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【書評】リーダーは、弱くてもかまわない。

神保町の古本屋街と高円寺の古着屋、渋谷のカメラ屋。出会いに溢れている場所個人的トップスリー。この本も例に漏れず、ある日の神保町の一角で目が合って出会い、購入。何を隠そうタイトルは今回読んだ本のオビに書いてあった言葉だ。

読んだ本はこちら。Amaz●nの回し者ではないです。

ちなみに神保町価格で500円。浮いた500円は古本屋帰りのカレーに消えた。

すこし話は逸れるが、リーダー論の考え方なんてこの世に数え切れないほどあるし、きっと人間の数だけある。どの本を読むにしても、誰にリーダー論を学ぶにしても、それぞれ教え方も書き方も違えば受け取り方も其々であるだろう。
その中で、ジェームス・C・コリンズの名著『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』(日経BP社:刊)のリーダーシップ論の中で、「第五水準」という考え方がある。「第五水準」のリーダーとは、カリスマ性とはまったく関係なく、謙虚な姿勢を持ち、人格的にも優れたリーダーと定義されるのだが、岩田さんが目指したのはこのリーダー像だろうと思われる。

その前提の元で書いていこうと思う。

「ついていきたい」と思われるリーダーとは?

リーダー論、組織論、エンゲージメント…学生の組織の中でリーダーになる機会も多少ある所為かそういった関連の本は比較的読んでいるし、現環境下の周囲の人たちと話すことも多い。だけれども”それぞれが思い描くリーダー像なんて無限にあるし無限でいい”という結論になりやすい印象があり、そこまで具体的な議論になることは少ないように思われる。

本書は、「ついてこい」ではなく、「ついていきたい」と思われるリーダーシップを発揮するために、岩田さん自身が考えたことや実際にしてきたことをまとめた一冊だった。岩田さんは、まわりの人たちに推されるまま、気がついたらとうとう社長にまでなっていた、誰でも頑張ればリーダーになれるし社長にもなれるとも強調している。
結局のところ、リーダーに向いているかいないかを判断するのは周囲であり、自分は誰よりも組織を愛することに徹した行動・思考方針を実践するのみであると改めて感じた。


リーダーって完璧じゃない

多くを求められると思われがちな「リーダー」というポジション、この本は7章から成っているがそれぞれが「リーダーは、~でない」という体になっている。

・リーダーは、かっこいいとは限らない。
・リーダーは、饒舌でなくてもかまわない
・リーダーは、部下と飲みに行かない
・リーダーは、人のすることは信じてはならない
・リーダーは、立ち止まらなければならない
・リーダーは、多読家である必要はない
・リーダーは、弱くてもかまわない

内容は是非読んでもらえればいいと思うのだが(本当におすすめなので)、ここまで”リーダーは別にそうじゃなくていい”を並べられると、「あれ?リーダーってなんやったっけ」ってなってくる。し、きっとそれで合っている。

思うに、本来、リーダーという立場である前に、組織の中では1人の人間としてあるべきなんだろうなと思う。リーダーだから、メンバーだから、そんな軽薄な行動はいつか軋轢を生む。野球でピッチャーとサードがどっちが偉いか、って話だ。比べるところではないし、各員がチームを愛して最大裁量を図ることができる組織が結局強いんだろうな、と思う。


リーダーには結局なにが求められているのだろう

リーダーはこうじゃなくていい、は多く書いてあるが、リーダーはこうあるべきだ、が書いていない本書である。ので、結局なにが求められているのかを個人的に考えてみることにした。すぐに思い浮かんだのは2つだ。

・大きな志を抱けるか
・人の心をいかに動かせるか

リーダーであることの所以として、1つはメンバーという立場の人間より高い視点で物事を眺めることができうることがあると思う。肩書きは重荷ではあるが、その分その人の覚悟や責任を表すものだと思っていて、だからこそ正義である必要があるのだと考える。いかに大きな、且つ正しい志を、人に伝えられる(=心を動かせる)か。逆にそれさえできていれば「ついていきたい」と思われるリーダーになれるような気すらしてくる。

リーダーだから完璧、なんて妄想だと思う。リーダーだからこそ失敗するし、不完全で、成長の余力を秘めた1人の人間だ。「早く社長になりなさい」と、本書著者の岩田さんもあとがきで書かれていたが、そういった責任環境に身を置くことは自身の成長に繋がると考える。

「自分がこの会社を動かしているんだ、という自負心と充実感は、何物にも代え難いものがあります。すばらしい経験です。」

さすがにこの文章には昨年2月あたりの自身を思い返して少しのデジャヴを感じずにはいられなかったが本当にそう思う。チャンスがあると思うなら、手を挙げてみる。声を上げてみる。その積み重ねだと思う。
今後に生きるであろう、良本に出会えたと思う。是非お勧めしたい。

「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方 / 岩田松雄



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