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鉱物資源の秘密:地質学と宝石学の世界(14)アクアマリン III

 宝石商や宝石コレクターであれば、ブラジル産の #サンタマリア・アクアマリン #パライバ・トルマリン など、国際的に有名な宝石を知らない人はほとんどいないでしょう。

カタカナ英語を学ぶ悲劇のコーナー

 このnoteは、行き成り本筋から脱線して、語学や #アニメ 、情報工学、哲学、童話、武術などの話になってしまうのが特徴です。しかも、半年前に書いた記事が伏線になっていることも多く、一話でも読み飛ばすと迷宮入りしてしまう迷路構造になっています。そのため、 #ゲームブック のような楽しみ方も可能です。

 このコーナーでは、1月の #誕生石 である #トルマリン が、3月の誕生石である #アクアマリン の『 #カタカナ英語 を学ぶ悲劇』を語るための伏線になっていたのです。

 ところで、アクアマリンとトルマリンはどちらも『マリン』が付いているので、マリン石の仲間だと思っている人はいませんか? このような誤解をしている人は意外と多いですが、なぜ間違っているのかを、 #結晶学 #鉱物学 、化学組成ではなく、カタカナ表記と日本人の外国語発音の問題から両者の違いを説明する画期的なコーナーです。

 これは言語の説明なので、『私は文系なので分かりません』といった寝ぼけたことを言ってはいけません。『理解できない』と『理解する気がない』の違いはあっても、理系や文系、右脳系や左脳系で個人を分類する日本固有の発想が、知識の欠陥と社会的な亀裂を生み出している元凶の一因です。

#アクアマリン #トルマリン はカタカナで書くと、どちらもマリンだという誤解が生じますが、これを英語で書くと両者の違いが明確になります。

 アクアマリンの英語表記は aqua-marine で、トルマリンは tourmaline です。カタカナで書くと同じマリンでも、『R』と『L』の違いがあり、両者の違いは、多くの日本人が苦手としているところです。

アクアマリン

語源:『アクアマリン』はラテン語で『海の水』を意味する『aqua:水』と『mare:海』から来ています。

トルマリン

語源:『トルマリン』は『シンハラ語』の『turmali』から来ており、『混ざった石』という意味です。マリンの語源と直接関連はありませんが、カタカナ表記で『マリン』という部分が含まれることから、しばしば混同されます。
 
#シンハラ語 』の語源まで解説することが、このnoteの特徴です。私は『 #本は読むものではなく書くものである 』という強い信念を持っています。そのため、先日、5年ぶりに有隣堂書店での待ち合わせにもかかわらず、書店への入店を頑なに拒んでいました。

 しかし、書店の入口にある平積みコーナーに #ラテン語 の本が多数置かれているのを見て、最近ラテン語がブームになっていることがわかりました。そこで、 #るろうに剣心 #緋村剣心 の『 #不殺の誓い 』に倣って作った『 #不読の誓い 』を破り、ラテン語の解説書2冊を5分ほど眺めましたが、内容が浅く、学ぶべきものは何もありませんでした。

 あのレベルの本を書いても面白くないので、これから『ラテン語、ギリシャ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、オランダ語、アラビア語、ゲルマン語、スカンジナビア語、インド・ヨーロッパ語族、アフリカ言語族から学ぶ英語からさらに学ぶ日本語』シリーズを作ろうと思います。

 ちなみに、トルマリンの語源となっているシンハラ語は、 #スリランカ で話されているシンハラ人の言語です。インド・ヨーロッパ語族のインド・イラン語派に属しており、スリランカではタミル語と並んで公用語とされています。スリランカの位置がわからない方は、 #アフリカ 大陸の東側にある島が #マダガスカル で、インドの南東に位置する島国が #スリランカ であると覚えておくと良いでしょう。

