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エスパドリーユの物語/Vintageのバトン
もともと服はすきなほうだ。ただあまりセンスがないせいで、買っては一度着て満足し、あとはクローゼットの奥にしまい込んでしまう、いわゆる"衣装持ち"だった。仕事帰りに3万円くらいのワンピースを買って疲れを吹き飛ばしてから帰る、とかそんなこともあったなぁ。
だから2年前、地球にやさしく生きようと決めたときに悩んだのが、服をどうするか、だった。生産されすぎていること、生産の過程で地球を傷つけていること、あってはならない搾取がおこなわれている可能性が高いこと。決断のために学ぶなかですこしずつ理解していた。
そんな「どうしよう」を解決してくれたのがVintageだった。
たとえば、このカラフルなエスパドリーユ。これは、センスがツボで心から信頼しているVintageのお店で2年前に出会ったもの。
この日はたしかサンダルを買いに行く予定ではなかった。夏がくる前にTシャツがほしくてそのお店に行ったはずだ。
Tシャツを物色する最中、とてつもない吸引力でわたしの視線を奪ったこのエスパドリーユ。一度目に入ったらもう無視できなくて、思わず手に触れた。硬さののこる麻ひもの感触、すばらしいバランスの配色。うっとりするしかなかった。
店員さんに頼んで履かせてもらうと、おどろくほど完璧なフィット。麻の硬さが素足にここちよい。
「これ、アメリカの倉庫から見つかったんです。倉庫の奥のほうで、箱に入れられて忘れられてて。80年代にイタリアでつくられたものみたいです。」
と、店員さんの説明。40年もひっそりと、倉庫の片隅で待っていたのだ。どんな理由でアメリカにきたのだろう。なぜずっと忘れられちゃってたんだろう。箱があいて長い眠りから目を覚ましたとき、この子はどんなことを感じたのだろう…
説明を聞きながら、このエスパドリーユの旅に思いを馳せ、その物語にも恋をしてしまった。予算も品物もなにもかも計画外だったけれど、この子だけ連れて帰ってきた。
結果、このエスパドリーユは、毎年夏の最初の日にウキウキと足を通す、大切な一足になっている。白いワンピースはもちろん、フルレングスのデニムにもベージュのショーツにもあう。いつもシンプルなわたしの服装に、夏のにぎやかさを足してくれる。
わたしがバトンを受け継いだ、エスパドリーユの物語。「たったひとつ」をもらいうけて、その背景まで大切にできることが、Vintageという買い物の愛しているところだ。
ほめられてのびるタイプです