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エピソード#32 過酷な住宅環境で暮らす動けない独居の高齢者の緊急通院送迎


 独居の高齢男性で体調不良になっている方の通院送迎介助をケアマネージャーさんから依頼がありました。
車も自宅近くには停めれず、細い路地に入り、急勾配の長い坂が2か所あり、身体状況と住宅環境から、二人介助での対応としました。前日確認の電話には出ず、ケアマネージャーさんに伝えたところ、夕方に訪問するヘルパーさんから、お迎え時間を伝えてもらえることになりました。
 
訪問日、地図を見ながら向かいましたが、まず、自宅がわからない。「この辺りのはず」と近隣をウロウロ。まさか、、、ここ??と思っていた木々に覆われた獣道のような道を通ると、玄関外にも
ごみ袋がたくさんある廃墟のようになっている家を見つけました。
 
『〇〇さーん』と社長が呼び掛けると、「はーい」と返事があり。
『病院に行くお手伝いに来ました。入ってもよろしいですか?』と聞くと、「どうぞ〜」と言っていただき、玄関ドアを開けると、足の踏み場が無いくらいのごみ袋や荷物が散乱。
御本人は、ベッドに寝そべり、ベッド周りには、ヘルパーさんが前日に買ってきてくれたというお弁当やペットボトルがありましたが、食べておらず。部屋は暖房なども作動しておらず、昼間なのに寒い。
 
御本人、意識はあり、便臭や尿臭は無い。表情は乏しく覇気が無い。会話がやや噛み合わない。
通院拒否はなく、声を掛けると、介助で端座位にはなれた。病院に行くお手伝いに来たことを改めて伝えると、「身体が冷えているので、ドライヤーで温めます」と、ドライヤーの温風を身体に当て始めた。低温火傷の危険があるので、やんわり声を掛けると、ドライヤーを止めてくれたので、コンセントも念のため抜いた。
 
そして、今度は、もの探し。御本人に聞きながら探すと、診察券はあり。保険証は見つからない。財布はいくつもあるが、現金が入っていない。携帯電話は見つけたが、充電切れ。すでに30分経過。受診時間には間に合わない。
もし受診しても、多分、院内介助がないと医師とのやりとりもうまく出来ない可能性はあり。
ケアマネージャーさんに連絡し、訪問時の様子と、院内は付き添いがないと無理ということ、このまま帰宅になったら低体温と栄養もとれず、孤独死してしまう、と伝え、ケアマネージャーさんが、病院に駆け付けてくれて付き添ってくださることになった。
 
財布は見つからないままだったが、時間も無いため、出発準備。ゴミや荷物で、車椅子が通る動線は確保できない。
担架で外に置いた車椅子まで搬送しようかと思いましたが、御本人が、「歩けますよ〜」と言い、ふらつきながらも介助で玄関まで歩行。靴介助し、外に置いた車椅子へ移乗。
そして、車椅子のまま獣道を通り抜け、急勾配のある路地へ出る。ここからが大変でした。
社長と私以外にスタッフもいたので、3人で協力しながら、急勾配の長い上り坂を車椅子を押していく。いや、引っ張る人と押す人で坂道を上がる。
 
場所が伊豆山だったこともあり、まるで、2021年7月3日㈯に発災した伊豆山土石流災害の時の避難誘導のようだでした。車までの移動中、車椅子に乗りながら、御本人が、話をしてくれた。
「この辺りは家が流されちゃいましたよね」、「最近は、食べれなくて随分痩せました」など。
私は、部屋が寒かったのが気になり、『暖房は付けていましたか?』と聞くと「毛布にくるまって寒さをしのいでいました」と話されました。
 
もし、あと数日、あのままだったら、携帯電話も充電切れだったし、本当に、低体温や脱水、栄養失調で、孤独死していたかしれない、と思いました。
病院でケアマネージャーさんに引き継ぎ、結果、入院になり、ホッとしました。


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