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栗色のポニイは、銅色のひとみで 『ポニイテイル』★66★

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わけがわかりませんが、少年は言われた通り『シーユーライセ』と発音してお別れしました。横たわるペガサスをあとにして、何歩か進んだところで『シーユー』は西の国のことばで「またね」、『らいせ』は東の国の「来世」という言葉かなと思い当たりました。

本来、休憩は30分の予定で、もう少し休むべきでしたが、ひん死のペガサスの近くでくつろぐのは、いかがなものかと思い、少年が走り出そうとしたそのときです。
木のかげから、たてがみとしっぽが銅色のポニイがピョンと飛び出してきました。

「ハ、ハレー少年ですよね」

その体が栗色のポニイは、銅色のひとみで、何かを訴えるかのように、少年のことをじっと眺めています。

「うん。そうだけれど、何か用?」
「あの……お願いです。あそこにいるペガサスを救ってください」

1日に2回も不思議なポニイに出会うなんて珍しい日だなと思いかけたけれど、『この2頭を友だち同士』と仮定したらどうでしょう。この先で3頭目があらわれてもおかしくないような気さえしてきました。

「でもあのペガサスはさっき——」

振り返るとペガサスはまだ草むらで横たわっています。

「さ、さっきのは本心ではありません。強がっているだけなんです」
「きみはあのペガサスの友だちなの?」
「友だち……なのでしょうか。ほとんど話をしたことはないのですが……」

ポニイに乗ったことはもちろんあったけれど、ポニイを背負ったのははじめてでした。少年はポニイなんて、子どもがひとりで背負える重さではないことを学びました。

「重いよ、かなり。やっぱり助けるのは……」

少年が背負いあぐてねいると、銅のポニイはクビをグンと下げ、銀のポニイのおなかの部分を自分の背中に乗せて支えてくれました。

「わたしの先祖は、代々、重い荷物を運ぶのを仕事にしていましたから、パワーにはちょっとだけ自信があります」

少年は銅のポニイと協力して、銀の翼をもつペガサスを町まで運びました。ふたりがかりでもやたら重くて、のろのろしか進めません。おかげで今日のトレーニングの負荷は、予定の10倍くらいになりました。ペガサスは完全にエネルギー切れのようで、運ばれている間、目をつむったまま何も話しませんでした。銅のポニイは心配しましたが、ペガサスの呼吸の乱れはさっきよりも落ち着いていました。最初は『ひん死』だと思いましたが、疲労度が高かっただけのようで、ペガサスがすぐに死ぬということはなさそうです。

ブラウニー図書館に立ち寄ると、壁をなめるよりも先に、司書パナロがすぐに出むかえてくれました。

「あらあら、重かったでしょう?」
「そんなことより、来ていた女の子はもう帰りましたか?」
「ええ。午後からだけど、学校へ戻るって」
「おお! 良かったぁ」
「ふふふ。心配してくれていたのね」
「ん? あ、ちがいます。これで今日明日は、勉強に集中できるかな、と」
「あ! ……ええとね、先に謝っておくね。彼女、今日の放課後また来るって言ってたし、明日の夜は13階で友だちと誕生日会をしたいって言ってたから、ちょっとバタバタするかもしれない」
「誕生日会?」
「そう、誕生日会」
「いいよ、オレの誕生日会なんて。それより集中したい。テストは明後日だから」
「ん? あなたの誕生日も明日なの?」

少年は『自分の誕生日会かと勘違いした恥ずかしさ』を打ち消すように、ペガサスを少し乱暴にパナロへ差し出しました。パナロはきみどりのハナで、ゆうゆうとペガサスを持ち上げました。

しかたない。今日明日は家で勉強する一択か——

『宇宙のフロア』まで用意してくれた大きな恩に対して、ファイナルテストへ向かう前に、お礼をきちんと言葉にして伝えなくちゃとハレーは考えてはいたのですが、うまく言葉になりません。

こんな状態でどうする。ファイナルテストには、面接試験もあるはずなのに——

ハレー少年は、『元ひん死のペガサス』の、閉じている目を見つめました。

ありがとうは宇宙から戻ってきてから伝えればいい。なんなら宇宙から伝わるか試してみるのもいい——

少年の気持ちは切り替わり、今日明日の新しいプランが次々と浮かんできました。

そうだ。宇宙から戻ってこられない可能性も当然低くないのだから、『感謝の遺書』がいるな。でもその前に、『彼の遺言』を伝えなくては——

「パナロさん。何かそのペガサス……ユニコーンの角を探しているらしいんです」
「ユニコーンの角?」


『ポニイテイル』★67★につづく

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