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エモい写真から考察するブルネイの多様性と排他性

 私は現在もブルネイに住んでいるので、『エモ1グランプリ』に適したブルネイのエモい写真はたくさんあります。この記事では、そうした写真を紹介することをメインとして、まずはロイヤルブルネイ航空の成田直行便就航記念式典の写真をお披露目します。

ロイヤルブルネイ航空の成田直行便就航記念式典

 私はこの式典に参加し、第一号便の乗客となりました。この背景には、私がブルネイの王様(スルタン)に『ブルネイには直行便が少なくて不便だ』と不満を漏らしたところ、成田からブルネイへの直行便を就航させてくれたという経緯があります。

 直行便ができる前は、香港経由、マレーシア経由、シンガポール経由などでブルネイに通勤していましたが、日本からブルネイへの国際線は非常に不便でした。

Bandar Seri Begawan=尊敬される都市=ブルネイの都市名
ジャメ・アスル・ハサナル・ボルキア・モスク

 この写真は特殊な加工をしていません。世界で最も空気が綺麗な都市であるブルネイの夕焼け時は、実際にこのような色の空になることがあります。

精神と時の部屋:ドラゴンボール
おそ松くんのイヤミのシェーのポーズの説明ではなく、立入ると狙撃するという警告です
おそ松くんのイヤミのシェーのポーズ

 前の写真はブルネイ最大の陸上油田である『セリア油田(Seria Oilfield)』の風景です。セリア油田などの採掘現場では、この写真のように煙突から炎が上がっているのをよく目にします。これは、フレアスタック(flaring)と呼ばれる設備によるもので、石油や天然ガスの採掘過程で発生する余分なガスを安全に処理するために行われています。

 フレアスタックは、採掘中に発生する高圧で制御が難しく、爆発のリスクがあるガスを燃焼させることで、これらのガスを安全に処理します。また、設備の保護と圧力管理のメカニズムとしても機能しています。ただし、近年ではこのガスを燃焼させずに回収し、有効活用する油田が増えています。

ブルネイのエモいゆるキャラドリンク

ブルネイの多様性と排他性について

 ブルネイの王様は、同性愛者に対する石打ちの死刑を宣言したり、クリスマスを禁止したりするなど、国際社会で排他的な思想が知られています。しかし、アメリカの俳優ジョージ・クルーニーらがブルネイの反LGBT法に抗議し、ブルネイにLGBTの価値観を押し付けようとしました。

 ブルネイは王政の国であり、言論の自由は存在しないので、ジョージ・クルーニーに対して王様に対する不敬罪で死刑を宣告し、国際指名手配にすることも理論上はあり得ることです。しかし、実際のところ、ブルネイは緩~ぃイスラム教国であり、国際社会から非難されると、すぐに前言を撤回する傾向があります。

 多くの方が誤解していますが、世界中でイスラム教徒の数が急激に増えている理由の一つは、イスラム教の戒律が実際にはそれほど厳しくなく、寧ろ柔軟であるためです。ラマダンというと、断食の苦行だと誤解している人が多いですが、ラマダン中は日の出前と日没後に大量の食事を摂ることが一般的で、そのために『ラマダン太り』するイスラム教徒が多くいます。これは、日本人が正月休みに『正月太り』するのと同じ現象です。

 ブルネイには同性愛に対する厳しい法律が存在していますが、処罰が実際に適用されたことはなく、そもそも適用する意図もなかったのです。単にイスラム法典に基づく規定として形式的に存在するだけです。

ブルネイの遺伝資源の多様性

 ブルネイは、その国土のほとんどが熱帯雨林に覆われており、特にボルネオ島の一部として世界でも有数の生物多様性を誇る地域です。ブルネイには、広大な熱帯雨林を有する国立公園が多く存在し、その中でもウル・テンブロン国立公園は特に生物多様性が豊かで知られています。この公園は、ブルネイの生態系を保護する上で重要な役割を果たしており、非常に手つかずの状態が保たれています。

ブルネイの生物多様性の豊かさ

 ブルネイは、ボルネオ島の生物多様性ホットスポットに位置し、多種多様な動植物が生息しています。特に、ブルネイの熱帯雨林は固有種や希少種が多く、遺伝資源としての価値が非常に高いとされています。植物、昆虫、鳥類、哺乳類の多様性において、ブルネイの自然環境は非常に貴重なものと見なされています。

名古屋議定書のABS(遺伝資源のアクセスと利益配分)

 遺伝資源の原産国に利益を分配するための国際的な枠組みとして最も重要なのは『名古屋議定書(Nagoya Protocol)』です。この議定書は、『生物の多様性に関する条約(CBD)』の下で採択されたもので、遺伝資源へのアクセスとそれから得られる利益の公正かつ衡平な配分を目的としています。

名古屋議定書とは?

