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『アイデアの泉』/現代落語風掌編小説

なんかいいアイデアあねえかなあ。なんだかいろいろ頭んなかに浮かんじゃあくしゃっとして、ろくにつかえたもんじゃねえ。なんでもいいアイデアが降ってわいてこねえもんかなあ。奥の間にじいっと座って茶ばっか飲んでおれあ腹たぷたぷになっちまう。困ったもんだねえ。どうも。
あーもーそろそろ6月かい。おれも一流企業の社員みてえに半年分のボーナスなんかもらってみたいもんだねえ。ナスに足生えておれんとこまで走ってこねえかなあ。先の浜あいって明け方財布でもさらってくるか。やんなっちゃうよ。もう。こんなもんポチポチポチポチ書きやがってよお。
どうしようもねえなあ。まったく。このボロ長屋も早く出てえもんだ。壁あ薄くて薄くて、隣のVTuberの配信声がきゃあきゃあと聞こえてきやがる。俺の推しじゃあねえんだもんなあ。うるさくってかなわねえや。防音設備くれえしっかりしろってんだ。近頃はよ、ネズミも出るんだもんなあ。桶の中でもあるめえにちゅーちゅー走り回りやがって。ボロ屋の壁にでっかい虎でも描くかなあ。おれあこれでも美大志望だったんだ。ま誰だって目指すってえことは出来るって具合だな。あーしようがねえなあおれは。もう駄目だよ全く。しようがあねえから、将棋でも打つか。しょうがはなくてもしょうぎはあるってな。はあ。ええ?ひとりでできるかって?あーこれあAI将棋ってんだ。あの若手棋士だってこれで練習したんだってよ。おれあこれで棋士になるぜ。ああもう。遅々として進まねえ。しようがねえなあこりゃお仕舞いだ。


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