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相地
2019年3月1日 16:41
『を呼ぶ、人、昔の、水』 突然、笛が一段と高く鳴った。 僕は、はっとして空をあおいだ。 それは、広く響きわたっていくというより、さらに上へ上へと昇っていく音だ。まるで宇宙へ発射されたロケットのように、笛は遠ざかっていくほど――それはその音が小さくなっていくことでもある――勢いを増していった。 こんなふうに聞こえたことは、今まで一度もなかった。笛はいつだって、この街から出ていこうとはしなか
2019年3月1日 16:40
この街では、月が満ちては欠ける夜半に、笛の音が聞こえる。 奏者が自分の存在を強調するように、その音はどこまでも伸びていく。夜にはない影の代わりに、この街を通り越してどこまでも。 初めてそれを耳にしたのは、小学校に上がったばかりの頃。 当時は地元のニュースに取り上げられるほど、その現象は注目された。月夜になると、たくさんの人が外へ出ていき、だれもが耳をすませていたのを覚えている。人で溢れ返