あいち | ほのぼのエッセイ

1986年うまれの38歳。広告代理店の営業として働きながら、美容学校に通っている人。夫…

あいち | ほのぼのエッセイ

1986年うまれの38歳。広告代理店の営業として働きながら、美容学校に通っている人。夫と文鳥2羽と暮らしています。コスメとプロレスとお花と本が好き。noteではエッセイもどきを書きます。

マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

2人の定番

今週、結婚する。 結婚生活は、自分が想像していないような大変なことがたくさんあるらしい。お互いを疎ましく感じたり、価値感の違いに悩んだり、思いもよらない事件がおこったりするという。 思いもよらない事件には勃発したときに向き合うしかなさそうだけど(何が起こるんだろう、おそろしい)、先人の知恵に学べば、心の準備くらいはできるかもしれない。 そう思って、わたしと婚約者は何冊かの本を買った。 どれも夫婦ができるだけ穏やかに暮らすコツを書いた本だ。 その中の一冊「夫のトリセツ

    • 薄くて長いつながり

      プロレスが好きで、しょっちゅう観に行く。 しょっちゅう観に行くと、友達がたくさんできる。 その友達のみなさんから、観戦の度にお菓子をいただく。 こういう、友達同士でお菓子を配る文化のことを、とても面倒くさいと思っていた。 幸か不幸か、これまで職場にも友人関係でもそのような習慣がなかった。 お菓子は大好きだ。もちろん全部食べる。 だけど、相手にそんなつもりがなかったとしても、受け取ればお返しをしなければいけないような気持ちになる。毎回お返しを用意するのは億劫だった。 その気

      • 「かわいい」と一緒に生きていく

        何年ぶりかにiPhoneの機種変更をした。 本体の色は迷わずピンクにしたけど、ケースを選ぶのは丸4日かかった。何かを選択するということは、著しく脳のエネルギーを消費する。 iPhoneを便利に、快適に使いたい。 それ以上に、絶対にかわいいものを身につけたい。 誰にどう思われるかということはどうでもよく、来る日も来る日もiPhoneを目にする度に「は〜わたしのiPhoneかわいい!最高!」と思っていたい。 夫はものの数分でケースを購入し(黒くて丈夫で本体を360°保護してく

        • 新婚からの卒業

          この2月で結婚4年目に入った。 3年間を経て初めて、夫と足並みをそろえて2人で人生を歩いているという実感がある。 昨年秋、わたしは過労で休職した。 年末年始、夫が尿路結石で入院・手術をした。 無事に夫が退院してからも、わたしのインフルエンザ感染、夫のコロナウイルス感染が続いた。 これまでの人生で最も健康について真剣に考えた数ヶ月だった。 結果として、わたしは自炊をするようになった。 ずっとしたかったことだった。体によい、おいしい食事をしたかった。 決して夫のために始めたと

        • 固定された記事

        マガジン

        • ふわふわ38歳
          6本
        • 家族のこと
          11本
        • まったり35歳
          16本
        • わくわく37歳
          1本
        • のびのび36歳
          8本

        記事

          推しの美容師

          引っ越すたび、自分に合った美容院を探してさまよう。何軒も渡り歩いては、また変える。 わたしは美容院で自分のことをあまり話さない。ちょうどいい力加減で話すことができなくて、美容師さん相手に全力のサービストークを繰り広げ、家に帰ると疲れ果ててしまうからだ。それで、いい感じの距離感で接してくれる美容師さんが好きだ。 クチコミや写真を見れば、店舗の雰囲気や技術力についてはなんとなくわかるけど、美容師さんとの相性は、会ってみないとわからない。 ここしばらく、好きで指名していた美容師

          山のふもとの裾模様

          美容学校に通いはじめて丸1年。 わたしは2年生になった。 先日、着物について勉強していた時に「裾模様」という言葉を覚えた。裾模様は、着物の裾部分にのみ絵柄が入ったデザインで、既婚女性の第一礼装である「留袖」の総称でもある。 江戸時代には着物全体に柄が描かれた「総模様」だったが、やがて華やかな帯とのバランスを考え、裾のみに絵柄が施されるようになった。 小さい頃から、何度も聞いていたもみじの歌。 この歌の描く情景が、突然いきいきとした色を伴ってわたしの頭の中に浮かんできた。

          野に咲く花のように

          毎年、年賀状を送ってくれる同級生がいる。 今年の年賀状は、やや遅れて2月に届いた。彼は3人の子どもと奥さんと一緒に、遠く離れた北国に暮らしているらしい。去年母校を数回訪れる機会があって、建物はガラリと変わっていたけれど、あいちによく元気をもらったことはしっかり思い出したよ、と綴られていた。 高校時代、わたしは彼に片想いをしていた。 彼は同じ学年で入学したけど、1年留学して、帰国してからは1つ下の学年で勉強していた。 弾ける元気玉みたいな高校生だったわたしは、留学帰りで大人

          ウエディングドレス

          「背中に傷がある」と聞いて、あなたはどんな傷を想像するだろう。針と糸で縫い合わせたような、1本の傷だろうか。 私の背中にある傷は、直径10cm。 丸く、赤黒く、えぐれている。 月のクレーターに似ているな、といつも思う。 25歳の3月、隆起性皮膚線維肉腫という病気で手術を受けた。摘出しないと、少しずつ大きくなるらしい。まったくピンと来なくて、「仕事があるから手術の時期を遅らせてほしい」と医師に言ったら、低く小さな声で「癌なんですよ」とたしなめられた。手術後、初めて傷跡を鏡で

