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【エッセイ】 太陽になれない北風


元気な人の側にいると元気でいなくても良いから気が楽だな

ーたいして話すこともない

そんな私の本心を深掘りもしないで
会話を進めてってくれるのは、どこか楽ちんだ

北風と太陽
心置きなく、北風でいられる事は居心地が良い


自分の中の大きな何かがゴトンと抜け落ちている気がしてなんだか軽い

普段なら、めんどくさくなるからねと口にバツをして言わない様にしている言葉も
その日ばかりは軽々と口から飛び出して来て

ーほらね、めんどくさいことになった
へへへっ...

と心の中で鼻先を擦りながら笑っている

この日は
なんとなく自分の受け皿が広がっている気がして
力が入ってないからこそ
言葉がふんわりと口から出て行くのがよくわかった

なんだか久しぶりに軽い気持ちで笑ったりもして
自分ってこんな風に笑ったっけなんて思ったりして

ーどうぞ、あなたのめんどくさい反応もここに入れていいですよ
私、そんなあなたを受け入れます

なんて思いながら少し立ててあげられたので

面倒くさい態度をする人もこちらの機嫌を伺って話をしてくれているのが分かったのだ

それもまた不思議で仕方なくて
また笑えて来たりして


壊れた洗濯機も治ってしまうほど

それに、はじめて会う訳じゃない人たちも
最近は目を丸くしていて私を見て
皆、目尻を優しく垂れ下がらせているように

私が私に優しくなると世界もどうやら優しくなるようだ


誰もが自分を大きく見せたくて
誰もが自分を等身大の自分よりも少し大きめに見ている気がして

そんな自分を見つけた時に少し心地悪さを感じる

そして、誰もが目の前にいる人より
ちょっぴり自分のがすごいぞって思いたい

そんな、誰かの地雷を踏まないように
自分を小さく見せたりもする

そんな風に大きくなったり、小さくなったりしながら誰かと向き合う

これは少し面倒くさいことだ





かつての私も自分を大きく見せたかった時があった
それってちょっとカッコ悪いとも思うけど

そんな下心が消えたかというと、きっとそうではないと思う

でも、人はとことん打ちのめされると、この大きく見せたい自分が消えて行くみたい

このところ、私が人との関わりを持つ時に
不思議と軽くなったのは

ここ最近、とことん打ちのめされたからだ

右から、左から
針で刺されるように

頭の先やら、つま先
腹の出っぱりなんかも全部
痛い出来事に突かれて削がれて行く

そして気づけば等身大の自分がそこにいて

素直に、自分のダメさ加減を受け入れられる様になっていた

ー自分って自分が思っていたよりも、だいぶダメなやつみたい

一生分というほど自分を責めて、そんな自分があんまりに可哀想で見てられなくて
慰めざるを得なくて
ーよしよし、一緒にがんばろうなんて声をかけて

少しスマートになった、いつもぼんやりしている不器用な自分をこんな風に認めて迎入れる

自分は少しずれているし
なんだかおかしな存在だけど

それでもいいよね

と言える様になって

自分の至らなさと、自分のおかしなところ
気が利かなくて、マイペースで
なんとなく反応が薄くて、あまり笑わないところ
その癖にいつも頭の中で面白いことを考えているところ

そんな、懐かしい忘れていた自分が私の元に帰って来た

そう、私は北風で
太陽ではないから

そんなに皆みたいに人と明るく接しられない

それに、ずっと笑っているのも好きじゃない
口角とかが疲れるでしょ?

かつては、少しひんやりした自分だったこと

なんとか自分を偽って
明るくて皆のためになるカッコよく見える太陽になろうとしていたことを思い出した

それから、小さな自分がそばに居る日が増えた気がする


太陽にならなくてもいいよ

私は太陽じゃないからね

太陽の光の元で、私は思う存分もう一度北風の自分を知って行く




akaiki×shiroimi

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