 スリランカは世界屈指の多様な #カラーストーン の産出国として国際的に有名です。しかし、乱掘による影響で良質な鉱脈が減少しているとの指摘があります。そのため、世界中の宝石商が新たに注目しているのがマダガスカル島です。マダガスカル島とかつて陸続きであった #モザンビーク が、世界の #ルビー 供給量の約80%を占める宝石大国として急速に成長していることもよく知られています。

 モザンビークは極めて高品質な高品質なトルマリンの産地としても知られていますが、アクアマリンの産地としても、近年世界最高品質の物が大量に産出されるようになりました。モザンビークで最高品質のアクアマリンが多く産出される理由には、以下のような地質学的、地理的な要因が挙げられます。

地質構造:モザンビークは、地球上で最も古い地質学的構造の一つであるアフリカ大陸の東部に位置しています。この地域の地質は、高品質の宝石を形成するのに適した条件が揃っています。特に、アクアマリンは、花崗岩や変成岩などの岩石中に生成されることが多く、モザンビークではこれらの岩石が豊富に存在します。

温度と圧力の条件:アクアマリンは、特定の温度と圧力の条件下でのみ形成されるベリルの一種です。モザンビークの地下では、これらの条件が適切に揃っているため、高品質のアクアマリンが生成される可能性が高まります。

鉱物の多様性:モザンビークは鉱物資源が豊富な国であり、アクアマリン以外にも多くの種類の宝石が産出されます。この地域の地質的多様性は、アクアマリンの品質にも影響を与え、色の深みや透明度の高い石が見つかる可能性を高めています。

地理的条件:モザンビークの一部地域は、過去に海底であったとされ、そのために特殊な地質学的プロセスが働き、高品質のアクアマリンの形成を促進したと考えられています。アフリカ大陸には、 #エチオピア #アッサル湖 #タンザニア #ナトロン湖 などがあり、これらの地域が元々海底であったことは、地質学に興味のない方にも理解し易いでしょう。しかし、海底であったことを示す証拠は、塩湖や岩塩だけに限られません。その他の証拠は多岐にわたりますので、それらの科学的な証拠の一部を紹介します。

(1) 化石の証拠:モザンビークやその周辺地域で発見される海洋生物の化石は、この地域がかつて海底であったことを示しています。特に、古代の魚類や海洋無脊椎動物の化石がこの地域で見つかっています。

(2) 地層と岩石の種類:モザンビークの地層には、海洋環境で形成されると知られている堆積岩が広く分布しています。これらの岩石に含まれる鉱物や化石の内容は、古代の海洋環境の特徴を反映しています。

(3) 大陸移動理論:地球の歴史において、大陸はプレートテクトニクスによって移動しています。モザンビークが位置するアフリカ大陸も例外ではなく、過去には他の大陸と一緒にパンゲア大陸を形成していました。この超大陸が分裂する過程で、現在のモザンビークがかつて海底であった地域が陸地となったと考えられています。

(4) 古気候学のデータ:古気候学における研究では、過去の気候変動や海水準の変化を追跡することが可能です。モザンビーク及び周辺地域の古気候データから、かつて海水準が現在よりも高かった時期があったことが示されており、これが現在の陸地部分が海底であった証拠の一つとされています。

 これらの証拠は、モザンビークがかつて海底にあったという説を支持するものであり、この地域の地質学的、古生物学的研究において重要な役割を果たしています。

採掘技術と経験:モザンビークの採掘業者は、長年の経験と知識を持ち、高品質のアクアマリンを効率的に探し出すことができます。また、地元の採掘業者は、宝石の品質を損なうことなく掘り出すための技術を磨いています。

 これらの要因が組み合わさることで、モザンビークは世界でも最高品質のアクアマリンを産出する国の一つとなっています。宝石の品質は、色の鮮やかさ、透明度、内包物(インクルージョン)の性質などによって決まりますが、モザンビークのアクアマリンはこれらの条件を満たすことが多いです。

