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『黒竜の物語』を書いてみました『ポニイテイル』★47★

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ベタベタの水に浮かんでいたはずなのに、ちっともよごれていません。特別な材質なのでしょうか。ユニコーンの角はきれいなだけではありません。角を手にしていると、頭のおくの方から、とても気持ちよい波が押しよせてくるのです! その波につつまれていると、なんというか……自分の頭がとてもよくなったような感じがするのです。

あどは急いで一度も休まずに家に帰ると、なんでもノートをひっぱり出し、左手にユニコーンの角を持ちながら、右手にペンを持って動かしてみました。

するとどうでしょう! 文章がスラスラと書けるのです!

頭でものを考えた瞬間、右手がノートの上をスルスルと竜のように動いて、空想の物語なんていくらでも書けるではありませんか。ユニコーンの角を手にして、気持ちをしずめてぐっと頭に力を入れればすぐにわかります。ぜんぜんちがう人の頭になった感じがするのです!

試しにあどは、ブラックフォールで見つけられなかった『黒竜の物語』を書いてみました。

あどが書いたのは、こんな物語でした。

***

ブラックフォールに黒竜がすんでいるというのは、ほんとうでした。
でも黒竜はうわさとは正反対に、とても親切な竜でした。

子どもたちを食べるどころか、こまっている子どもたちの力になってあげるのでした。冷たいお茶が欲しいなぁと思っている子のもとに、すばやく最高級のお茶をコップつきで届けてくれたり、日曜日に滝のそばで石を拾うくらいしかやることがないヒマな子と、いやな顔をせずに遊んでくれたり、町はずれから家まで歩いて帰るのはめんどうだなぁと思っている自転車に乗れない子を、背中にヒョイと乗せ、目玉が飛び出るくらいのスピードでつれて帰ってくれたりするのです。

ブラックフォールがきたない滝だというのも、まったくのごかいでした。
とくに黒竜はブラックフォールの水が大好きでした。その水はさわるとベタベタするので、頭がよい黒竜はちょくせつ水にふれたりはしません。ただ、滝のそばにいるだけでいいのです。

ブラックフォールの水しぶきは、そのそばにいる人や竜を、とてもしあわせな気持ちにさせてくれます。においはとてもあまくて気分がウキウキするし、黒い滝が流れ落ちるのをのんびり寝ころんで見ていると、自分の心の中にある不安や、心配のかたまりがまるごと、遠くへ消えてしまうような気分になるのです。

***

このように、ユニコーンの角を持つと、だれでもすらすらと文章が書ける——効果はそれだけじゃありません。覚える力もバツグンにアップします。

あどは6年生までの漢字どころか、大人になるまでに必要な漢字を、ひとばんで全部勉強してしまいました。辞書も一冊、まるまる頭に入ってしまいました。ずっと勉強し続け、気づくと朝の4時。このあと眠ったら忘れちゃうかなと、あどはちょっと心配になりましたが、覚えたたくさんの言葉は、目をさましたときにも、図書館の本棚のように、きれいにそろって頭の中にならんでいました。

そしてあどは決めたのです。
このすばらしい宝ものを、プーコの誕生日プレゼントにしようって!


『ポニイテイル』★48★へつづく

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