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こんな中学校を創ってみたい(第5回)~「学年統括制度」&「学年一斉・自由進度学習」で、人手不足劇的解消&生産性アップ~


人手不足の現状

学校現場は、深刻な人手不足。一人にのしかかる仕事量は膨大なものに…。

教員の定数不足が深刻化しています。
令和3年5月1日時点で、都道府県・政令市の内、実に14の自治体で「中学校の義務標準法に基づく充足率」が100%を下回っています。
しかし、100%以上とはいえ、学校単位で考えれば「物理的に教員が足りていない」という状況に悩まされている学校は少なくありません。代替となる講師を探そうにも各校が取り合っている状態、また、採用倍率の低下により講師登録者数も減少しているという現状です。
ですから、代替教員不在のまま「皆で何とかする」という運営を何か月もしなければならないことも。
文科省によれば、
 ①産休・育休取得者数が見込みより増加
 ②特別支援学級数が見込みより増加
 ③病休者数が見込みより増加
の順で、教員が不足してしまうとのこと。
世の中と、教員の定数や労働条件がマッチしていないのだと思います。

個人的にですが「一瞬で」「劇的」に全体の様子が改善するとは到底思えません。だからと言って、指をくわえたまま文句ばかり言っても始まりませんので、以下のような2つのアイデアを編み出し「こんな中学校を創ってみたい」と思っています。

⑴担任完全廃止による学年統括制度

思い切って「学級担任」という言葉を学校から無くしてみよう!

学年別ローテーション担任制を導入し始めている学校が増加しています。賛否あるところですが、私の場合は、ローテーションではなく担任不在。学級はあるけれど学年職員全員が学年を運営します。
主な担任業務については、次のようにします。
①朝・終学活
 zoomやGooglemeetによるオンラインで連絡事項等を伝える。学年部職員
 は、学年廊下を巡回する。
②学活・道徳・総合の授業
 学年部で輪番でオンライン授業を行う。学年部職員は各教室を巡回する。
③給食・清掃指導
 適宜巡回する。
④教育相談・学級生徒指導・保護者面談
 学年部職員で割振りして実施する(面談は希望制でもよい)。結果的に、 
 複数対応や、素早い情報共有にもつながる。

いろいろ思う所もあるかも知れません。分かります。しかし、正直言って「慣れ」の問題だと思っています。中学生は非常に順応が早く、システムが変わっても、最初の内はやりにくさや不満もあるかも知れませんが、1か月も続けていると、気にならなくなると思っています。

むしろ教員の意識改革の方が必要かも知れませんね。例えば「学級担任として学級の生徒の成長する姿を感じることに喜びを感じる」とか「自分の学級でなければ教員同士の指導観がぶつかってしまい、やりたいようにできない」と思う教員もいるかも知れません。
けれど、なんか…その考えって主語が「自分」ですよね。結局育つのは生徒であって、それを複数の目で並列に見守っていけばいい。指導を学年部としてチームで支え合っていけば、まず教員同士が互いに理解し合い、苦手を補完しながら職務を遂行することにつながるかも知れないですよね。何より互いの目があるわけだから、かえって体罰暴言が減っていって、「なんとか調査」みたいなものも必要なくなっていくのではないかとも思ったりします。
なにより、仮に学級担任が1名病休や育休に入ったとしても、学年全体としては何ら困ることはなく、学年運営を進めることが期待できます。

とはいえ担任大好きな教員をないがしろにするわけではありません。一応言っておきますが、私自身は担任をすることが大好きでした。
自分の想いや学級生徒の想いが一つに混ざり合い、生徒一人一人が自立しながら学級組織として最高のパフォーマンスを出せるようになる成長過程を見ることに幸せを感じていたからです。
また、現実のこととして言わせてもらいますが、他の学年学級の保護者と対等に話せる年齢になり、また自分自身が保護者の立場になってみると「担任によって子供の成長が異なる」ということがまことしやかに囁かれることを実感しました。悪い言葉を使えば、担任の「当たり・はずれ」です。もちろん大いなる主観ではあるのですが。それにしても「確かにその通りだよなぁ、あの先生は…」と感じることもまた事実です。
そういうこともカバーし合えるために、あえて「学級担任完全廃止」、つまり「学年統括制度」を推進します。
どうでしょう。面白そうじゃないですか?

⑵学年一斉・自由進度学習制度

シン・時間割(仮)。例えば、国語の先生は一日に国語の持ち時数が最大3時間になる!

