日本政府が掲げるムーンショット目標を実現するために必要なこと (1)
『武器商人秘書:オリガの資料室』さんのnoteは、本日でフォロワーが6000人を超えましたね。オリガさんのnoteでは、記事よりもコメントが長くなることがありますが、本日は以下のコメント欄の続きで『ムーンショット目標』の解説をしてみます。
読者の皆様は、日本政府が掲げている『ムーンショット目標』をご存じでしょうか? 私は複数のハイテク分野の事業家であると同時に、それぞれの分野の研究者でもあり、周囲には大学教授や研究者が多いです。そのため、私の周囲では『ムーンショット目標』を知らない人はいません。
ところが、研究者以外の人に『ムーンショット目標』について話すと、殆どの人が御存じないのです。これはどの業界でもよくある話かも知れません。日本のお笑い業界で『サンドウィッチマン』と言えば知らない人はいないかも知れませんが、私のように、お笑い業界に詳しくなければ、『あぁ、あの♬ロ~イ~ド・メガネに燕尾服~の鶴田浩二のあれね』と答えるでしょう。
他にも、アニメ業界に詳しい人なら『ワンパンマン』と言えば、サイタマやジェノスについて熱く語るかも知れませんが、私のようにアニメに詳しくない人にとっては、『あぁ、ミッキー・ロークの猫パンチのことね』となります。
日本政府のムーンショット目標
ムーンショットとは何か?
ムーンショットとは、1960年代にアメリカが月面着陸を目指したアポロ計画に由来する言葉で、当時の技術では人類が月面着陸することは極めて挑戦的で達成困難な目標であったことから、英語圏ではこの呼び名が定着しました。
アポロ計画の概略
アポロ計画は、アメリカ合衆国が1961年から1972年に掛けて行った有人月面探査計画です。1969年にアポロ11号が初めて人類を月に送り込みました。計画を開始してから、月面着陸に成功するまでに8年間しか掛かっていません。この8年間が何を意味するかというと、1961年に大統領に就任したジョン・F・ケネディ大統領(JFK)が暗殺されていなければ、JFKの大統領二期の任期期間中に成果が出せていたことを意味しています。つまり、JFKは自分の大統領任期中に成功させる予定で、責任を持ってアポロ計画に着手したのです。
科学技術の進化の加速
科学技術の進化は、鉄器文明から産業革命に至るまで約3000年掛かったのに対し、産業革命から現代のデジタル革命までは僅か数百年でした。その後のインターネットやAIの発展は数十年単位で進行しています。この指数的に加速する技術進化は、新しい発見や発明が連鎖的に次々と生まれるためです。このように、パラダイムシフトが加速しているため、現在は10年先の技術を予測することすら難しい状況です。
科学の指数的な加速により、技術の進歩は予測を超えて急速に進行しており、科学者が10年先の科学技術を約束することは無責任と見なされることが多いです。これは経済学者でも同様で、10年後に現在のアメリカ中心の資本主義が続いていると断言することは無責任です。
共産主義や社会主義と資本主義は壮大な社会実験であり、ソ連の崩壊で共産主義が破綻したからといって資本主義が正しいとは言えず、経済学も日々進化しています。従って、10年後に現在の基軸通貨や紙幣の概念が残っているかどうかを予測することすら困難です。
日本のムーンショット目標の問題点
このような時代において、日本政府や2024年を乗り切れる可能性が極めて低い岸田文雄首相が、多数の分野で2050年のムーンショット目標を楽観主義のみで傍観していることが、如何に無責任であるかが分かるでしょう。
アポロ計画の成果と影響
アポロ計画の成功は、科学技術や産業、人材に多大な影響を与えました。
産業基盤
・半導体技術の進化
・コンピュータ技術の発展
・材料科学の進歩(特に耐熱素材)
プロジェクトマネジメント手法
・システム工学の導入
・PERT(Program Evaluation Review Technique)の開発
・リスク管理手法の確立
科学技術
・新しい推進技術
・精密機械工学の発展
・通信技術の向上
人材
・科学者や技術者の育成
・宇宙工学や関連分野での専門家の増加
・アポロ計画から派生した技術と応用
アポロ計画の技術は、軍事分野だけでなく、医療機器、気象予報、通信システムなど、多くの民間分野にも応用されました。これにより、産業全体の技術水準が向上し、経済的な波及効果も大きかったです。
ムーンショットのアポロ計画が成功した背景
JFKは1962年にライス大学で、“We choose to go to the moon... We choose to go to the moon in this decade (10年以内)”の一節で知られる歴史的に有名な名演説を行い、アメリカは世界で初めて月面着陸を達成するという明確な目標を掲げました。
アポロ計画が成功した背景には、以下のような要因があります。
明確な目標:世界で一番に月に到達するというシンプルで具体的な目標。
競争相手:ソビエト連邦というライバルの存在。
時間的制約:ソ連よりも早く到達できなければ、航空宇宙産業で敗北するという緊急性。
技術の恐怖:航空宇宙産業での遅れを恐れる圧力と危機感。
国民の支持:ケネディの演説による国民のコンセンサス。
経済波及効果:アポロ計画の経済的な利点が明確であったこと。
これに対して、日本のムーンショット型研究開発事業が失敗する可能性が高い理由は以下の通りです。
目標の分散:具体的な一つの目標に絞られていない。
競争相手の不在:明確な競争相手が設定されていない。
時間軸の不明確:2050年という目標年が遠すぎ、緊急性が欠如している。
国民の支持不足:国民のコンセンサスが得られていない。
経済的影響の不透明:経済波及効果が明確でない。
リーダーシップの欠如:一貫したリーダーシップが不足している。
国際競争力:他国の先行する技術革新に対する競争力が不足している。
人的資源:高度な技術者や研究者が不足しいている。
制度的障壁:規制や官僚主義が進展を妨げる可能性が高い。
文化的要因:日本の企業文化ではリスクを取ることが少なく、革新が進みにくい。さらに何故かリスクを取るまでもなく事業として成り立たないことが分かりきっていることには強気で投融資する。 #ユーグレナ #CCS #DAC #水素社会 , etc.
つづく…
武智倫太郎