュアル的には良かった。

見出し画像(C)2015「歯まん」

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?