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日活ロマンポルノ『夢野久作の少女地獄』ネタバレ感想/この世に復讐する少女たち

1977年制作(日本)
監督:小沼勝
原作:夢野久作
キャスト:飛鳥裕子、小川亜佐美、絵沢萠子、桂たまき、桑山正一、三谷昇、江角英明
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夢野久作の『少女地獄』の中の一遍、「火星の女」を映画化した日活ロマンポルノ。原作小説は、とある女子校で見つかった黒焦げ死体から始まる謎の怪奇事件の顛末とその背後にある校長の裏の顔を新聞記事と手紙によって浮き彫りにしていく。

映画は、原作ベースにしつつも、日活ポルノらしい味付けがなされている。甘川歌江(小川亜佐美)の妊娠、自ら子宮を傷つけて流産。そして、殿宮アイ子(飛鳥裕子)との絡みも増え、主人公をアイ子にしている。復讐と共に描かれるお嬢様であるアイ子の堕落。父親の前で、汚らしいと蔑んでいた男と敢えて性交をしてみせる。

また、原作では歌江がアイ子を愛人と言い、ルビで“アミ”と表現されているのも興味深い。“アミ”は、フランス語の“ami/amie”のことであり、意味は友達である。なかでも親しい間柄に使われる。アイ子と歌江は、親友であり、愛人でもあったということであろうか。

原作では、口付けを交わした描写があるが、映画では学生時代の頃から体の関係にまで進んでいたかのような描き方をしている。日活ロマンポルノの特性上そうならざるを得ないという側面はあるのかもしれないが…。原作にもある、歌江が復讐を決行する前に2人で豪遊し、写真館で写真さすを撮る2人の姿も描かれるが、男装している姿が印象的であった。

日活ロマンポルノにおいて、レズビアンは人気のジャンルの一つであり、その描き方は性消費を目的とした過度な過激さと、ファンタジー色の強いものではある。興味深い面もあるが。

アイ子と歌江が抱き合いながら火に包まれていくラストは、原作にはない映画ならではのラストである。そんな2人を見て狼狽える校長。こだまする2人の笑い声は、追い詰められた校長でなくても気が狂いそうである。

少女2人の焼身自殺を見て、連想したのが映画『小さな悪の華』(1972)である。『小さな悪の華』は、アン・ペリーによる実際に起きた殺人事件をモチーフにしているとされる。実際の事件をなぞらえているわけではないが、2人の少女の狂信性と無垢な残酷さを描く。

男を誘惑してからかったり、悪魔崇拝の儀式をしたり…2人だけの世界で生きている。そんな2人を引き裂こうとする大人たちへの反逆として自身の体に火をつける。また、『少女地獄』ほど明確ではないが、『小さな悪の華』においても口付けを交わすシーンなど、同性愛的友情関係が描かれている。実際のもとになった事件の2人もレズビアンだったのではと推測されたが、後にアン・ペリーは否定しているという。

話を『少女地獄』に戻そう。『小さな悪の華』が1970年製作、1972年公開であり、『少女地獄』は、1977年製作・公開である。製作、公開年の関係から、『少女地獄』が『小さな悪の華』に何らかの影響を受けていてもおかしくはないが…この2作の関連性については分からない。ただ、合わせて見てみると面白い作品かもしれない。


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