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エピソード#13  患者等搬送事業者の役割~看護のベッドサイドケアが役立った~


前日の夕方に電話があり、「入院のため明日 病院に連れていきたいが、寝たきりになってしまい、家族では連れていけない。衰弱はしているが意識はあるし、救急車を呼ぶほどではないが、部屋が二階にある。こんな状態だが 介護タクシーは利用できるか?」という内容。希望の時間には 他の方の対応があり、対応可能な時間を伝えたところ、病院側も その時間で受け入れてくれるとのことで、予定の時間に社長とお迎えに行きました。
 
自宅周辺は道が狭いため車をどこに停めようか、ご家族に聞きに行こうと車を降りたところ、不安そうな表情をされたご家族が数名、外に出てきました。
「管だか袋なのかよくわからないけど、それが外れて尿だらけで、着替えも私たちではできなくて。どうしたらいいのか。着替えもやってもらえますか?」と言われました。
 
管が外れた?袋が外れた?尿だらけ??
事前情報にはなかったため、いろいろ推測。
尿の管が入っていたが抜けてしまったのか?それともウロストミー(尿路系ストーマ 人工膀胱)のパウチ漏れか?
 
急な階段を上がり二階のお部屋に行くと、部屋中に異臭。ベッドは介護用ではなく普通のベッド。
そのベッドには、目をギュッと閉じたご本人様が仰向けで寝ていた。声をかけると うっすら目を開けてくれた。掛け布団をめくると ウロストミーのパウチが剥がれかけており、そこから尿が漏れ、胸から下は尿まみれとなり、敷き布団にまで汚染。
敷き布団とご本人の身体の間には ビニール袋やバスタオルが何枚も敷かれ ご家族が 不安になりながらも なんとかしてあげたいと工夫したことが伝わってきました。
 
この状況を見て、「もっと早く来てあげればよかった」と後悔した。
ウロストミーからのパウチ漏れは前日からだったそうで、かなりの長時間、全身が尿汚染されていた状況だったという。
 
ご本人は 意識はあり、声はか細いが受け答えはでき、協力動作も可能。
汚染された服や下着は脱げたが、腹部に何重にも巻いてある腹帯は ほどけず。了承得て ハサミで切らしていただいた。
長時間、尿汚染された身体は 所々、発赤があり、また、ずっと仰向けになっていたため、背中や骨盤周囲の皮膚も 褥瘡 (床ずれ)の初期の状態でした。
 
ご家族に タオルを絞ってきてもらい 清拭し、着替え介助を行いました。
ウロストミーからは じわじわと尿があり、オムツ類はリハビリパンツしかなかったため、
リハビリパンツのサイドを切り、平らにして覆いました。
ウロストミーから尿が漏れていかないように私が考えていた時に か細い声で 「垂れないようにお願いいたします」と言われました。そうですよね、背中まで尿まみれになって長時間 過ごしていたのはどんなにか辛かったでしょう、と切なくなりました。
 
そして 布担架を敷き、社長と抱え、階段を降り、1階が店舗で 商品が陳列している棚があるため ご家族にも 周りを見てもらいながら注意して通過し、外に置いていたリクライニング車椅子へ移乗。リクライニング車椅子に移乗して、ご利用者様も ホッとした表情をされた。外にはご近所の方も心配されて来ていました
 
こんな状況でもご利用者様は 落ち着いておられ、着替え介助をする時に私が ご利用者様の名前をちょっと間違えていたのですが、何回目かに「○○です」と教えてくださり 「あっ!ごめんなさい!ちょっと間違えてた。失礼しました」と言うと ニコッと笑ってくれた。また、ご家族が ご利用者様の年齢を一歳間違えたら「○歳です」とご本人からツッコミがあり、皆が大爆笑。笑いは大切だと こんな状況だからこそ感じました。
 
病院到着後に すぐに病棟に移動でき、ナースにお迎えに行った時の状況で、ウロストミーからのパウチ漏れがあるため 処置シーツを敷いたほうがいいかもと伝えるとすぐに敷いてくださいました。そして、ナースと一緒にベッド移乗すると ご利用者様が パチパチパチと拍手をしてくださり、
「お見事、ありがとう!」と言ってくださり、私も病棟ナースも笑顔。病棟ナースに引き継ぎ、私たちも ホッとしました。
 
訪問した時に びっくりするような状況も 何度もあります。
私は 病院や施設、訪問入浴やデイサービスなど さまざまな場所で ナースをしてきた経験もあるので ベッドサイドケアでの対応力、応用力はあるかもしれません。
 
社長は びっくりするような状況でも 表情には出さず、ベッドサイドケアについては私の動きや声かけで臨機応変に対応してくれます。
社長は「自分は 子どもの頃に大火傷で入院して、動きたくても動けなかった経験があるから 今回の方のように 尿まみれになっても 動けないというのは 本当に切なかった。早く綺麗にしてあげたいという一心だった」と言いました。
 
今回、 介護タクシー・患者等搬送事業者の役割を改めて考えさせられた案件でした。
 
 

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