くすんだなすの揚げびたし。
仕事が早く終わった午後3時。会社を出た。
終わりかけの5月の日差しは早くも鋭く。このままでは夏にはどうなってしまうのかと去年と同じことを考えながら歩く。
久しぶりに八百屋さんの開いている時間に帰れた。遠回りを決めて、アーケードに入ると、商店街の店がギリギリ使えるのであろう歩道のタイルの色が変わる線ギリギリまで野菜たちが並んでいた。
トマト、南瓜、きゅうり、そして…なす。
『なすび袋』と書かれたそれは5本入って150円と安い。
左手に取り『揚げて、びたそうかな』誰にも聞こえない声でつぶやいた。
家に帰り、片手鍋に水、出汁パックを入れ火にかける。
とれただしに醤油を50cc、砂糖50cc、みりんも50cc。ひとつまみの塩を加えて、おろししょうがを好きなだけ。
ヘタを落とした5本のなすを半分に切る。
紫色の皮に4ミリの幅に切れ込みを入れて多めの油で焼く。サラダ油には少しだけごま油も加えた。
鮮やかな紫色が出てきたら隣のだしにそのまま ざぶん。
馴染ませれば馴染ませるほどに美味しい。
冷やしても、ご飯にかけても、素麺に乗せても。。。
ベランダから玄関にかけて抜ける風が、この料理を一段と美味しくさせる。
くすんだ色のなすを、もうすぐ6月の夕日が輝かせる。
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