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『承認欲求』に狂わされないために何をすべきなのか

紹介したいのは、太田肇著『承認欲求の呪縛』である。

承認欲求と言われて、まずはじめになにを思い浮かべるだろうか。

目立ちたいがために犯罪行為をネットに載せてしまう「バカッター」や、

いいね!をもらうためにタピオカばかり食べている「インスタ映え」とかだろうか。

承認欲求とは、誰かを揶揄するときに使われがちだが、揶揄している側の人間も、

少なからず承認されたいという欲求を抱えているはずだ。

そこには、揶揄したり非難したりすることによって、正義として認められたい「承認欲求」が介在しているかもしれない。


人間にとって最大の欲は「睡眠欲・食欲・性欲」であるが、人を裏で操る最強の欲は「承認欲求」であると筆者は主張する。

本書の1~3章は、時事ネタを承認欲求の観点から述べている。

スポーツ界のパワハラ、企業データ改ざん、電通の過労死など、一見承認欲求とは関係なさそうなことでも、実は深く関わっていることが分かる。

私がもっとも印象に残っているのは、犯罪に手を染めた有名人の息子の話だ。

こういった事件の場合、世間の注目は、親が甘やかしたり、厳しくしたりしたのがいけないと、親の教育に目がいきがちだ。

でも、息子の犯罪の本質にあるのはそこではない。

息子は今まで、「有名人の子供だから当たり前」という理由で、なにを頑張ってもたいして褒められないような環境で生きてきた。

ゆえに、承認されることを人一倍渇望しているのである。

そんな息子が犯罪に手を染めることは、理解できる気がしないだろうか。

何をしても褒められないのなら、ダークサイドに堕ち、捕まって世間の注目を集めたいと思うのである。


承認欲求の呪縛を解くカギはあるのか。

第四章ではいくつか解決するための具体例が挙げられている。

その中でも私は「所属している世界を増やす」が最も効果的であるような気がした。

私は大学時代、文学賞をとりたくて仕方がなかった。

応募する文学賞の過去の受賞作品を10年分くらい読み、審査員の選評まで研究した。

しかし、「とりたすぎた」「研究しすぎた」せいで、肝心のアウトプットがまったくできず、理想の表現などできるわけもなく、不甲斐ない4年間を送ったのだった。

自分の所属している世界を増やす、というのは気持ちの面で重要となる。

私は社会人になってからまた、小説を書けるようになった。

仕事をしたり、noteを書いたりすることで、小説のことを考える時間が減った。

減ったことによって心に余裕が生まれ、

会社とnoteというコミュニティに所属していることで安心感が得られた。

1つの世界で考え続ける、というのは精神衛生上あまりいいことではない。

質の高いアウトプットやパフォーマンスをするには、プレッシャーを軽減するためにも、所属している世界を増やすことが重要になるのである。

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