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デザイナーとコンサルタントの垣根がなくなってきているという話

自分で問題を設定する必要がある世界(VUCA時代)

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2010年前後あたりまでは、リーマンショック後の不景気で就職活動も非常に厳しく、氷河期と言われていた時代でした。僕が最初の就職したタイミングはこの時期で、なんとか内定をもらうことができました。このタイミングでは、おそらく自分がこれまで経験してきていた「偏差値競争社会」の延長線上にありました。僕が言う偏差値競争社会とは、あたえられた問題に対し、早く、正確に、正しい答えにたどり着く人が優秀であるとされる社会です。別にこれが今は否定されているとは思いません(むしろ今でもめちゃめちゃ優秀がられる)が、求められる人材像が変わりつつあるとは感じています。

それは自分で問題を設定する力がある人です。

マクロな視点では、世の中は以前よりも早く変わり、先が読めなくなり、いろんなものが混ざり合い、曖昧になっています。最近では、このような状態のことを「VUCA」「VUCA時代」と言われるようになりました。

・Volatility(変動性)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性)
VUCA is an acronym that has recently found its way into the business lexicon. The components it refers to—volatility, uncertainty, complexity, and ambiguity—are words that have been variously used to describe an environment which defies confident diagnosis and befuddles executives.
出典 : What a difference a word makes: Understanding threats to performance in a VUCA world

上記のような状態では、昨日まで問題であったことが、問題を解いている間に問題ではなくなり、新しい解決すべき問題が出てきます。こういった中で従来の偏差値競争社会で求められていた能力とは別に、自らが問題を設定する能力が必要になってきます。

ここでいう問題とは、「ゴール(目指すべき姿)と現状とのギャップを埋めるために解決すべきもの」と定義します。

問題を設定できない人の多くの原因は、ゴールが設定できていないからです。つまり、自分で目指すべき方向性や、なりたい姿(ビジョン)を持てないと問題を設定することができません。これまでの「偏差値競争社会」で生きてきた人たちは、ギャップをいかに埋めるかという教育しか受けておらず、社会に出た後もギャップを埋めることが評価の対象となっていました。これまでは、自分でなりたい姿を設定するということが求められていなかったのです。

左脳型の問題解決

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いわゆるクリティカルシンキング、ロジカルシンキング、戦略思考、仮説思考などという呼び方をされます。僕はまさに左脳型の問題解決を生業にしているビジネスコンサルタントですので、こちら側の人間ということになります。こちら側で求められるのは「正しさ」「正確さ」「論理」などです。すでに問題が設定されていて、それを早く、正確に解決するかが求められています。そのために「ロジカルシンキング」などの方法を駆使します。すでに存在する事実(fact)から、論理的に導き出す示唆(insight)がコンサルタントの付加価値です。実際にビジネスの現場にいても、まだまだコンサルタントの需要は高く、実際に企業がコンサルティングファームに払うフィーも非常に高額です。

右脳型の問題解決

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右脳型と言われる問題解決のフレームワークとしてデザインシンキングという言葉が使われています。これはデザイナーがデザインを行う過程で用いる考え方を指す言葉です。

“Design thinking is a human-centered approach to innovation that draws from the designer's toolkit to integrate the needs of people, the possibilities of technology, and the requirements for business success.”
— Tim Brown, CEO of IDEO
出典 : Design Thinking - Design thinking is a process for creative problem solving

右脳型の問題解決の特徴としては「なにが問題なのか」を観察するところから始まります。つまり、自分たちで問題を設定する考え方なのです。

また、右脳型の問題解決の1つの大きな特徴としては「モノ」が出てくるという点です。デザイナーに仕事をお願いすると、デザイン案が複数出てきます。なので、実際に問題が解決された後の世界が少しだけ垣間見えるということです。

実際に問題が解決された後の世界(ビジョン)が少しでも見えるので、よりビジョンとのギャップ(問題)も明確になります。右脳型の問題解決のアプローチでは「旗(ビジョン)」が立つので、建設的に議論を進めやすくなります。

今後求められるのは右脳と左脳の混合型

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今の世の中と、右脳型の問題解決、左脳型の問題解決のアプローチ方法をご紹介してきました。右脳型だけのアプローチだけでも、左脳型だけのアプローチだけでも、これからの世の中に求められる人材には少し足りない気がします。僕は右脳と左脳のハイブリッドが必要であると考えています。

デザイナーのような右脳型と、コンサルタントのような左脳型の垣根がなくなりつつあります。

これは、何も1人で右脳と左脳のスペシャリストになる必要はありません。おそらく僕も今から右脳型の問題解決アプローチを、今の左脳型のレベルまでに持って行くのは難しいと思っています。世の中には多くの右脳型のプレイヤー、左脳型プレイヤーの方がいます。そういった方々とコラボレーションすることで、この不透明で、変化が激しい時代に価値を生み出していくことができると考えています。

個人的には右脳型のアプローチのレベルも向上させたいと思っていますが、それはまた別のお話。

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