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良いタリバン!? 悪いタリバン!?

タリバン=悪?


私は、この世を悪くしているものの一つは、物事や人々を単純に分ける「二項対立」だと思っている。

良いvs悪い。正義vs悪。敵vs味方。愛国vs売国。反◯vs親◯。などなど。

「二項対立」的な考え方は、議論や相互理解のチャンスを封じ込め、分かりやすく単純化されているため、自分の正当性を確認して安心したい人の心理にスパッとはまる。仲間意識とともに、違うものへの敵対意識を強め、社会の分断は加速する。ろくなもんじゃない。

しかし、そんなことを言いながらも、アフガニスタンのタリバンについてどう思うか聞かれたら、私も多くの人と同じで、「悪い、怖い」という単純にネガティブなイメージかもしれない。そして、「残忍なタリバン統治vs人権を大切にする民主的な国づくり」などという、”分かったような”二項対立的考えが全くないとは言えないかもしれない。よく知りもしないのに。

十何年も前、米国主導の復興が始まったばかりのアフガニスタンを訪れた時は、もっとそうだったかもしれない。なので、当時聞いたあの言葉は、衝撃的だった。それは・・・

「Good Taliban(良いタリバン)」


当時の暫定政権のハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領から、直接聞いた言葉だ。

運良くカルザイ大統領にインタビューできるチャンスを手に入れた私たちは、大統領宮殿で何時間も待たされた後、ようやく彼に会うことができた。

幸いなことに英語で答えてくれるという。

そして、彼はカッコよかった。
さすが、かつてファッションブランドGucciのデザイナーをして"the chicest man on the planet today(今地球上で最もシックな男)"と言わせしめただけある、ジェントルマンに見えた。

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カルザイ大統領(当時)インタビュー


インタビューで、まずは、日本の貢献について聞き、カルザイ氏は立板に水の如く話し始めたが、ずっと、"いやあ、アメリカの皆さんのお陰でこんなに復興しまして"的な話ばかり。

あれ?なぜアメリカの話ばかり?これじゃ使えない・・・時間もないので、焦って「いや、あのぉ・・日本の貢献についてお聞きしたんですが・・」と言うと、「あっそうかそうかぁ、ごめんごめん(笑)」的なリアクションが返ってきて、それがすごく”軽い”感じがして驚いたのを、まだ感覚的に覚えている。

彼が日本の貢献についてどう答えたか。印象的な回答はなかった。覚えてない。

鮮烈に覚えているのは、前述の「Good Taliban」発言だ。

彼は次のようなことを言った。
正式な政府を発足させる大統領選挙と議会選挙の直前のことだった。まだ捕まっていなかったオサマ・ビンラディン氏とタリバンの残存勢力の掃討作戦に強い決意を示した後・・・

カルザイ氏「Bad Talibanばかりじゃない。Good Talibanと協力しないと国づくりはできない」


なんか、正直なところ「goodとかbadとか、なんか言葉が軽いな」という違和感を持ち、「おいおいgood Talibanて」と心の中で突っ込んだのを覚えている。

彼は続けて、
「裁かれなければならない犯罪者やテロリストは百人程度だけだ。それ以外のタリバンは、この国に残ることを歓迎する」と。

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Good Taliban発言の意味するものは?


当時も、カルザイ大統領は「カブール市長」などと揶揄され、全国をくまなく掌握しているとは言えないと指摘されていた。治安の悪化は深刻で、選挙の投票所爆破予告なども絶えず、タリバンの残存勢力が力を持ち、国連の職員も近づけないような地方がたくさんあった。「Good Talibanと協力しないと」は、そうした中で言ったのだろう、程度の認識だった。

そして、彼はアメリカ傀儡の、民主化を進める優等生リーダーぐらいにしか思っていなかった。

ものすごく多くの顔を持つ男?


しかし、彼はもっと複雑な背景を持つ、一言では語れない人物のようだ。

タリバンとの距離の近さが指摘され、一時は同じパシュトゥン人主体のタリバン政権がカルザイを国連大使に任命したと伝えられる。そして大統領の任期を終えた後はアメリカ批判も強まりタリバンと近づいたとも言われる。今回のタリバン復権後は、タリバンと協議をしたことも伝えられた。

彼の経歴もものすごく多岐にわたる。パシュトゥンの有名氏族の生まれだが、インド、フランス、アメリカ、パキスタンとさまざまな国に滞在をし、さまざまな政治勢力と関わり、要職を務め、そして米国によるタリバン政権崩壊に貢献し・・・アメリカの石油会社と関係もあると言われ・・・でも、前述のようなタリバンとの不思議な関係もあり・・

以下は2014年と古いが、カルザイ氏とタリバンの関係が書かれた記事だ。


いずれにせよ、民族的にも政治的にもモザイク国家のアフガニスタンの混沌の行方を占う際に、カルザイ氏はキーパーソンの一人として、また縦横無尽に動くのかもしれない。

インタビューで感じた、どこか”軽く”さえ感じるノリは、さまざまな勢力と接し、あらゆる荒波を乗り越えてきた、「力」のひとつなのかもしれない。


⭐️英・中同時学習! アフガニスタンの固有名詞⭐️

(アフガニスタンの固有名詞のローマ字スペルは、メディアによって違うことが多々あり)

✅ ハミド・カルザイ 
(英)Hamid Karzai
(中)哈米德 卡尔扎伊 (hāmǐdé kāěrzāyī)

✅ アシュラフ・ガニ前大統領 
(英) Ashraf Ghani
(中)阿什拉夫 加尼  (āshílāfū jiāní)

✅ カブール Kabul   喀布尔 (kābùěr)

✅ タリバン Taliban  塔利班 (tǎlìbān)

✅ タリバン最高指導者 ハイバトゥラー・アクンザダ師
(英)Haibatullah Akhundzada
(中)海巴图拉 阿洪扎达 (hǎibātúlā āhóngzādá)

ところで、イスラム教関係の基本ワード、すぐに出てきますか?

✅ イスラム教 
(英)Islam 
(中) 伊斯兰教 (yīsīlán jiào)

✅コーラン 
(英)Koran
 (中)古兰经 (gǔlán jīng)または、可兰经 (kělán 经)
*なるほど、コーランの音を当てているんですね。
そして、「お経」の一種という扱いなのか・・・

きょうもここまで読んでいただき、心より感謝いたします!

AJ 😀


🌟アフガニスタン関連の過去記事はこちら✨

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