見出し画像

読書と生活と絵画(3)『おいしいごはんが食べられますように』/高瀬隼子

みなさんこんにちは、
都内は連日雨降りが続いていますね。
湿度が高くジメジメしている空気に
夏の気配を感じます。
私は暑さにめっぽう弱く、
夏は、ガリガリ君とチューペットを食事代わりにして、いつも少しだけお腹を壊しています。

数ヶ月前に、高瀬隼子さんの著書
『おいしいごはんが食べられますように』
を読みました。内容は幸せいっぱいな気分になるものではありませんでしたが、読後感は不思議と清々しいです。読んでから日にちが経った今もふと登場人物たちを思い出して面白がっています。

私にとって食事は長いこと課題でした。人間関係の悩みが食べることにも繋がってしまうので、内容をとても身近に感じたのかもしれません。

▶︎装丁が可愛くて手に取って節も大いにあります。
(装画:小林千秋さん、装幀: 名久井直子さん)




◆あらすじ


第167回芥川賞受賞!

「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。

職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。

(引用:講談社BOOK倛楽部)




◆感想

主要な登場人物は下記の三人です。
・二谷さん
・芹川さん
・押尾さん

二谷さんの煮え切らなさ、
芹川さんのしたたかさ
押尾さんの不器用さ
これらの特徴は全部私の中にもある気がするし、身近にもいる気がして、三人それぞれを愛おしく感じました。

ずっと昔から、食べ物に関する番組や作品って多いですよね。きっとこれからも増え続けます。
その多くが「美味しい!楽しい!」が軸になっていませんか?一定数確実にいる、食事をポジティブに捉えてない人の存在が中心になることはなかなかありません。

しかし、こちらの作品は
「美味しい!楽しい!」ではなくて
「食事」そのものを軸にしているので
三者三様の食べることへの考え方が、丁寧に表現されていました。



◆食べるとは

食事に対するスタンスって本当に十人十色です。休日にわざわざ出掛けて行列に並び楽しむ人もいれば、腹が膨れれば味はどうでもいいと考えてる方などいます。身近な人物たちを思い出すだけでも、その特徴は挙げきれません。

食べることについて改めて考えてみると、食事の仕方には、その人自身が現れていることに気がつきます。生きていく上でどこに重点を置いているのかが顕著に表れていませんか?容姿、仕事、家族、など多様にあります。

私は長年容姿を気にした食事をしていました。
不規則で偏りがあって、「美味しい」の感情は二の次でした。低糖質高タンパク、鶏胸肉、野菜、キノコ、、、、そのせいでうまく食事を取れなくなった時期もありました。

▶︎純喫茶風プリン


しかし結婚してから、楽しめるようになっていきました。人生の比重が家族の方に変わり、長生きや健康を気にしはじめたからでしょうか。規則的に栄養を意識した食事を心がけています。身体が喜んでいるような気がして、自ずと「美味しい」を思い出すことができました。


◆ガソリンじゃなくて肯定

食事って人間が生きていく上で無くてはならないことですよね。車にとってのガソリンや、家電にとっての電気みたいです。車や家電は、エネルギーをまっすぐに受け取って動いているように思いますが、私たちは様々な観念が入り込んで、そう簡単にはいきません。

これを食べたら太ってしまう、ニキビができちゃうとか、健康いいとか悪いとか、考え過ぎていると食べたいものが分からなくなることがしばしばあります。

私はそういう時、自分が思う限りの健康的な食事をするように心がけています。そうすると「美味しい」が自分の元に帰ってきてくれる感覚がするからです。

▶︎上手に焼けたほうれん草のだし巻き卵

不健康な食事は自分を粗末に扱っていて、逆に健康的な食事は自分に優しくすることだと気が付きました。そして、自分のことを好きにならなければ、自分に優しくすることはできません。

過去の私は自分に自信が極端になく、毎日鬱屈した気分で生きていました。その時の食事はとても乱暴で、なにを食していたのか思い出すことができません。(カニカマと魚肉ソーセージ、ワカメは食べていたような気が、、、それ以外は全く思い出せません。)

食事ってやっぱり生きて行くのに必要不可欠なだけあって、少し壮大なことが絡む営みだったのですね。「美味しい」は作り手や素材を賞賛するとともに、とびきりの自己肯定の言葉でもあるのかもしれません。


明日も美味しく楽しく生きたいですね。


◆追伸

(私は健康な食事に対する知識は、離乳食の本から初めて得た人間です。
「ビタミン・タンパク質・炭水化物をバランスよくねぇ〜おーけー!」
って感じの呑気なヤツなので、オーガニックやなんやら言われると変な汗が出ます。
ただ食材の物語は好きです。
「〇〇さんが〇〇にこだわって〜」とか
「〇〇地方特有の〜」みたいなやつです。

自分以外の人生を垣間見る感じが、読書と似ているからでしょうか。誰かに思いを馳せながらの食事は、お腹だけではなく心が満たされている感覚も強いので、より活力になります。)


Aimi Iwashita


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,615件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?