          ウエディングドレス

          繋がらない点があったっていい

          もうすぐ2022年が終わる。 この1年で1番大きな出来事は、間違いなく学校に通い始めたことだったと思う。 私はこの10月に、資生堂美容技術専門学校に入学した。美容師養成のための学校だ。 私は「美容師通信科」で学んでいて、3年間かけて美容技術を学ぶ。3年生になったら、美容師の国家試験を受ける。 私の本職は広告代理店の営業。結構激務だ。 仕事は楽しく、職場もそれなりに快適で、すぐに辞めるつもりはない。 しかもいくら美容について学んだところで、仕事の役には立たない。 だから、

          繋がらない点があったっていい

          優しさのリレー

          夫と熱海に花火を観に行った。 付き合いはじめてすぐコロナ禍を迎えた私たちは、一緒に花火を観たことがなかった。今年こそは一緒に観たいと意気込んで出かけた。 ところが、開始1時間前に大雨になった。雨の予報ではなかったのに。仕方なく、私が持っていた晴雨兼用の折りたたみ傘を2人でさしたが、雨は強くなるばかり。夫はもう1本の傘を求めてコンビニに向かった。 夫を待っていると、後ろから声が聞こえた。 「僕たちも1本しか傘がないから狭いんですけど、よかったら一緒に入りませんか?」――カッ

          清濁併せ呑む

          新婚生活がはじまって1年半が経った。 この1年半を表す言葉は「清濁併せ呑む」の一言に尽きる。 海は清流も濁流も、緩やかな波も激しい波も、区別することなくすべてを受け入れることから、「善悪の区別をすることなく来るがままに受け入れる人」を指す言葉だという。 いいことも悪いことも、一緒に飲み込む。 結婚生活に1番近い言葉だと思う。 好きな人と一緒に生活できることは、たまらなく楽しい。 だけどその好きな人は、わたしがお腹がいっぱいのタイミングでケーキを出したり、ものすごく集中して

          山のごちそう

          夫の知人が、山梨の山中で1人暮らしをしている。 そのお宅に、夫と2人でお邪魔するようになった。 そこでいただく食事が、最高においしい。 知人は必ず、みんなで作れるメニューを考えてくれる。現地で採りたての野菜をつまんだり、地元のワインを飲んだりしながら、3人でワイワイ作る。 たとえば、たっぷりの玉ねぎと挽肉に、隠し味のセロリを加えた、ミートソースパスタ。 野菜を切るのは私、炒めるのは夫…と代わる代わる台所に立つ。最後は3人で味見をして完成。 トマトの酸味と、野菜の甘み、そし

          おやつも渡せない時代に

          6歳から、片道1時間半を電車で通学していた。 周りの大人が「えらいね」と褒めてくれたけど、自分にとっては当たり前だったから、くすぐったかった。 電車の中で本に夢中になっていると、よく大人が「どこで降りるの?」と声を掛けてくれた。 私が降りる駅になると、肩を叩いて教えてくれた。 そうじゃない時は、読書に没頭するあまり、度々電車を乗り過ごした。 気づいたらまったく知らない駅にいて、途方に暮れた。 夕日に照らされるホームに立つと心細かった。 知らない人が心配して、家に連れて帰

          おやつも渡せない時代に

          答えのない世界

          オフィスで先輩に話しかけに行ったら、先輩が自分の悪口をメールに書いていた。入社して2年目のことだった。 「あいちさんは自分に自信がありすぎて怖い」 と、書いてあった。 よせばいいのに、気が強いから見て見ぬふりができなくて、「自信なんてないですよ」と先輩に話しかけた。先輩は少し凍りついた後、「いや、まぁ」と苦笑いしていた。 異業種から転職して、営業としてチームのフロントに立っていた。迷いだらけの日々の中で、自分がしっかりしなければチームが混乱してしまうと、必死で立っていた

          お客さんが好き

          オンライン英会話で仕事のことを話していて My clients have raised me up. と言うと、 What do you mean? と聞き返される。 こういう感覚は日本人特有なんだろうか。 私はクライアントに育ててもらった。 入社してひと通り基本的な業務を教わった後、上司は「とにかくやってみなさい」と自分のクライアントを私に引き継いでくれた。 そのクライアントとは、もう5年の付き合いになる。新しい仕事をたくさんくれた。 私の売上げの6割は、そのクライアン

          ゆっくり、丁寧に

          このIoTの時代に、ボタン付けはどうしてこんなにアナログなのだろう。 穴がふさがっているのではと疑いたくなるほど、糸を受けつけてくれない針をにらみつつ、心の中で悪態をつく。 めんどくさいから、いつもは裁縫から逃げ回っている。 この度、ついにボタンのとれた服が3着に達したので、しぶしぶ重い腰をあげた。 こういう細かい作業をする時に、必ず思い出すシーンがある。 小さな時から不器用だった私は、めんどうな細かい作業を父に頼んでいた。 ある日、いつものように私の代わりに作業をして