 名古屋議定書は、2010年に日本の名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択され、2014年に発効しました。この議定書は、遺伝資源の利用から生じる利益を、その遺伝資源が提供される国と公平に分配することを目的としています。

利益の公正かつ衡平な配分
 遺伝資源から得られる利益を、原産国(遺伝資源を提供する国)に公正かつ衡平に分配します。これには、経済的利益(特許料、売上分配など)や非経済的利益(技術移転、共同研究、研修など)が含まれます。

アクセスと利益配分の手続き(ABS:Access and Benefit-Sharing)
 遺伝資源にアクセスする際には、事前に原産国の同意(PIC:Prior Informed Consent)を得たうえで、相互に合意した条件(MAT:Mutually Agreed Terms)に基づいて利益配分が行われます。

伝統的知識の保護
 遺伝資源とともに利用される伝統的知識を保護し、その利用から得られる利益を知識の提供者にも分配することを目指しています。

利益配分の具体例
 例えば、製薬会社がある国の遺伝資源(植物や微生物など)を利用して新薬を開発した場合、その新薬の売上や特許から得られる利益の一部を、その遺伝資源の原産国に分配することが求められます。これは、遺伝資源が持つ価値を適切に認め、持続可能な利用を促進するためです。

名古屋議定書の意義
 名古屋議定書は、生物多様性の保全と持続可能な利用に加え、原産国に対する経済的インセンティブを提供することで、遺伝資源の適正利用を推進しています。また、遺伝資源の乱用や不公平な利用を防止するための国際的な基準を提供しています。

課題
 名古屋議定書の実施には、各国の国内法整備や国際的な協力が必要であり、すべての国がスムーズに利益配分を行えるようにするためには、まだ課題も多く残されています。また、遺伝資源へのアクセスとその利用をめぐる交渉や手続きが複雑で、ビジネスのスピードに対応しにくいといった問題もあります。

 名古屋議定書は、遺伝資源とその関連知識を適切に評価し、原産国に正当な利益を提供するための重要な国際的な枠組みです。

遺伝資源ビジネスのポテンシャルと国家戦略

 ブルネイ政府は、持続可能な経済発展と自然資源の保護を両立させることを国家戦略の一環としています。遺伝資源は、医薬品開発やバイオテクノロジー分野において高いポテンシャルを持っており、ブルネイ政府はこれを重要な資源として認識しています。

具体的には、以下のような取り組みが行われています。

持続可能なバイオ経済の促進
 ブルネイは、天然資源に依存する経済からの多様化を進める中で、生物多様性に基づくバイオ経済に注目しています。遺伝資源を活用したビジネスはその一環として位置付けられており、国際的なパートナーシップや研究開発を通じてこの分野の拡大を図っています。

生物多様性の保護と活用のバランス
 ブルネイは、環境保護と経済発展の両立を目指し、生物多様性の保護と同時に、その遺伝資源を適切に活用する方針を取っています。これにより、違法な乱獲や無計画な資源開発を防ぎながら、持続可能な形で遺伝資源ビジネスを発展させようとしています。

地域的および国際的な協力
 ブルネイは、ボルネオ島の他の地域と協力し、生物多様性の保護と研究を進めています。また、国際的なバイオパートナーシップを活用し、遺伝資源を新たな商業価値に転換するための研究開発を推進しています。

結論
 ブルネイは、その豊かな生物多様性を強みとし、遺伝資源ビジネスの可能性を持続可能な発展戦略の一部として捉えています。ウル・テンブロン国立公園をはじめとする国立公園や自然保護区がその基盤を支えており、ブルネイ政府はこれらの資源を慎重に管理しながら、経済発展との調和を模索しています。

 つまり、ブルネイは、遺伝資源の基盤となる生物多様性や自国経済の礎となる産業の多様性を重視する一方で、LGBTQ的な性の多様性は認めないという独自の路線を取っています。このようなブルネイの政策に対し、映画俳優ジョージ・クルーニーが性の多様性を認めるべきだと内政干渉するのは、他国の価値観を無視した、アメリカ人特有の傲慢さといえます。

武智倫太郎

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