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【エッセイ】喧嘩もできない仲ならば


仁王立ちをする彼女と私の間には3mほどの距離

良いしれない強張る空気

たまたまそこに来たもうひとりの女友達が
ハッと驚いて体を丸め心配そうに通って行く

きっと、私と彼女の間には冷たい北風が吹いていたに違いない

私は喧嘩が嫌いじゃ無い

喧嘩は避けたいけど、嫌いじゃ無い

何故なら、私にとって喧嘩とは
深まる一歩手前の2人に与えられたテストだと昔から思っているから

私と彼女はそのテストを越えることが出来なかったのだ



私と彼女は親友だった

気付けばいつも私の腕に彼女の腕が通っていて
くだらない話ばかりをして
お互いにカラスが鳴くような汚い笑い方で笑っていた

「おまえのそう言う所がダメなんだぞ」
とちゃんと叱ってくれるから
私は彼女そんなところが大好きだった



ひとり暮らしをしていた時
朝、5時に地震が起きて飛び起きると
私はパニックになりすぐに彼女に電話をした
震源地に近かった私と少し離れた場所に住んでいた彼女の温度差が何故か私を安心させてくれたのだ

警戒心が強く、誰にでも心を開くわけではない私が迷うこと無く
朝5時に電話をしたことは今となっては不思議なほど

それくらいに私は彼女に心を許していた



私と彼女に別れが来たあの時

大きな地震が立て続けに起こっていたあの時のこと

地球の地殻変動と共にお互いの人生にも
立て続けに大きな人生を揺さぶる様な出来事が起きていた

外圧からの刺激は徐々に私たちの関係にヒビを入れて行ったことに今なら気づくことができる

しかし、今だからもっとわかる事は
それは私たちが別れを選ぶ決断に至るまでの決定打は外圧からの刺激でも
人生のそれぞれの試練でもなく
心の中にあるエゴや自分自身の弱さだったのだと思う

誰かとの関係が壊れる時
それは、自分自身のエゴを捨て
自分に負ける事なくその人との関係を大切に出来るかだと思う

いつだって人間関係の狭間には、自分の弱さや相手への甘えが潜んでいる

自分のエゴを守るのか?それとも大切な人のために自分の弱さと戦うのか?
それが運命を大きく分ける一つのポイントになるのだと思う

時に「ごめんなさい」と謝れる事は、相手への最大の愛だと私は思う

それでも、人間関係の難しさは互いが同じようにエゴを捨てることができないと言うことだ

どちらかが現状に甘えていたいと言う気持ちが出る時点で、その関係は壊れているも同然なのかもしれない


安定を選ぶことには勇気はいらない
でも、幸せになるには勇気が必要不可欠なのだ

きっと、私と彼女の関係には勇気が足りなかった
ただ、それだけだったのだと今では思う

それでも、彼女と私は大きな喧嘩をしては仲直りができ
互いに痛いところを突き合ったとしても、彼女が言うのならと素直に思える何かがあった

それはとても特別な関係

今となっては、彼女のいない人生でも今の私自身が彼女に作ってもらっているのだと思うことが出来る

平穏はいいのかもしれない
しかし、私が思うこと

それは、喧嘩もできない仲ほど寂しいものはない

彼女との喧嘩ができた事は、そこに信頼があったことを教えてくれるから

彼女といた時間に私がもらっていた愛は今もこれからも私の中にあり
その愛が誰かを愛する材料になっているのだと私は思っている

これからもずっと


 akaiki×shiroimi

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