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シーユーライセ『ポニイテイル』★65★

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ハレー少年が滝のてっぺんで汗をぬぐい、持参したお茶でのどを軽くうるおしているときのことです。そこはのどかで見晴らしもよく、気分を思い切りリフレッシュできる、少年のとっておきの休憩場所です。そんなところに『もう死ぬ寸前です』みたいなペガサスが横たわっているなんて、まったくの予想外でした。

「ハァハァハァ」

ざっと観察したところ、ペガサスの体はポニイのように小さくて、外傷はないのですが、呼吸器系にトラブルがあるのか、ひどく体力を消耗しているようでした。

「うーん、まいったな」

翼を持つ子馬を見るのは初めてのことで、どのように手をほどこしてよいのか、少年には見当がつきませんでした。馬に関する本を『生物のフロア』で読んだことがあるので、少年がその記憶をたどりなおしていると、ペガサスは自分から、

「少年よ、助けはいらない。行け」

と心情を表明してくれました。頭の中を通して動物に話しかけられるのは、ブラウニー図書館の司書パナロで慣れていたので、驚きはしませんでした。ただ、地べたに転がっている理由が不明です。謎を放置できないタイプの少年は、このまま理由を想像し続けることと、その解を知っているペガサスに質問することを天秤にかけ、質問することに決めました。

「なんで、ここで倒れているの?」
「人知れず死にたいのだ」

ペガサスは主張しました。
「キミ、死にたいの?」
「死にたくはないが、生きる資格はなくなった。全然見つからない……。少年、お前はなくした物を探すのは得意か?」
「ぼくは物を無くしたりはしないよ。だから経験が少ないし、比較したことがないので得意かはわからない」
「ちっ、このヘンに置きっぱなしにしたのは、覚えているんだけどな」
「何を?」
「ケライのユニコーンの角だよ。今日は何日だ?」
「7月6日火曜日」
「うう……それはマズイな……クソッ」
「どのくらいマズイの?」
「オレ様が死ぬのはかまわないが、これじゃあケライまで死んじまう」
「探し物が得意な人というか、集めるのが得意な動物なら知っているけど」

少年の頭には、きみどり色の長いハナの映像が浮かんでいました。

「クソッ、オレ様としたことが、最後の最後にやらかしたな」
「こまっているんだね」
「オレさまがこまってるだと? そんなハズないだろ。情けをかけるな。行け!」

テストは明後日なのです。深入りして巻き込まれるわけにはいきません。
本人も希望しているし、ここは『別れのあいさつをして去る』の一択です。

「ではお元気で、いやちがうな、ではまたね、うーん、しっくりこない」

『これから死ぬ相手にどのような声をかけるべきか』なんて、考えた経験がありませんでした。少年がもたついていると、

「バカだな少年、そういうときは、シーユーライセっていうんだよ」

ペガサスは最後の力をふりしぼるかのように教えてくれました。

「シーユーライセ?」


『ポニイテイル』★66★へつづく

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