これは、読んで字の如く、学年の授業を同じ時間に行う仕組みです。自分で言うのもなんですが、画期的です。例えば、各学年4クラスの学校があったとして、具体的な時間割(上記の表)を考えてみました。当然改善の余地はありますが、これは「革命的」だと個人的には思っています。この「学年一斉・自由進度学習」のイメージは次の通りです。

①授業そのものの進め方
 2年生の数学の授業を1組~4組まですべて同じ時間に行います。授業内
 容は特に決めませんが、例えば定期テストがあったとするならば(私は定 
 期テスト不要派ですが…)、そこまでに習熟しておくべき範囲と、学習教
 材、実験器具、等を事前に準備(ICT教材だって今は使えるものが非常に多
 い)しておいて、あとは学年のどこで誰とどのように進めても良いから、
 自分たちで話し合ったり、教え合ったり、または個人で考え抜いたりしな
 がら、その教科の授業を自由進度で進めていく
というものです。

②教科教員がやること
 数学科の教員が、学年の教室を巡回しながら、質問に答えたり、苦手な生 
 徒に助言したりして指導・支援します。例えば理科だったら、一人は理科
 室で実験をしに来た生徒のサポートや危機管理をします。
 巡回は4クラスあったところで、3人、もっと言えば2人いれば成立しま
 す。これは私の経験則ですが、およそ8割の生徒は、自分たちで協力しな
 がら進めれば、無理に教員の解説を聞かなくても授業内容を理解する
こと
 ができます。理解が困難な2割の生徒も、教えてもらって自信をつけた
 り、完ぺきではないがいくつかの課題をクリアすることはできます。
 また、生徒が教員に質問をするときは「教えて欲しいことを教えてもら
 う」
のですから「分かった・できた」という気持ちは一斉解説(興味ない
 ことを無理やり教え込まされる)よりも遥かに大きなものになります。
 もっと言えば、巡回指導・支援教員は、理解が困難かつ、どうしても学年
 の仲間に尋ねられない生徒にある程度じっくりと教えることができます。
 その場合、その生徒にとっては個別指導のような感じになるので、教えて
 もらうことが有意義
だと言えます。

 技能教科においては、特別教室の都合もあり、完全に一斉に行うことは難
 しいですが、これも一工夫してみました。あながち、上記の時間割は不可
 能ではないと考えます。

③懸念材料と思われそうなこと
 おそらく、遊びだしたり、真剣にやらなかったりする生徒が出てくること
 を考慮しなければならないと思う人も多いと思います。これも私の経験上
 の話ですが、実際は、明確なゴール目標を与えられ、しかもどこで誰とで
 も相談してよい環境が与えられると、だんだん生徒は学びに向かうように
 なります。
 そもそも…、現実の問題として考えたときに、教員が毎回1クラス授業を
 担当したとして、いったい何人が本当に集中してその授業に臨むでしょう
 か?まぁ、そういうことです。

④なによりも超メリットなこと
 時間割を見ればわかると思いますが、一人の教科の授業時数は、最大でも
 1日3コマです。
すごくないですか?空きコマたくさんです。技能教科の
 教員は教科時数多く感じますが(それでも今までとあまり変わらない)、
 その分、校務分掌等を軽くして職務負担の平均化を図ります。
 空き時間が増えた分、より一層生徒にじっくり指導できる準備ができる
 し、その時間をクリエイティブな仕事に充てることもできます

一人の教員が一つのクラスの授業を毎回担当する従来の仕組みだと、当然一人でも長期の休暇・休業を取ってしまえば、学校はあっという間に疲弊し、息切れをします。けれども代替となる講師はそう簡単には見つかりません
精神的な疲労感は必要以上に「仕事量の膨大さ」を感じさせてしまいます。当然だと思います。
そこで、この「学年一斉・自由進度学習制度」を推進すれば、教科教員数が不足しても学年全体を複数の教科担当が指導・支援することになるため、授業は成立するのです。さらには教員一人当たりの「総授業時数の軽減」が図られます。文科省は「標準授業時数」を決めていますが、これも難なくクリアすることができます。

簡単なのは「給料増額」「人員増加」「職務軽減」。けれど…

今ある常識を「ギリギリやれそうな範囲内で覆す」マインドセットが求められる!

こんなことは誰しもが思うことですが、現実的に考えて「実現不可能」だと考えています。だからこそ、大鉈を振るうような「改革」ならぬ「革命」を起こす必要があると個人的には思っています。「そんなことして大丈夫なの?」と周りから言われたって、関係ないです。

だってやってみなければ分からないですし。

それにこのアイディアが機能すれば、すべての教員に、思考のためのゆとりが生まれます。教員のゆとりは職員室の雰囲気を明るくし、教員一人一人の新しいアイディアを創出させます。結果として生徒にその「良い雰囲気」や「教員のチャレンジする姿」が伝染していくと私は考えるのです。

夢物語かも知れませんが、こんな中学校を創ってみたいなぁ。
どうでしょう?わくわくしませんか。

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