 アクアマリンは #ベリル という鉱物の一種で、その鉱物学的特性は以下の通りです。
 
化学組成:アクアマリンはベリウム、アルミニウム、ケイ素、酸素で構成されています。その色は鉄イオンの存在によって生じ、主にFe2+が青色を、Fe3+が黄色から緑色の色調をもたらします。

結晶系:アクアマリンは六方晶系に属し、長い柱状、棒状、または板状の結晶を形成することが特徴です。

硬度:モース硬度は7.5から8で比較的硬く、宝石としての加工や使用に適しています。

透明度:透明から半透明で、高品質のものは非常に透明度が高いです。

光沢:ガラス光沢から樹脂光沢まであり、光を受けると美しい輝きを放ちます。

色:アクアマリンの色は、淡いスカイブルーから濃い青緑色まで多岐にわたります。色の鮮やかさや均一性が価値を左右する要因の一つです。

屈折率と二重屈折:屈折率は約1.57から1.58で、非常に低い二重屈折を示します。これは結晶内で光が分裂し、二つの異なるパスで移動する現象を指します。

特殊効果:アクアマリンはカットや照明の条件によって、 #シャトヤンシー (キャッツアイ効果)や、 #アステリズム (スター効果)を示すことがありますが、これらは稀です。

神話とヒーリング:アクアマリンは古くから航海の安全や愛の象徴とされ、心を落ち着かせる効果があるとされています。

産出地:主な産出地にはブラジル、モザンビーク、パキスタン、マダガスカルなどがあります。

 アクアマリンのこれらの特性は、その魅力的な外観と宝石としての価値を高めます。色の深さや透明度、内包物の少なさなどが品質の決定要因となり、 #ジュエリー 業界で高く評価されています。

 ベリルの仲間には、アクアマリン以外にもいくつかの美しい宝石があり、それぞれ独特の色や特性を持ち、ジュエリー業界で高く評価されています。以下はベリルの仲間の #宝石 類の概要です。
 
エメラルド
色:鮮やかな緑色が特徴で、この色はクロムまたはバナジウムの存在によって生じます。
硬度:モース硬度は7.5から8。
特徴:エメラルドにはしばしば内包物が見られ、これらは『ジャーディン』と呼ばれることがあります。高品質のエメラルドは非常に希少で価値が高いです。
主な産地:コロンビア、ブラジル、ザンビア、モザンビークなど。
 
モルガナイト
色:ピンク、オレンジピンク、紫ピンク。
硬度:モース硬度は7.5から8。
特徴:透明度が高く、優れた光沢を持ちます。特にピンク色の宝石として人気があります。
主な産地:ブラジル、マダガスカル、モザンビーク、アフガニスタンなど。
 
ヘリオドール
色:黄色から緑黄色。
硬度:モース硬度は7.5から8。
特徴:名前はギリシャ語で『太陽の贈り物』を意味し、明るく輝く太陽のような色が特徴です。
主な産地:ナミビア、ブラジル、マダガスカル、モザンビークなど。
 
ゴーシェナイト
色:無色。
硬度:モース硬度は7.5から8。
特徴:無色のベリルで、高い透明度を持ちます。価値は色のあるベリルほど高くはありませんが、その純粋さと透明感から価値を見出されます。
主な産地:ブラジル、マダガスカル、モザンビーク、カナダなど。
 
レッドベリル(ビクスバイト)
色:鮮やかな赤色。
硬度:モース硬度は7.5から8。
特徴:非常に希少で、宝石品質のものはほとんどがアメリカ合衆国ユタ州から産出されます。他のベリルと比べて市場で見つけることが非常に難しいです。
主な産地:アメリカ合衆国ユタ州。

 これらのベリルの仲間は、それぞれが独特の美しさと特性を持ち、宝石として高く評価されています。地球上での希少性、色の鮮やかさ、透明度などによって、その価値が大きく異なります。エメラルドは特に有名で価値が高く、鮮やかな緑色が特徴的ですが、モルガナイトやヘリオドールなど他の色のベリルも人気があります。

#武智倫太郎

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